0799・決死隊
Side:ロフェル
門のこちら側。つまり正面から見て、門の左側に架かっていた梯子は全て壊せたけど、門の右側に架かっている梯子はまだ何も出来ていない。ミクは向こう側に行って梯子を壊してくる気で、私達はこちらに残って敵に攻撃する。
といっても私とシャルが弓で外の敵を攻撃し、アレッサとティアとマハルは侵入した敵を倒しに行くという形だ。未だ向こうの梯子には敵が群がっており、既に押されているのか敵がどんどんと入り込んできている。
間者が居て侵入を許したというよりは、私達が居ない側なので普通に突破されてしまった。敵も危険な矢やボルトが飛んでくる側より、それらが飛んでこない側を攻めた訳だ。そして私達は門の近くから向こう側を攻撃する。
敵兵ならば何でもいいと矢を放ち、次々に倒していく。ミクからある程度の矢は受け取っている為、矢のストックはまだまだある。魔物の羽根も上手く使えているし、おかしな飛び方もしないので十分だろう。後は狙って撃つだけだ。
私とシャルが敵兵を射っていると、向こうに着いたミクが次々に梯子を壊し始めた。敵が雪崩込むように攻めて来ていても、問答無用で押し込み落としていく。流石の怪物パワーであり容赦の欠片も無い。
その後は梯子を壊して回転させ、雪崩れ込もうとしていた敵兵が次々落下していく。それが終わったら次の梯子へと行き、また同じように壊して敵を落としていった。ここまで来れば私達のする事は最早無い。
「………敵の動きが変だね? 今までは我武者羅に攻めて来ていたのに、急に大人しくなった。もちろん梯子を壊されているんだけど、それだけじゃない。敵さん、何か狙ってるね。これはそういう雰囲気だ」
「狙ってる? ……ミクが言っていた不死玉かしら? 爆発が起きるっていうヤツ。確かファーダが聞いてきた中にその話があったのよね、決死隊がどうこうっって聞いたし」
「なら敵は、って何か来たね。兵士だけど、何かを抱えてる?」
シャルが言う方向を見ると、何やら盾を掲げた者達が左右を走り、その中央に何かを抱えた者が走っている。私達は不死玉の可能性があるのですぐに門から離れ、敵の様子を窺う。【念話】で知らせたいところだけど、私じゃピンポイントで知らせる事が出来ない。
仲間が近くなら【念話】は普通に使えるんだけど、この乱戦という混乱の中でピンポイントに味方を探し出して連絡するのは流石に無理。それはミクでもなければ出来ない。私は敵が何をしようとしているのかを固唾を呑みながら見守る。
左右に盾を持っていた奴等が逃げ、何かを設置していた者が懐から取り出した物に火を着けた。どうやら着火の魔道具を使ったらしく、すぐに縄らしき物に火が着いた。そしてそれを地面に置いた何かに近づけると……。
ドゴーーーン!!! という大きな音が響き、私達は大きな揺れを受けてバランスを崩す。とはいえ落ちる事は無く、壁上で耐える事が出来たのだが、あまりの威力にちょっとした恐怖を感じた。あれが不死玉の威力……。
門の状態が見えないが、あれほどの威力だと門が壊されたかもしれない。そう思っていると、再び盾を構えた者達と何かを抱えた者が突っ込んできた。間違いなく不死玉を持った連中だ。
「クソ! 恐らくかなりの威力があるだろう事は分かっていたっていうのに! ロフェル、さっさと逃げるよ。このまま居たんじゃ、あたし達までどうなるか分からない。ミクが復活させてくれるからって、命を簡単に捨てていい訳じゃないんだからね」
「分かってるわよ。あんな危険な物に近付きたい訳ないでしょう! 何よ、アレ? あまりに危険すぎる!!」
私達は壁上を移動して更に離れて様子を見る。ミクは不死玉の威力を教える為、敢えて敵には使わせると言っていた。でもこんな攻撃が当たり前になると、もはや町攻めも変わってくるわね。鉄の門に意味が無くなる。
