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0792・壁上の攻防




 Side:テイメリア・フェルス・ゴールダーム



 町を守る戦いが始まりました。まさか自分が異なる惑星に行き、辺境の町を守る戦いに身を投じるとは思いもしませんでしたね。まあ、こういう人生も悪くないと最近は思います。あのまま城に居ては絶対に出来ない経験をしていますし、友人知人と共に在る事は悪い事とは思えません。


 それに私自身、これから先もずっと生きていくのです。もちろんいつかは誰かに殺されるのかもしれませんし、病気で死ぬのかもしれません。ですが、それらが無い限りは永遠に生きる。それが今の私である以上、普通の人間のように生きる事は出来ない。



 「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」」」」



 敵の傭兵がどんどんと近付き、普通の弓の有効射程に入ったので味方が撃ち始めます。そろそろ私達も撃たないといけませんね。でないと怪しまれますし、十分に引き付けました。私は敵軍の中央に適当に狙いをつけ、クロスボウを撃ちます。


 私が引き鉄を引いた瞬間「ガシンッ!!」と音がして発射されたボルトは、凄まじいパワーで直進していき、何処かの誰かに直撃しました。流石に走って突撃している傭兵の頭に当てる事はできません。それでも体の何処かに当たっただけで十分でしょう。


 私はクロスボウの先端の器具を地面に近づけ、それを踏んで弦を引き上げます。一瞬【身体強化】を使えば楽々と弦が引けますので、その後にボルトをセットしたら再び狙いを定めて発射。「ガシンッ!!」という音と共に再びボルトが飛んでいきます。


 クロスボウは銃に比べて静かというのが利点らしいのですが、ドラゴン素材のパワーなのか結構音がしてしまいますね。とはいえ私達の使い方では静音性能など要りませんので、音がしても問題ないのですが。


 アレッサもマハルも敵軍にボルトを撃ち込み、ミク、シャル、ロフェルは敵の指示役を狙っているようです。本気で狙って仕留めるのなら、クロスボウより弓矢の方が優秀でしょう。連射も速いですしね。


 普通はクロスボウの方が威力を上げられるのでしょうが、最強の怪物の持つパワーに勝てる力などありませんし、ドラゴン素材の耐久限界を引き出せるのもミクだけでしょう。いえ、ロフェルもスキルを駆使すれば出来るんでしたっけ? 十分に化け物ですね。


 私達とはいえ6人しか居ませんから、1人1殺としても一度では6人しか殺せません。それでも確実に6人殺せているとしたら優秀でしょうか? 出来得る限り狙って撃ってますし、下から弓矢を撃ってきている者や魔法を放っている者を優先して殺しています。



 「ふざけんじゃねえぞ! このクソ野郎どもが!!!」


 「死ね! 死ね! テメェらみてえなクソ野郎どもは死んじまえ!!!」


 「このゴミクソ野郎どもが!! 今すぐブッ殺してやる!!!」



 私達に対して敵軍から罵詈雑言が飛んで来ますが、弱者の戯言ざれごとというのは存外面白いものですね。まさか、あそこまで綺麗な負け犬の遠吠えが見られるとは思いもしませんでした。


 自分達が何を大声で言っているのか理解していないのでしょうか? 「自分達が届かない所から一方的に攻撃するのは止めて下さい」。丁寧な言葉使いに変えれば、彼らの本音はコレなのですよ。どう考えても無様な言葉としか思えません。


 言いたい事は分かりますが、それは口に出してはいけない事なのですよ。歯を食いしばってでも言ってはいけない事なのです。王宮の晩餐会などでは嘲笑されてしまいますので、悔しかろうが腹立たしかろうが笑顔で無視する事が求められる。


 短いとはいえ、そういう場所で生きてきた身としては、あんな恥ずかしい事をするとは「礼儀がなっていませんよ」としか言えません。まだまだ子供ですねと言ったところでしょうか。ある意味では微笑ましいものです。


 そんな方々にボルトを撃ち込んでいると、梯子が掛けられて登ってくる者が現れ始めました。下からどんどんと登ってくるので、梯子を向こうに押す事も出来ていません。これはいけませんね、という事で落ちてもらいましょう。



