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0791・雑談と防衛線の開始




 Side:ミク



 本来の買い取り所で大量に獲物を売ったものの、ここに居る連中からは悪意を感じず、魂が悪に傾いている事も無かった。辺境伯と関わりがあるかはともかく、少なくともおかしな事をしてくる可能性は低いだろう。


 とはいえ連中が聞いた事を辺境伯家に報告すると、動き出しそうではある。とはいえ動いたところで私達の相手じゃないし、秘密裏に処理すれば済むんだよねえ。辺境伯が私達の排除に乗り出したら、戦争後に始末すればいい。


 私が暗殺者を仕向けられて、その元凶を放置するなんてあり得ないんだよ。確実に殺す。



 「何も言ってないけど、何となくの雰囲気と表情で何を考えてるか分かるわね。それはともかく、高値で売れたんだし気にする必要は無いわよ。動くにしても夜だし、動いてから考えれば良いじゃない。掃除は済んでるんだしさ」


 「まあ、それはそうなんだけどね。悪人も喰らってあるから、余ほどの事が無い限りはファーダを派遣しなくて済む。私とファーダで両方の部屋は守れるから、穴は無いと思うんだけど」


 「来たら来た時さ。そもそもだけど、あたし達だって察知して動かなきゃいけないんだし、ミクやファーダに頼りっぱなしってのもねえ……」


 「皆さん、酒場でその話題は止めましょうか。もっと普通の話題にして下さい。誰が聞いてるか分からないんですよ?」


 「他の話題っていっても、何かある? 魚族の話くらい?」


 「まだ引っ掛かってんのかい? 気持ちは分からなくもないけど、こっちの大陸に居るかどうかは分からないんだから、考えなくてもいいだろ。他のマンドレイクとかアルラウネだって居ないみたいだしさ」


 「ケンタウロスってヤツもオーガも居ないみたいだけど、単にこの辺じゃ見ないだけかもしれないしね。もしかしたら中央とかに居るのかな? もしくは草原?」


 「草原の可能性は高そうですね。馬の下半身って事は相当に大きいですし、草原のような場所なら強いのではありませんか?」


 「背中に誰かを乗せて、二重のランスで突撃。……って思ったけど、それって強い? 1人で突撃した方が強い気がする」


 「そりゃそうだろうけど、人間部分がポールアックスやハルバードを使った方が強そうだけどね。突進しながら振り回されると範囲的に厳しいだろうし、威力も相当に上がると思う。とにかく広い所なら強い種族だろうね」


 「その広い所なら強い種族が、狭い場所で暗殺しようとしたんですよね。何度考えてもバカバカし過ぎて、思い出す度に何とも言えなくなります」


 「そもそもケンタウロスがよく室内に入れたね? もしくはケンタウロスが居る国だと、大きめに作ってあるのかい?」


 「ファーダが言うにはギリギリの幅だったらしいから、一応そういう風に作ってあるんじゃない? そもそもケンタウロスが暗殺する用途で広めには作ってないだろうけど」


 「それはね。むしろケンタウロスにやらせる方がおかしいでしょ。だから警戒してないだろうって、命じたヤツが考えた可能性はあるけどさ」


 「でも防がれてるなら、結局バカじゃん。頭が悪い事をやらせて、頭が悪い事を証明しただけよね」


 「そうそう。だからオーレクトの次期皇帝は頭が悪いのよ。そう証明してしまったし、普通に考えて頭が悪いわ。暗殺ばっかりの皇帝なんて誰が望むのかしら」



 途中から話が飛んだから良かったけど、聞いていた奴が居たとしても悪意は飛んできていない。告げ口とかが後であるかもしれないけど、それで私達をどうにかするのは無理だ。無理矢理に難癖をつけない限りは。


 ま、そんな事をされたら、町攻めの際にコッソリ敵軍に味方してやればいい。私達にとってはどっちが勝とうが関係ないからね。どちらかを助けてやる義理は無いし、敵になった方を潰すだけだ。悪人は無関係に処分するけど。