今までなら多数の兵士が命を落としていたけど、不死玉があれば数人から十数人ぐらいで門が開いてしまう。もはや鉄の門の防御力など大した事が無い。ただし不死玉がどれぐらい手に入るかによっても変わるでしょうけど。
ドゴーーーン!!! という音が再び響き、門が倒れていくのが分かる。たった2回の攻撃で門が役に立たないようになってしまった。本当に鉄の門では町は守れない。そんな時代が来ている。
そもそも不死玉はゴブルン王国にもあるんだもの。場合によってはアレを奪い合う泥沼の戦争が起きるかもしれない。既に祖国は手を出しているし、こっちの使い方にもすぐに気付く筈。銃にも爆発する武器にも使えてしまう。
もちろん集めるのは大変だけど、平時から集めておけば戦争に使える量は十分に溜まるだろう。辺境ではあるけど隣国はコルクサ。そこまで強力な国でもないし、あそこは遊牧民族でしかない。放っておけばいいだけ。
っ!! 祖国の事を考えて現実逃避をしている場合じゃない。これから何をすればいい? 既に敵の攻撃で門は壊れてしまった。門が町の方向に倒れてしまっていて、もはや守りには使えていない。
「ロフェル、敵が攻めて来るよ。今後は死に物狂いでねえ。あたし達は敵を上から射る。少しでも多くの敵を、そして近付いてきた指揮官を殺す。門のところを守るのは兵士と騎士に任せな。あたし達はあたし達にしか出来ない事をする」
「了解」
とにかくシャルが一緒に居てくれて助かったわ。私一人だと何をしていいか分からなかった筈。確かに今は私達が出来る事をするべきね。他の者が出来る事は他の者に任せるべきよ。
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」」」」
門が壊れたからって一気に突撃してきたわね。門の近くにはこちらの兵が居る、後は彼らに任せるしかないわ。私達は少しでも敵の数を上から減らす。それをするしかない。
先頭の兵士が射程圏内に入っても撃たない。何故なら私達の目的は指揮官の抹殺。それが高所をとって遠距離武器を持っている私達だけが出来ること。敵兵を倒すだけじゃ簡単には勢いを止められない。
「あそこに居るねえ、プレートアーマーが。下級、中級、上級とあるらしいけど、騎士は騎士だ。殺せば敵軍の戦力は多少減るだろう。何より騎士は現場の指揮官っぽいしね」
「それだけじゃなくスキル持ちは騎士になりやすいみたいよ。前回のナロンダとの戦いで、スキル持ちの騎士っていうのが出てきたわ」
「へぇ、成る程。ならば余計に今の内に殺しておいた方がいいね。兵士ならばそこまで気にする事もないんだけど、スキル持ちで騎士なら良いスキルを持ってるんだろうさ。となると、この星では誰も彼もがスキルを得られる訳じゃないんだね」
「当たり前でしょ」
「ガイアではどんなヤツでも1つスキルを得られてたんだよ。ただしランダムでバラバラだったみたいだけどね。屈強な筋肉ムキムキの男が【裁縫】のスキルを持ってたりするんだ」
「……流石にそれはどうなのかしら、ね!!」
私が放った矢は一直線に飛び、狙っていたプレートアーマーに直撃した。心臓部分を貫通しているので、プレートアーマーを脱がせて治療しなければすぐに死ぬでしょ。とはいえ戦場でそんな事は不可能なので、アレは死ぬしかない。
シャルが撃ち込んだ矢もプレートアーマーに直撃し、兜を貫通していった。あれも間違いなく致死の一撃だろう。これが私達のやるべき事であり、私達にしか出来ない事だ。
気掛かりなのは、皆がどうなったかなんだけど……今の所は全く分からない。無事だと祈るしかないわね。




