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0078・ワイバーンを倒すという事




 ワイバーンを叩き殺したミクは、死体を回収して脱出する。魔法陣の上に現れたミクを見て、驚く周りの探索者。それらを無視してミクは王都へと移動していく。


 周りの者達は声を掛ける事も出来ず、そのまま見送るのであった。


 王都に戻ったミクは探索者ギルドの解体所へ行くのだが、途中から野次馬が大量に現れた。その中には朝に喧嘩をしていた連中も居たのだが、ミクは無視して解体所へ入る。


 解体所の職人達は昨日ミクがワイバーンを持って来たのを知っているので、もしかしたらと思っていたが、その予想通りにミクがワイバーンを出したので大喜びしている。



 「いやー、今日のワイバーンは昨日のより状態が良いじゃないか!! 素晴らしいよ、この状態! 毒つきの尻尾は付いたままだし、首の根元が切られただけ。これほど状態が良いのは、解体師冥利に尽きるよ」


 「まったくだな! こりゃあ他のを無視して、こっちを先にやらねえといけねえ。これを後回しにするなんざ、解体師じゃねえ! 野郎ども、気合い入れろ!!」


 「「「「「「「「「「おぅ!!!」」」」」」」」」」



 相変わらずだが、どこの解体所もむさい連中ばかりのようである。それだけ難しく大変な職業であり、技術力も必要である以上、職人集団になるのは仕方ないのかもしれない。



 「スゲー、マジでワイバーンだ。あれを狩ってこれるってメチャクチャ過ぎるだろ。複数チームを組んでたって簡単には倒せないだろうよ、アレは」


 「だな。アレを見てまだゴチャゴチャ言う奴が居たら、それは醜い嫉妬でしかねえ。文句があるなら80階まで行って討伐してくりゃいい。それが探索者だ」


 「「「………チッ」」」



 何人かは気に入らず舌打ちをしていたが、所詮は下らない連中でしかない。ミクは木札を貰ってギルドの建物へと移動。受付嬢に木札を提出した。


 昨日とは違ってすぐに手続きされ、中金貨1枚を貰ってギルドを出る。適当に何処かで食事をしようと思ったら、目の前にメイド姿の女性が現れた。が、よく見るとヴェスの家のメイドである。


 不思議に思ったミクは話しかけようとしたものの、向こうから先に話しかけられた。



 「申し訳ございません。御当主様が、ミク様に屋敷に戻ってきてほしいと仰っておられます」


 「ヴェスの屋敷に? それはいいけど、何で?」


 「歩きながら、お話いたします」



 メイドがそう言うのでミクは大人しく従い、中央区画方面へと歩きつつ、メイドから事情を聞いていく。



 「ミク様は今朝、宰相閣下からの使いの者が当家に来たのを覚えておられますか?」


 「うん。覚えているけど、それがどうかした? 私はゴールダームの者だし、何の関係も無いでしょ?」


 「それが……。実は今朝の宰相閣下の使いの目的はミク様でして、当家では無かったようなのです。宰相閣下は何処からか、ミク様がワイバーンを持って帰られた事を知り、それで当家に来られた。との事でした」


 「ふーん、私にねえ……。ヴェスの屋敷に泊めてもらってるから来たんだろうけどさ、それって朝っぱらからする事かな?」


 「仰る事は分かるのですが、現在当家にはお客様が引っ切り無しに訪れてございます。目的はミク様かワイバーンのようで……」


 「私はともかく、ワイバーンは探索者ギルドに売るんだから、向こうに言うしかないと思うけど?」


 「さあ、私ではなんとも……。ただ、ワイバーン1頭を丸ごとミク様から買い上げようとしているのだとは思います。そうすれば箔が付きますので」


 「下らない見栄の為かー、本当に情けない連中だ。こういう時に軽々に動くから小物だと思われるのにね。早く手に入れるのが貴族の力だとでも思ってるのか知らないけど、エサに群がる蟻にしか見えないね」


 「クスッ……っと、失礼しました」


 「別に失礼じゃないけどね? 相手の事も考えずに押しかける方が、よっぽど失礼だよ。礼儀知らずも甚だしい」



 メイドと話して情報を仕入れながら、面倒な話し合いの予感に溜息を吐きたくなるミクであった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 屋敷に戻って応接室に案内されると、そこには不機嫌丸出しのヴェスと、緊張感を漂わせる使いの連中が居た。ミクは部屋の中に入ると、ヴェスに声を掛ける。



