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0798・壁上の戦い・2日目 その2




 Side:マハル



 ミクさんが前で防いでくれますので、ボク達はその間に敵の弓兵と魔法兵を始末していきます。相手がこちらの攻撃で簡単に死ぬからか、慌てふためいているのが良く分かりますね。


 後ろに居て矢や魔法を撃つだけだと思っていたのでしょうか? だとしたら随分甘いとしか思えません。目の前で多くの兵士が命を懸けて戦っているのに、自分達は死ぬ覚悟もなく戦っていたのでしょう。


 呆れてきますが、ここは戦場。相手が出てきている以上は、命を失う覚悟があると見做されます。もちろん無理矢理に連れて来られた者も居るかもしれません、しかし戦場では命の奪い合いが当たり前。そもそもそれが戦場というものです。


 命を奪われるのが嫌なら戦場から逃げるしかない。ここに居る以上、命が奪われても文句は言えないのですからね。にも関わらず慌てふためいているのを見ると、本当に覚悟が無かったのだなとしか思えません。



 「本当に酷いもんだ。マハルでさえ分かってるのに、命を懸ける覚悟もなく戦場に来たようだね。呆れてくるのと同時に、あんな甘ちゃんどもは殲滅したくなる。特に後ろに居る奴等から殺してやろうか」


 「あそこまで届くのをバラすのは得策ではないのでは? それに味方からも色々と言われてしまいますよ。奥に居る者達を始末したいのは分かりますが、まだまだ始まったばかりです。それに逃がしてもファーダが処理するでしょう」


 「まあね。敵軍は全滅が確定してるから、無理に殺さなくてもいい。敵国の領土内に入ってから殺すし、咎めたてる者は居ないでしょ」


 「そもそも攻め込んだ以上は、命が無くなっても文句は言えないさ。死ぬのが嫌なら最初から攻めて来なきゃ良かっただけだからね。自分達から戦端を開いておいて死んだら文句を言ってくるとか、頭がおかしいとしか言えないさ」


 「相手は王族だし、首を取れば褒美が増えそうな感じねえ。ま、出てこないでしょうけど」


 「流石に向こうも取られちゃいけない首だし、真っ先に逃がすのは確実さ。それでも最後は行方不明になるんだけど、それは諦めてもらうしかないね。ま、本人達は理解も出来ないままに死んでいくだろうから、悪い死に方じゃないさ」


 「苦しんで苦しんで死ぬよりはマシだと思うわよ。一瞬で死ぬなら痛みもほぼ無い筈だし、死に方としては温情のある方法よね。【瘴気の苗床】よりは遥かにマシだもの」


 「それ聞いたけど、本当に悪夢よね。痛みと苦しみを受け続けるけど死ねないとか、ミクに対して喧嘩を売った中でも最大の罰じゃない? 聞けば納得するし、やられても仕方ないとしか思えないけどね」


 「ミクが仲間と認識している者を殺害したのですから、それは地獄に突き落とされても仕方がないのでは? そのうえ王族の権威で罪から逃れようとしたのですから、何重もの意味で罪が重くなるのは当たり前です。王族の権威というものは悪用するものではありません」


 「まあねえ。難癖つけて殺して、自分は王族の権威で逃げようってんだ。地獄に落とされても仕方がないクズの所業だろ。しかも欲望からやらかしたってんだから、もはや地獄行き以外に無いさ」



 そうやって話している間にも次々と敵の弓兵と魔法兵が死んでいきます。ボク達が狙っているから当たり前なのですが、それでも簡単に死んでしまうからでしょう、遂に敵が弓兵と魔法兵を下げました。


 下げるというか、我先に背を向けて逃走していきます。それを見ていて空しくなってきますが、それでも敵は敵。ボク達は背を向けた相手に矢やボルトを撃ち込んでいき、多くの弓兵や魔法兵を倒しました。


