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0817・デューダス公爵家




 Side:ミク



 辺境伯家の悪人を善人に変えた次の日、私達は領都を出発して移動する事になった。馬車の中は辺境伯とヴィーと善人の治癒師が乗っており、私達は外で護衛中だ。もちろん辺境伯家の騎士と兵士もついていきている。


 中には降格されて兵士になった次男も居た。どうやら第4王子移送で使う事によって、落ちた名を少しは上げてやろうという親心らしい。本人もそれは分かっているのか、特に思うところは無く兵士の仕事をきちんと熟している。


 そんな1日目は何事もなく終わり、予定の町で私達は宿を取る。お金は辺境伯家から出ているというより、指定の宿に泊まって私達も護衛をしなきゃいけない。その為の同じ宿だ。騎士や兵士でも守れると思うけど一応というところだろう。


 辺境伯は私の善の神の権能は知っているけど、私達の戦闘能力は知らないからね。それでも低いとは思っていない筈だけど、どこまでかは理解していない。ま、私達もいちいち教えるような事はしないから当然だけど。


 夕食も終わり、後は寝るだけとなったので、窓からそっとファーダを出す。町の悪人はファーダに任せ、私は来るかもしれない襲撃者に備える。暗殺者と言い換えてもいいかもしれないが、そちらに対応する必要があるので悪人掃除に出る事はできない。


 それでもファーダが喰うので、そこまでのストレスは感じなくて済んでいる。肉が喰える位置にいるのに喰えないというのはストレスになるが、ファーダが喰う事で擬似的にとはいえ、食べた感じを味わう事は可能だ。


 それによって食べていないものの、イライラが限界を超えるような事は無い。なのでストレスを感じる事も無く警戒を続けている。どうもここでは来そうにないね。というのも悪意を感じない。


 こちらに向けてくる悪意を普通は感じるものだが、こちらに悪意を向けてくる者を感じないので、今日の襲撃の可能性は低い。もちろん、しっかり監視はするんだけどね。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:テイメリア・フェルス・ゴールダーム



 辺境伯の領都を出て7日。ようやく王都の手前の町まで来ました。辺境伯もヴィーも襲撃が無いのを不思議に感じていますが、ミクいわく襲撃は3回あったそうです。どれも私達が泊まっている部屋に来るまでに終わっていますので、気付いていないだけ。


 わざわざ私達が教えたりなどしませんが、むしろ襲撃が無い事を怪しんでいるみたいですね。そうやって緊張感を持っていて下さると助かりますので、何も言わない事にしています。言って警戒を下げられても面倒ですからね。


 今日は王都の手前の町なのですが、ここを治めている貴族こそがデューダス公爵家であり、ヴィーの御母上である正妃様の御実家となります。辺境伯は既に来訪を告げており、会談の予約もとっているそうです。


 私達は町中に入ると、そのまま馬車を護衛しつつ公爵家の屋敷まで進んで来ました。傭兵なのでジロジロと見られますが、ここはスルーしておきましょう。関わるのも面倒ですからね。何かあっても、そっちで何とかして下さいと言って終わりです。


 私達は一緒に来た騎士や兵士と共に待機し、適当に飲んだり食べたりしながら雑談を始めました。



 「それにしても大丈夫かねえ。説明は問題ないけど、公爵家が怒り狂う可能性が高いからさ。暴れ回るなんて事にならないといいけど。それと勢い余って殺すのも止めてほしいところだ。証人が居なくなっちまう」


 「そうね。唯一の証人だし、全てをやらされていたのが1人である以上は、死なれると困った事になるわ。死人に口無しとも言うからね、立証が非常に困難になる。ここからは身辺に相当気をつけないと」



 そんな話をしていると、1人の兵士が近付いてきて私に謝罪をしてきました。



 「申し訳無い。貴女が傷付いていたのは知っていたが、早く捕縛した者を牢に入れねばとはやってしまっていた。その所為で傷付いた貴女を放置してしまった事。謝罪致します」


 「分かりました。その謝罪は受け取らせていただきます。これで双方に何も無しという事で宜しいですね?」


 「すまない。ありがとう」



 そう言って辺境伯殿の次男は離れて行きました。私は謝罪は受け取ったので、それでこの話は終わりという事を伝えたのですが、おそらく正しくは理解していないのでしょうね。安堵した顔をしていましたから。


