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0811・第4王子と治癒師




 Side:テイメリア・フェルス・ゴールダーム



 私達は第4王子の居る場所へと案内されていますが、屋敷奥に匿われているらしく距離があるみたいです。第4であろうが王子であり王族である以上、十分な守りの為には当然なのでしょうが。


 そして奥の一室に案内されて入ると、そこにはベッドに寝かされた男性が居り、その側に医者らしき者も居ました。どうやら第4王子は眠っているようですね。



 「治癒師よ、第4王子殿下の容態は如何いかがだ?」


 「これは辺境伯閣下。一昨日眠られたきり、未だに目を覚まされませぬ。もしかしすると、このまま……」


 「この治癒師は辺境伯が用意したの? それとも第4王子についてきた?」


 「この治癒師は王城から派遣されてきた者だが……それが如何いかがした?」


 「そう。ファーダ、そいつを抑えておけ」


 「了解した」



 いきなりファーダが現れ、治癒師の方を地面に引き摺り倒して取り押さえました。となると、あの治癒師は何か悪行をしていたという事。もしかしたら毒を盛っていたのでしょうか? ミクがファーダを呼び出すくらいです、その可能性が高そうですね。



 「ぐあっ!! な、何をするっ! これはどういう事だ!!」


 「お前の魂がドス黒いから取り押さえたんだよ。魂は嘘を吐けない。後で調べるが、お前は第4王子に毒か何かを盛っていただろう。私の目からは逃げられんぞ」



 そう言いつつ、ミクは第4王子に小瓶から水を飲ませていました。あれは霊水ですから、毒などを盛られていれば間違いなく治るでしょう。というより治らない筈がありません。死亡以外の全てを回復する薬ですからね。



 「いったいどういう事なのだ? 治癒師が毒を盛っていたと言うが、それが本当なら王城側が第4王子殿下を殺そうとしているという事か?」


 「その辺りの政治的な事は知らないよ。分かっているのはコイツの魂がドス黒く、何か悪行をしているという事だ。私だけじゃない、そこのアレッサなら更に詳しい事が分かる。アレッサ、どうなの?」


 「私の【罪業網羅】には、間違いなくこの男が第4王子に毒を盛っていた事が見えてるよ。他にも第4王子の母親にも毒を盛って殺してるね、それと第1王子にも毒を盛ってる」


 「なんだと!? 正妃様と第1王子殿下にまで!?」


 「辺境伯閣下、お助けを! この者達は私を嘘でおとしめようとしています! 私は王城に勤務している治癒師でございます。このような者どもの言う事など信用できませぬ」


 「心配するな。どんな者でも拷問を受ければ必ず吐く。楽しみにしているといい。少しずつ少しずつ、お前の体をり潰してやろう。それに耐えられるといいな?」


 「くそっ! ふざけるな、早く放せ! 私を誰だと思っている!!」


 「おや、意外に簡単に化けの皮が剥がれたわね。ま、ミクに目をつけられた以上は絶対に逃げられないんだけど、精々足掻くだけは足掻いてみたら? 悲惨な末路しか辿らないけどさ」



 そんな話をしていたら、第4王子殿下の目がうっすらと開いてきました。皆も気付いたのか黙っていますが、悪行をしていた治癒師だけが五月蝿く騒いでいます。



 「………知らない天井だ」


 「お前は転生者か。まさかそのセリフを本当に言うヤツが居るとはな。恥ずかしくないのか、まったく」


 「うぇっ!? 何でおれが転生者だと知って………って、誰?」



 ミクが秒でツッコミを入れましたが、まさか転生者だとは思わず驚いてしまいました。何故この星にガイアからの転生者が居るのかは分かりませんが、こういう事は意外にあるのかもしれません。


 とはいえ第4王子が優秀な理由も理解できます。元ガイアの民であり、おそらくは日本人なのでしょう。となると一定水準の教育は受けている訳であり、ガイアより教育水準の落ちる星に生まれれば、それは優秀で当たり前ですからね。