 それはともかく食事が終わった私達は、宿に戻って部屋で休む。帰り道でも悪意が飛んでくる事は無かった。となると襲われる可能性は低そうだね。警戒は怠らないけどさ。


 私は狐の毛皮を敷き、その上に2匹を寝かせていく。ロフェルとマハルはエアーマットを敷いている。今さら木のベッドは嫌らしい。気持ちは分かるけど、狐の毛皮も十分優秀だけどね?。



 「外で色々な人に見られてるならそっちなんだけど、宿の部屋は見られたりしないからね。それならエアーマットで寝るわよ。それにしてもガイアって恐ろしい程に発展してたわねえ」


 「はい、お酒。そこで良いお酒を大量に買ってきたからか、最近は酒場で飲む事が減ったね?」


 「せっかく飲むなら、美味しい方を飲むに決まってるじゃない。今さら美味しくないお酒を飲んでもって思うし、ガイアはお酒のレベルも高いのよねえ。何なのって思うわ、あの15年物とか20年物って」


 「あれは驚きましたね。お酒を長く寝かせておく事で美味しくなるなんて知りませんでした。その年数分、値段がビックリな事になってますけど」



 そんな話をしつつ寝転がったマハルはすぐに寝てしまった。ロフェルも飲んで少し経つと駄目で、フラフラしながらエアーマットに倒れる。酒を回収した私はベッドに寝転がり、目を瞑ると周囲を警戒しつつ休む。


 おそらくは来ないと思うが、どうだろう?。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ロフェル



 結局ボンクル軍が攻め込んでくるまで、暗殺者などが私達の部屋に来る事は無かったらしい。ミクは可能性的にあるのではないかと言っていたが、辺境伯は何も命じなかったようね。もしくは下っ端が傭兵に対して色々としていたのかしら?。


 王都でも私達に対する褒賞を懐に入れていたのは下っ端みたいだし、だから口では色々と言えても行動は出来なかった。そう考えると一応の納得は出来るのよねえ。単に偉そうにしたかっただけっていう、無様さも浮き彫りになるけど。


 それはともかくとして、既に領都近くに陣取っているボンクル軍は、今日から攻撃してくるでしょう。ミクが潰した呼応する連中が居なくても、ここまで来て何もしない何て事はあり得ない。


 私達も準備を終えて宿を出る。既に朝日が出てきているから時間は余りないわね。守備位置に着いたらすぐに戦闘開始でも不思議じゃないし。


 門の近くに行き、壁の上へと続く梯子を登ると、壁の外には敵軍が遠くに見えた。



 「傭兵どもはすぐに守備に着け! 敵を1人たりとも領都に入れるな!!」



 偉そうに中身の無い事を喚く阿呆は無視し、私達は配置を担当している文官っぽいヤツから話を聞く。すると、弓持ちの私達は門から離れた所に配置された。どうやら門付近は取り付く為の梯子を外す連中で固めているみたい。


 まあ、遠距離武器を持っているなら遠目に配置して撃ってもらう方が都合が良いものねえ。私達は気にせずに離れた位置に行って弓と矢筒を取り出す。ミクがおかわりの矢とボルトを持っているから、それを貰う形で撃っていく事になるでしょうね。


 敵が近付いてくるまでには時間があるようなので、とりあえず落ち着きましょう。前回は遠くから撃ってるだけで良かったけど、今回は敵が危険な距離まで近付いてくる。下から矢を撃ってくるだろうし、前回の門攻めより危険なのは間違いない。


 マハルもクロスボウを持って、ちょっと緊張した顔をしてるわね。流石に冷静なままじゃ居られないか。まだ始まってもいないんだしね。



 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」」」」



 遂に敵が突っ込んで来た。とは言っても、装備を見るにアレは傭兵ね。やはり危険なところは傭兵に任せて高みの見物か。


 何処どこ彼処かしこも変わらないわねえ。


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