 それでこの話は終わりという事は、つまり私からは何もしませんよという事です。関わりもしませんし、次男殿の立場が良くなるような発言もしません。双方に何も無しとはそういう事なのです。後は自力で頑張って下さいと言うだけですね。


 彼の立場的に私に許されたという言葉さえあれば良いと思ったのでしょうが、それを辺境伯殿がどう考えるかは私が決める事ではありません。こういう時は、「謝罪を受け取った事は辺境伯殿に伝えておきます」という言質げんちを取らねばいけないのです。


 ややこしいかもしれませんが、辺境伯殿も私が謝罪を受け取ったと話せば、それを前提に次男の事も考えるでしょう。しかし私がそれを言わないとなると、それを考慮した形にせざるを得ません。これは相手が貴族の場合でも同じです。


 いえ、正しくは貴族の場合の対処法のようなものですね。そう考えると次男殿は随分と脇が甘いとしか言えません。騎士でしたし、あまりこういった事は詳しくないのでしょう。聞き逃すと後で困った事になる。これも貴族あるあるなのですよ。


 後で知った辺境伯殿に盛大に溜息を吐かれないといいのですけどね。もちろん私も分かったうえでおこなっているので、辺境伯殿は理解されるでしょう。


 おや? 終わったようで御二人が出て来ましたね。何故か後ろにもう3人と騎士達が居ますが……。地面に座ってゆっくりしていた私達は立ち上がり、とりあえず並びます。



 「すまないな。少々説明に時間が掛かった。こちらから御説明せねばならぬ事は終わったのと、デューダス公のところの騎士を連れて王都へ行く事になった。それはいいのだが……」


 「君達はご苦労だったな、ここで帰っていい。後は我々が全てやるので、傭兵などという薄汚い者どもは要らんのだ。金はこちらが払ってやるから、とっとと失せろ」


 「こいつは善人に書き換えてほしいの? それとも死にたい? 私はどっちでもいいけど、なりたい方を選ぶといいよ」


 「ほう、何を言っているのか分からんが、余ほど死にたいと見える。私の剣の錆になれるのだ、光栄に思うがいい」


 「あ?」



 その瞬間、ミクは【陽炎の身体強化】を使いました。そのプレッシャーに偉そうな事を言っていた者は失神。ミクは蹴り飛ばして無理矢理に起こします。当たり前の事なのですが、最強の怪物に喧嘩を売って何も無く許されるなんて事は無いんですよね。



 「お前こそ余ほど死にたいようだな。ここで今すぐ死ね。ゴミに生きる価値など無い」


 「ゴホッ! ゴホッ! ゴホッ!!」



 調子に乗っていた男は咳き込むだけで、顔を上げる事すら出来ていません。それはつまり戦闘態勢すらとれないという事です。話にもなりませんね。


 ミクはアイテムポーチからウォーハンマーを取り出して、地面に叩きつけました。「ズドォンッ!!!」という音が鳴り、衝撃が辺りに響きます。



 「お前はここで無様に死ね。相手の力量も見極められぬゴミなど、生かしておいても邪魔だ」


 「………ま、待って、くれ。後で謝罪でも何でもさせる。だから命までは、取らんでくれ……!」



 ミクはおそらく公爵であろう人物をジッと見た後、仕方なさそうに溜息を吐き、【陽炎の身体強化】を終わらせました。その瞬間、安堵の溜息が多くの者から漏れましたが、私達は息を漏らしたりなどしません。


 何故ならミクの怒りが治まっていないと知っているからです。



 「クッ、なかなか強、ブゴォッ!!?!?!」


 「命までは取るなと言っていたが、何もするなとは言っていなかったぞ? お前には戦いの厳しさというものを身をもって教えてやろう。私に感謝しろ?」



 その後はボコボコにされましたね。相手が泣きを入れようがミクが加減をしたり終わらせる事はありませんでした。何度も気絶しては殴られ蹴られを繰り返し、遂に完全に気絶して目覚めなくなったので終了です。


 ミクは足首を持って引き摺ってくると、デューダス公爵の前にポイッと投げつけました。まるでゴミのように。


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