0808・王都での雑談
Side:マハル
ナロンダ国に入ってから7日。ミクさんが悪人を食い荒らしながら移動し、今はナロンダ国の王都に居ます。途中の村などでも不安からか悪人が多い傾向があり、それだけミクさんとファーダさんが忙しく食い荒らしていました。
特に御二人が食べないと先に進めないので、出来るだけ1日で食い荒らせるようにと頑張っておられたらしく、いつもよりも時間が掛かったと聞きます。国に不安が広がると、やはりそれだけ悪人になる者が増えるのでしょうね。
今は王都ですが2~3日ここでゆっくりする事になりそうです。ミクさんとファーダさんも急いで食い荒らしたりと忙しかったのもあり、情報収集の意味も篭めて王都には少し長めの滞在をしようと決まりました。
「ナロンダ国の王都とはいえ、当たり前だけどデジム王国と然して変わらないわね。ま、そこまで変わるような特徴も無いし、当たり前といえば当たり前なんだけどさ」
「それはねえ。この国も南は海に面しているけど、海の近くに王都がある訳でもなければ内陸にある訳だから、どう頑張っても普通にならざるを得ないだろ。っていうか、国としても特色も大して無いじゃないか。そんな話も聞かないし」
「強いて言えば、この国にはモンスターが多いって事ぐらいかな? 何でもその御蔭で肉には不自由しないそうだけど、代わりに危険って事だから微妙な話よねえ。それでも食べる物が多いのはありがたいでしょうけど」
「ですね。為政者としても危険とはいえ、それでも食べる物が多いのは助かるでしょう。ただしモンスターを何とかする為に多くの傭兵を集めなければいけませんし、その傭兵の所為で治安が良くないと聞きます」
「それは仕方がないのではないでしょうか。荒くれが増えれば治安は乱れますが、しかしその荒くれが居ないとモンスターを減らせませんし、その辺りは諦めるしかない部分です。それでも兵士などで抑えこめているようですよ?」
「その割には悪人が多いし、本当に抑えこめているのかは疑問だねえ。あたしが考えるに何処かに皺寄せが行ってるんじゃないかと思う。それが何処かは分かってないけど、兵士ならセーフさ。ただしスラムとか女ならアウトだね」
「兵士は抑える為に苦労しているって事だろうけど、スラムと女性は……そういう事ね。娼館が儲かりそうだけど、裏とか非合法ならちょっとマズいかな? 闇ギルドが出来そうな感じだし、ミクが潰さないと面倒な事になるかも」
「この星には闇ギルドと似た組織自体はあるようですが、ハッキリと闇ギルドとは言わないようですね。何と言いますか、その分だけアルデムは腐っていると言えなくもないなと思います。闇ギルドなんて言葉があるくらいには当たり前なんですから」
「まあ、言いたい事は分かるね。確かに闇ギルドって言葉が当たり前に使われるって事は、それだけ多く存在して普通の事になってしまってるって事だし、それに違和感を抱かなくなってしまったって事だからさ」
「何というか、あたし達もかなり毒されていたのは間違いないね。それがおかしな事だと認識出来ないくらい普通になっちまってたんだからさ。そんな悪人どもも今は昔だけど、あの病気が蔓延しないとそうならなかったのは何とも言えない」
「まあ、地下に広がってたんでしょ? そういう組織が広がったらどうにもならないわよ。内部で抗争をしても別の組織が生まれたり、他でも生まれたりしてどうにもならないだろうし、それだけ多くの人口を抱えてたって事なんだと思うけど?」
「確かにそういう組織を作るにしても、それだけ多くの民が必要ですね。でなければ組織を作れない訳で。となると職にあぶれた者達を始め、結構な数が居ないと成立しませんからね。増えすぎたという事でしょうか?」
「だろうね。そもそも人口が仕事とつり合っていれば、あぶれる者は居ないんだよね。もちろん自分から働かないヤツは除くけどさ。そんな奴等が集まっても大した脅威にはならないし抑え込めるだろうけど、それが増えすぎると立派な勢力だよ」
「盗賊団みたいなものであれば対処は難しくないし狩ればいいんだけど、町や都市で暗躍する組織になられると厄介さが跳ね上がるわね。それが闇ギルドなんだから、確かにそういう組織が無いこの星より腐ってたのかと言いたくなる」
「腐ってたのは確かだろうけど、そういう奴等が当たり前なほど国民が多かったとも言えるだろうさ。だからはみ出し者を受け入れる闇ギルドなんかが成立した訳なんだし、そこに群がるように阿呆どもが集まるんだ」
「こっちに関しては、今は戦国乱世だけどかつては違うわよね? そういう闇ギルド的なものは無かったのかしら。中央大帝国なんて国があったんだから、そういう国には闇ギルドくらいありそうだけど……」
「あったのか無かったのかは行ってみないと分からないけど、既に中央大帝国は分裂しちまって無いんだろ?だったら闇ギルドみたいな組織も何処かで旗揚げしてるかもね。ここは自分達の国だってさ」
「冗談でもなんでもなく、本当にありそうなのが始末に負えないわね。だからこそ戦国乱世って気もするわ。そしてそういう国こそ荒くれが集まって巨大化するんじゃないの? 荒くれが集まればその分潰しやすいとは思うけども」
「ま、とにかく明日から情報収集をしましょう。今日は着いたばかりですし、悪人も多いですから大人しくしていた方が無難です。少し前の町でもおかしな輩に狙われましたからね」
「アレは私の所為ではありませんよ? 勝手な事を言い出した愚か者が悪いのです。その日の夜に喰われたので私が犯人かのように疑われましたけど、そもそも宿に居た私がどうやって殺したり出来るのか不思議でなりません」
「ま、あたし達は犯人を知ってるけど、それでもティアじゃない事は正しいからね。それは主張をしておいたし間違ってはいないから、向こうも最後には認めたろう。あそこはあれで引くのが正解さ」
「領主も悪い者ではなかったですしね。その息子が勝手にティアさんに惚れたうえ、急に自分の妻にしてやるとか言いだしましたし。そのうえ女癖が極めて悪かったと後で発覚しました。ま、あの子爵も激怒していたから大丈夫でしょう」
「そこら辺りから、実は居なくなった息子の子供ですっていう女が出てきたからねえ。あれには笑ったけど、あの子爵は笑えなかっただろうさ。結論として、発覚しそうになったから逃亡したって事になったしね」
「許婚がいたのに認知していない子供が5人で、妊娠している女性が7人だもの、子爵が激怒するのも分かるわよ。それが自分の息子ってなったら腸が煮えくり返る思いでしょ。自分の手で縊り殺したかったのかもしれないわね」
「それほどの激怒っぷりでしたし、気持ちは分からなくもありません。貴族としての面子を盛大に潰されたのです。怒り心頭では済まないでしょう、それぐらいに怒り狂っていましたから」
「あの子供と妊娠している女性が全て本当かは知らないけど、ミクが喰うぐらいの悪であった事は間違いないんだ。何となく全員本物なんじゃないかと思うよ。情けなさと腹立たしさが合わさって、あそこまで怒り狂ったんだろうさ」
「そういうのは、あるでしょうね。父親の方はミクが喰ってないんだから、少なくともまともな貴族だと分かってるんだし、まともだからこそ怒り狂ったと言えるもの」
まともだから怒り狂うか……。確かに思い出してみると、そんな感じだったなあ。