 「あひょ!?」 「ひぃっ!?」 「へぅっ!?」 「おぅふっ!!」



 【夢幻搾精】を受けた方々が次々と落下していきます。精を漏らしているからか、何故か精気を吸収できていますね? もしかしたら敵軍に使った方が私の力の強化に繋がるのでしょうか? ……それはそれで面倒事が来そうな気も。


 落ちた方々は瀕死か死亡だからいいとして、手当たり次第に使うだけでは生き残ってしまいます。それでは私達が怪しまれますし、おかしな力を持つとして囲われる可能性も否定できません。もちろん逃げる事は容易いでしょうが、面倒な事は御免ですし……どうしたものでしょうかね。


 とりあえず今は上に来た者だけに喰らわせて落としましょう。領都の壁の高さは6メートル。【夢幻搾精】を受けた状態で落下すれば死亡する確率は高く、仮に生き残っていても動けず、後で搾り殺せば終わりです。


 そもそも敵を生き残らせる理由がありませんし、敵の騎士でもなければ捕虜の価値は薄いそうですからね。そもそも兵士を捕虜にする意味もありません。死に掛けているなら殺すのが戦場の作法だと聞きました。


 ここはシャルの言っていた事と変わりません。戦場では薬などは貴重で、敵の兵士などに使ってやる事などあり得ないと。敵兵に使ったと知られれば、それだけで味方の兵士から暴動が起きる。だから助けたくても絶対に手を出すなと言われています。


 確かに自軍よりも敵軍を優先するのかとなれば、味方の兵士が怒り狂うのも分からなくはありません。戦場であるが故に秩序は必要ですし、その秩序を守るには普段の状態では居られないという事でしょう。


 それに味方の兵士からボイコットなどされたら終わりですからね。自軍を支えてくれているのは、自軍の兵士であり敵軍の兵士ではない。博愛などを戦場に持ち出す者は、味方に撃ち殺されても文句は言えません。


 っと、随分と静かになったと思ったら、相当数の傭兵団の幹部を殺したようです。梯子の上から落とされていますし、登ってくる者は密かに落下死させてもいますので、随分と大人しくなったようですね。



 「このままいくなら、敵の傭兵は撤退だろうねえ。私もそうだけど、ミクとロフェルも随分と敵の指示役をブチ殺してやったから、前の下っ端は指示が来なくて困ってる。引き付けてから撃ったのが功を奏したよ」


 「敵に最大射程を誤認させるというものですね。普通は最大距離から撃ってくるものですから、最初に撃ってきた場所が最大射程だと思いますよ。そしてそこに居たのに次々と射殺されていくんですから……。向こうにすれば悪夢でしょう」


 「クロスボウで狙われても軽く超えていくから、悪夢っていうか地獄でしょ。真っ直ぐ狙ったら、あの距離なのに直撃したもの。毎回撃つ度に思うけど、威力が明らかにおかしいわよね? 素材が素材だからアレだけどさ」


 「素材が素材ですから、どうにもなりませんよ。そもそも私達しか使えませんし」


 「会話しながらでも良くなりましたね。流石にあそこまで殺されれば、傭兵も迂闊には近付いてこなくなりました。死屍累々ですから仕方ないとは思いますけども」


 「アレだけ死体塗れなら、一度引いたら早々近付いて来ないよ。自分もああなるって見て分かるからね。戦場では敢えて死体をバラ撒いたままにしたりするのさ。目で死を理解すると、及び腰になるヤツは多い。誰だって死にたくはないんだよ、当たり前だけどさ」


 「それを目で理解させるという事ですか……」



 流石は護国の英雄であり、歴代最高の将軍。死体すら利用して守る方法まであるんですね。かつてから【精神感知】や【精神看破】を持っていた筈ですし、心理戦は得意なんでしょう。


 戦場で1人だけ強くても戦争には勝てません。だからこそ敵軍の心を折りに行っていたのだと思います。今も楽しそうに敵の傭兵を見ていますし。


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