 「えっと……私はいったい?」


 「もうおれで良くない? 今さら取り繕っても、転生者だってバレてるしさ。そもそもガイアを知ってる私達相手に隙を晒した自分が悪い。自業自得だね」


 「くそぅ。今まで見つかったりとか無かったし、おかしな目で見られる事もなかったのに。何で起きたら日本を知ってるっていうか、ガイアを知ってる人が居るんだよ」


 「私に感謝しなよ? お前はそこの王城から派遣されてきた治癒師に、毒を盛られて殺されかけてたんだよ?」


 「えっ!? ………コイツが治癒師? コイツは第2王妃が連れて来た側仕えじゃないか。治癒師でも何でも無いけど?」


 「第4王子殿下。ワシが分かりますかな?」


 「………えっと、申し訳ありません。初めて御会いしますよね? 何処の誰かは記憶にありませんけど、会ってましたか?」


 「成る程。我が家に来られた時点で、既に朦朧とされていたが、あの時には既に前後不覚に陥っておられたのであろう。ワシと第4王子殿下はここに来られてからしか面識は殆ど無いのだ。一度パーティーで遠くからお見かけしたくらいでしかない」


 「それは確かに初めてだろうね。しかし、何で側仕えが治癒師なんて事になってるのかな? じっくりと聞かせてもらおう。ついでに逃げられると思うなよ」


 「ぐぅっ!! ぬぐぐぐぐぐ……」


 「下らん。どれだけ力を入れようが俺の拘束から逃れられる筈があるまい。愚かなヤツだ。それよりもミク、コイツはどうする? 手っ取り早く済ませるなら書き換えた方が早いぞ。いちいち拷問などという手間をとらずに済む」


 「確かにね。書き換えた方が早いかな? 私が善人に書き換えれば、こいつの人格なんて無くなるし」


 「こわっ! 書き換えると人格が無くなるって……。えっ、マジなの?」


 「マジに決まってるじゃん。いちいち嘘を吐く意味が何処にあるの? 無いよね? そもそもいつ死んだか分からないとはいえ、スキルぐらい知ってるだろうに」


 「スキルは知ってるけど、おれが持ってたスキルって【棒術】だったし、モンスターにあっさりと殺されたからなぁ。気付いたら第4王子になって生まれてたし、何でこうなったかは皆目分からないんだ」


 「成る程。ガイアで死んだ筈が何故か転生していて記憶があったと。で、周りに人間が居ないから異世界だと分かったって訳か」


 「ってそうだ、君達人間じゃん! おれなんてコボルトみたいな姿で産まれたのにさ! いや、これはこれで悪くないんだけども」


 「コボルト? 第4王子殿下は普通の狼人族であり、コボルトではないが」


 「ああ、うん。そうなんだけど……私達みたいな者からすれば違いが分かり難いっていう意味だよ。それはともかくとして、まずはこの男を書き換えてしまおう。どうせ書き換えれば自殺なんぞ出来なくなる」


 「ぐぅぅぅぅぅ、放せぇ!!」


 「阿呆か。俺の力を撥ね退ける事が出来る訳が無い。無駄な抵抗だが、やりたいだけやれ、どうせすぐにお前という人格は消えて無くなる」


 「そういう事。それじゃあ、さようなら」


 「うっ!?」



 男は一度ビクッと跳ねると、動きが完全に無くなりました。するとすぐにファーダは放し、「では、帰る」と言うと消えてしまいます。いつも通りに本体空間に帰ったのでしょうが、「消えた!?」と第4王子が驚いていますね。


 それはともかく、まずは話し合いをしないといけないのですが、この毒を盛っていた男を放っておく訳には参りません。そう思っていると、善人に書き換えられた男が立ち上がりました。



 「どう? 生まれ変わった気分は」


 「真に素晴らしく感じます。今までの私はどれほどに愚かだったのでしょう。あのような事に手を染めるなど……」



 相変わらずですが、善人になった者の顔が……。あの全てを悟ったような表情は、どうにも生理的に受け付けません。なんなのでしょうね? アレは。


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