 味方としてはそれどころではなく、兵士が梯子を使って登ってくるので、必死になって落としていっています。しかしそろそろ物量に耐えられなくなってきたようで、徐々に押し込まれていますね。これはマズいのでは?。



 「マズいって事はないね、単に第二段階に来ただけさ。第一段階である門攻めで追い返せれば良かったんだけど、そう簡単に戦闘が終わる筈も無い。昨日は傭兵だけだったけど、今日は兵士が来てる。人数の差があり過ぎるんだよ」


 「正規兵は少なくとも2000は超えてる。流石に400と2000の物量差は同じじゃないって事なんだけど、そろそろ敵がこちらに来るから近接武器の準備」



 ミクさんの言葉でボク達はすぐに弓やクロスボウを仕舞い、近接武器をアイテムポーチから取り出す。これの御蔭で武器が仕舞いやすくなったし取り出しやすくもなったから、素早く武器を切り替える事が出来る様になったんですよ。


 ボクはメイスとラウンドシールドを取り出し、構えると前に出る。盾を持っているボクが前に出た方が良いという判断からだったんだけど、この狭い壁上では邪魔になるだけかもしれない。



 「私達はとにかく上がってくる敵を叩き落す。私は梯子を壊していくから援護してくれる? 特にティアは宜しく。強力なの使って搾り殺していいから。死人に口無しって言うしね」


 「まあ、やれと言われればやりますけど……ただし上がってきている敵兵に対してだけですよ? 多くの敵にやると、むしろ味方に怪しまれてしまいますので」


 「分かってる。私が梯子を壊す間、敵兵の勢いが一時的に落ちればいいだけだから。それじゃ、行くよ!」



 ミクさんが前に出たので、ボクも慌ててついて行きます。梯子を登ってきて押し込んでくる為、次から次へと敵兵が上がって来ていますが、ミクさんはそれをシールドバッシュで吹き飛ばし、それが終わると梯子に対してウォーハンマーを振りました。


 梯子にウォーハンマーが当たった瞬間「バキィッ!!」という音がし、掛かっていた梯子の片方が壊れて不安定に。そして片方に重さが掛かり過ぎたらしく、掛かっていた梯子が「くるんっ」と回転してしまいました。


 その回転で一気に多くの敵兵が梯子から転落。重傷を負ったり死亡したりの大惨事となっています。それを見ながらも、ボク達はこちら側に到達した敵兵を次々と殺害。次の梯子へと進んで行きます。


 とにかく今やるべき事は、梯子を壊してこれ以上の敵兵の侵入を阻止する事です。敵の持っている梯子は6つであり、1つ壊したので後5つ。


 ボク達は敵兵を倒し終わると、進んで次の梯子へと近寄ります。今度は敵兵に対してティアさんが【夢幻搾精】を使ったのでしょう、白目を剥いた兵士達が落下していきました。その隙にミクさんが近付いて梯子の片方を破壊。


 そして先ほどの梯子と同じく回転し、多くの兵士が引っ繰り返って落下していきます。梯子の縦の部分も、片方を壊せばそれで使えなくなるようですね。


 特に「くるんっ」と回転するのは面白く、多くの敵兵が乗っているからかバランスが制御できないのでしょう。それを見てアレッサさんとシャルティアさんが笑っています。



 「流石に戦闘中に笑わせてもらえるとは思ってなかったよ! それにしてもコントみたいな落ちっぷりだったねえ!」


 「あははははは! あれは天然だからこそ出来るリアクションね! あの「くるんっ」ってなって落ちていく時の顔ったらないわよ、本当! 100点満点じゃない?」



 あの落ちる瞬間の絶望した表情が楽しくて仕方がないようですね。言いたい事は分かりますし、ボクもちょっと面白いと思ったのは事実です。不謹慎ですから大声で笑ったりはしませんけどね。


 それでも落ちると思った一瞬で、あれほど表情というのは変わるんだなと思いました。一部の敵兵とはバッチリ目が合いましたので、何とも言えない感情が込み上げてきますが……。


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