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0076・ワイバーンという魔物




 解体所の職人の前でワイバーンを出したミク。最初は理解しなかった職人も、時間が経つと目の前に置かれたのがワイバーンだと気付く。



 「うぉぉーーーーーっ!!! これワイバーンじゃえねえか!? こ、これ何処で討伐してきたんだよ!?」


 「これ? ダンジョンの80階。それ以上先は無かったよ。奥に魔法陣があって、それに乗ったら外に出たから。つまり、こいつが最奥のボスって事」


 「「「「「「「「「「おぉぉーーーっ!!!!」」」」」」」」」」」


 「凄いな! ワイバーンが最奥かよ! 何てダンジョンなんだ! そのダンジョンをあんたは………?」


 「なに?」


 「あ、あんたソロ……だよな? つまりこのワイバーン、ソロで倒しちまったのかよ!?」


 「「「「「「「「「「えぇぇぇーーーーっ!!?!!?!!」」」」」」」」」」


 「いや、私一人なんだから、一人で倒したに決まってるでしょ。そんなに驚く事?」


 「いやいやいやいや、ワイバーンをソロ討伐とかとんでもない事をやってのけてるんだぞ!? 古の英雄じゃねえんだからさ、ワイバーンをソロ討伐できるヤツなんて世界に……今の世界に居るのか?」


 「それぐらい凄い事なんだぜ? あんたがやった事は、世界中探しても誰もできないかもしれない事なんだ。それをやっちまったんだから、とんでもねえ事なんだよ!!」


 「ワイバーンっていうのは皮が硬くて強靭でな、並の刃物じゃ効かねえって言われてるんだぜ? そんな相手に効く刃物から持たなきゃいけないうえに、相手は空を飛ぶんだからな。普通は一人で相手にしたりしねえよ」


 「ああ、それで。なんとか勝つ事はできたけど、この通りバルディッシュが壊れちゃったからね。成る程、このワイバーンっていうのは強かったんだ」


 「いや、知らねえで倒したのかよ……って、凄まじいひしゃげ方してるなぁ。バルディッシュがそこまでになるぐらい、強い力で叩きつけなきゃ切れないのか。尋常じゃねえな」


 「いやいや、確かにそうだけどよ、それでも倒せてる事がすげえよ。このバルディッシュ鉄製だぜ? これでワイバーンがどうにかなる方が驚きだが、言われてる程には強くねえのか?」



 色々な者が様々に話している所為で分かり難いが、ワイバーンを倒すには相当の装備と人数を掛けなければいけないのが分かる。ミクにとっては一人で倒せる魔物でも、普通はそうではないという証拠であろう。


 解体所の職員がワイバーンと書かれた木札を渡してきたので、それを持ってギルドへ。受付嬢に渡すと、木札を見て固まっている。大声を出さないだけ教育は行き届いているが、態度がおかしいのでバレバレだ。


 この程度のリアクションは致し方ないと言えるものの、いつまで経ってもお金は支払われない。業を煮やしたミクが聞こうとすると、受付嬢はまたもや階段へと行き、2階へと上がっていった。


 結局待たされたものの、3日連続でギルドマスターの部屋へと案内される。流石に勘弁してほしいと思っているが、表情には出さずにソファーに座り話し出す。



 「80階に居たのがワイバーン? あの空飛ぶトカゲで、あいつを倒したら脱出する魔法陣しかなかった。他にショートカット魔法陣がない以上は、これで完全攻略だと思うんだけど、どう?」


 「毎回同じじゃが、それが本当ならと言うしかないのう。他の者で確認がとれん事には何とも言えん。ただ、ワイバーンなのは確実なのじゃろう。でなければハッキリとワイバーンとは書かぬであろうしな」


 「私としてはワイバーンかどうかは別として、ある程度の金額で売れてくれないと困るのよ。………ここまでになったから」


 「これは鉄製のバルディッシュか……。それにしても酷いの。ここまでせねば勝てんとはいえ、1戦で総鉄製のバルディッシュが壊れるか。やはり最低でもドリュー鉄、できればウィリウム鋼の武器が要るじゃろうな」