 「ただいま。それにしても機嫌が悪そうだねぇ。まあ、面倒な連中が詰め掛けてくれば当たり前だろうけどさ」


 「おかえり。まあねえ、こいつらウチに居座って帰ろうともしない。どれだけ迷惑掛けてると思ってるのか、分かってるのかね? 自分のトコの貴族の顔に泥を塗ってるんだけど、その事すら理解していないらしい」


 「他家に迷惑掛けまくって、厚顔無恥にも居座ってるんじゃ、面目丸潰れだろうね。その程度の貴族扱いされるし、礼儀も知らないのかと思われるだろうからさ」


 「平民であるミクでも分かる事が、こいつらには分からないんだよ。どれだけ頭が悪いのかって話さ」


 「「「「「「「………」」」」」」」



 残っている貴族の使い達は、ようやく自分達が何をしているのかに気付いたようである。時既に遅し、とはこの事を言うのだが、愚か者は言われるまで理解しないのだ。それでは貴族の使い失格なのだが。



 「それで、私を探してたって聞いたけど、何の用? まさか私を雇いたいとか言わないよね? 私はヴェス、スヴェストラ・オルネイ・カロンヴォルフ伯爵に雇われてるんだけど……もしかして、そんな事も知らないの?」


 「「「「「「「!!!」」」」」」」


 「ね、頭が悪いだろう? 私が雇っていなけりゃ、何でミクが当家に宿泊してるんだい。そんな事すら頭に浮かばないんだよ、こいつら。頭の悪さがよく分かるってもんさ」



 ミクはともかくヴェスは迷惑を掛けられたからだろう、嫌味攻撃が強い。思っている以上の強さだが、どうにも悪徳貴族の使いが混じっている気がしてきたミク。



 「や、雇うとは言っておりませんぞ。何処の馬の骨かも分からぬ者を雇うなど、当家ではあり得ぬこと」


 「ほう、それはつまり当家に喧嘩を売っていると解釈していいね? 覚悟をしておけよ、小僧」


 「う、あ………」



 ヴェスの威圧を受けて顔を真っ青にする使い。ミクからすれば茶番だが、こういう事も貴族社会では必要なのだろう。どうでもよくなったミクは、さっさと答えを聞く事にした。



 「結局こいつらは何がしたくて、こんなバカな行動をしてたの? ただヴェスにやり込められてるだけじゃん。貴族の事とかどうでもいいから、私に関わる事は?」


 「一応あたしの面目を立ててほしかったんだけど、仕方ないか。あたしもこんなバカどもの相手なんて、これ以上したくないしね。簡単に言えばワイバーンを売ってくれって事だろうさ」


 「探索者ギルドに売るんだから、探索者ギルドに行けばいい」


 「我が主は探索者ギルドより高く買うと仰っておられる」


 「だったら大金貨10枚だね。大金貨10枚払うなら売ってもいいよ? 探索者ギルドなら中金貨1枚だったけどね」


 「なっ!? それでは高すぎるであろう!!」


 「だったら探索者ギルドに行きなよ。個別に売り始めたら他の貴族家も絡んでくるに決まってるじゃん。だから迷惑料込みで大金貨10枚だと言ってるんだよ。それが払えないなら探索者ギルドに行くんだね」


 「ハッハッハッハッハッ!! ミクの言う通りさ。お前のトコに売れば、必ずや他の家の者も言い出すだろう。ならば迷惑料込みで払うのは当たり前の事だねえ。しかも貴族に掛けられる迷惑なんだ、大金貨10枚は妥当だろうさ」


 「「「「「「「………」」」」」」」


 「さて、話は終わったようだし、出ていきな。お前達の所為で碌に仕事もできてないんだ。迷惑だから、とっとと失せろ」


 「「「「「「「!!!」」」」」」」



 ヴェスの強烈な威圧で、ガタガタガタと慌てて動き出した貴族の使いども。こうなるなら最初から下らない事をしなければいいものを。


 そう思うも、それが貴族とその関係者かと納得するミクであった。


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