 「その辺りになると、早々簡単には買えないのよね。ゴールダームはエクスダート鋼だけど、ウィリウム鋼は確かドワーフの国でしょ?」


 「そうじゃな。ドルム地下王国で作られておるのがウィリウム鋼、ドリュー鉄はジャンダルコとなる。素材の元となる魔物が出てくるのが、それぞれの国のダンジョンじゃが、我が国もワイバーンとなると話が変わるのう」


 「そうなの?」


 「うむ。ワイバーンは飛竜と呼ばれるが、ドラゴンのような竜種ではない。亜竜に分類されるのだが、それでも強靭な皮に翼膜、そして硬く切れ味の鋭い牙や爪を持っておる。それらを加工か素材にする事で、新たな物を生み出せるかもしれん」


 「ふーん。私としては何でも良いから報酬が欲しいよ。他に槍とウォーハンマーがあるから適当な魔物は狩れるし、潰れたバルディッシュ以上の儲けなら良いんだけど」


 「ワイバーンならば確実に金貨じゃ。状態が良ければ中金貨すらある。それがワイバーンじゃからな」


 「へー、それなら報酬を楽しみにしてるよ」


 「何か軽いのう」



 ギルドマスターの部屋を後にし、ミクは1階へと下りると精算してもらう。ワイバーン1頭で中金貨1枚。確かにギルドマスターの言っていた通りの金額になった。


 ミクはお金を受けとると、さっさとヴェスの屋敷へと帰るのだが、昨日と同じくついてくる奴等が居た。いつもと変わらず貴族街への門で退散するんだから、追いかけてこなくていいよと、内心ウンザリし始めている。


 屋敷に踊ったミクはヴェスに報告し、食事の後は部屋へと戻り、ベッドに横になって目を瞑る。


 本体がワイバーンの皮で皮鎧を作ったり、翼膜で皮のローブを作ったりして暇を潰す。更には胴体の皮を3重に貼ったカイトシールドも作ったらしい。


 既にドリュー鉄のバルディッシュは完成しており、今は骨を粉にして本体の粘液と混ぜ合わせて焼いている。何処まで強度が違うのかを試すようだ。


 そういった事をして過ごしていると、分体はゆっくりと起き上がった。どうやら部屋を出るようであり、レティーを含めて全て本体空間に送ったら、関わりを薄くして蜘蛛の姿になる。


 そのまま窓から出ると、ミクはダンジョンの方へと移動して行った。


 ダンジョンの魔法陣は一定の大きさの者にしか反応しないらしく、オークの姿になると転送される。果たしてオークとして認識されたのか、それともある程度の大きさであれば魔物でも入れるのか。


 調べる事に興味はあれど、ミクはオークの姿のまま最奥へと進む。そして再びのワイバーン戦、いきなり全力で近付くと噛み付いてきたので、上半身を化け物の口に変えて、逆に頭を喰らい勝利。


 本体空間に死体を転送したら、奥の魔法陣から脱出。再び61階への魔法陣に乗る。そして80階のボス部屋へ。どうやら夜通し周回で狩る気らしい。


 こうなるとワイバーンが憐れでしかないが、肉塊にロックオンされたのだから諦めるしかないだろう。ミクは再び倒し、本体空間へと転送した。


 結局、屋敷に戻ったのは深夜だったが、それまでに12頭のワイバーンを狩ったミク。本体も喜びつつ、色々な素材に分けている。どうやら物作りの為に狩られたようだ。


 屋敷に戻るとすぐに美女の姿になり、アイテムバッグやレティーを転送し、下着を履くとベッドに寝転がる。今は本体が物作りの最中だ。どんな物が出来るのだろうか。少々楽しみである。



 (翼膜で皮のズボンであったり、胴体の皮で鎧下だったりを作ってる。それ以外にもブーツや剣帯も。更には爪で解体用のナイフに、骨と粘液を練って焼いて完成した槌頭のウォーハンマーも出来た。柄はトレント製だけど、鉄の槌頭より遥かに頑丈だね)



 どうやら順調に凶悪化しているようで、何よりである。


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