0787・傭兵と騎士
Side:ロフェル
騎士服を着た連中がこちらに来るのが見えるけど、集まった傭兵はそこまで多くない。結構な数の傭兵が裏切りの為に潜伏していたけど、そいつらはミクとファーダが食い荒らしたので問題無し。とはいえ結果として相当の傭兵が減った。
仕方がないとはいえ、傭兵の少なさに眉を顰めるような表情をしている。それが納得いかないなら自分達の力だけで防衛すればいいのよ。傭兵に募集を掛けている時点で自力での防衛は断念してるじゃない。理解していないのかしら。
「貴様等が集まった傭兵か。思っていた以上に少ないが、この前まで大量に集まっていた連中は臆病風に吹かれて逃げたのか?」
「んなこたぁ、知らねえよ。それよりさっさとオレ達に何を求めてるのか言え。下らない事をウダウダ喋ってる暇があんのかよ」
「チッ! まあいい。貴様らは敵軍が来るギリギリまで外に居て、石を集めたりモンスターを狩ってこい。そいつらの肉は篭城する為の食料になる。お前らの食う分にもなるんだから、しっかり獲ってこいよ」
「獲ってくるのは良いが、ちゃんと金は払うんだろうな? 普通に売っ払った方がいいなら肉屋に売るぜ? こちとら傭兵なんでな」
「ふんっ! 臨時の解体所に売却所が併設される、そこで売れば儲かるようになっている。だから率先して狩ってこい」
「おいおい。相場をちゃんと払うとは言わねえんだな? こちとらそっちに売ってやる義理は無いんだぜ。なんか勘違いしてねえか?」
「そうそう。オレ達ゃお前さんらみたいな騎士じゃねえんだ。ここに愛着も無けりゃ、守ってやる義理もねえ。オレ達とお前さんらの繋がりは金だ。金で繋がってる以上、ちゃんと払わねえ所からはオサラバするだけだぞ?」
「私はお前達に通達するべき事を伝えられているだけだ! 幾らで買い上げるかなど知るか!!」
「そんな事すら知らされてねえ下っ端が偉そうにすんじゃねえよ。勢いあまって敵が来たら門が開いちまうかもなぁ。そんときゃテメェの顔が見物だぜ!」
「「「「「「「「「「ガハハハハハハハ……!!」」」」」」」」」」
あーあー、バカねえ。そもそも傭兵なんて金が稼げるから集ってる部分はあるのに、初手から喧嘩を売ったらこうなるに決まってるじゃないの。そもそも何がなんでも助けてやる義理は無いのよ、傭兵側には。そこを理解してないのねえ。
「貴様ら……! 敵を招き入れるような者は敵だ。今すぐ切り捨ててくれるぞ!!」
「ほう。ならやってみせろや。オレ達がお前らにへーこら従うとでも思ってんなら、やってみせろ!!!」
「うっ……」
「こちらが傭兵だからって、無条件で見下せると思うなよ、この青びょうたんが!! 鍛えてから出直せ、クソガキ!!!」
「………」
最初から傭兵を見下すような態度をとらなきゃ良かったっていうのにねえ。そもそも騎士だからといって、辺境伯家の権力が使える訳でもないわ。それは辺境伯家の次男や三男でも同じ。何故なら騎士は騎士でしかない。
たとえこの若者が辺境伯家の者だとしても、傭兵を無条件で見下していい訳じゃない。というより、こんな者をメッセンンジャーにしている時点で程度が知れるというべきかしら。
そもそも戦いの前から傭兵が裏切る可能性を増やしてどうするというのか。頭が悪すぎて愚かとしか言い様がない。別に傭兵側は持ち上げて煽てろなんて言ってないわ。無条件で見下される理由など無いと言っているだけ。
当たり前の事でしょうに、こいつらは頭がおかしいのかしら。結局、言い返せなくてスゴスゴと去っていったわね。
「えーっと、帰っていってしまいましたけど、この後どうします?」
「さあ? 私達は宿に帰るけどね。あんな奴が言い出した事だし、本当に適正価格で買い取るか信用できないしさ。……いや、一度は狩って売りに行った方がいいか。それで適正価格じゃなかったら、本当に町の肉屋に売ってやろう」
「ああ、それが一番いいね。食える肉は増えてるんだから文句を言われる筋合いも無い。それに買い叩くような所に売る阿呆は居ないさ。久しぶりに狩りに出て遊ぶかねえ。ついでに戦争が始まった時に投げる石でも探してこよう」
「近くに森がありましたし、あの中に行きましょうか。普通なら厄介かもしれませんが、私達にとっては大した障害にもなりませんし。鹿系か猪系、もしくは熊系のモンスターが居てくれると助かりますね」
「確かに肉としては多いでしょうけど、気をつけて下さい。まあ、ボクが心配する必要は無いと思いますけど」
皆で話しつつ私達は移動する事にしたけど、他の傭兵達は悩んでるみたいね。さっきミクが言ったみたいに、わざわざあんな奴等に従う必要は無いっていう感じのも居るし、私達みたいに言い訳程度の狩りはしてやるかって者も居る。
どっちにしたって、あの騎士のやり方が悪すぎたという他ないのよ。本当に何であんなのを使ったのか理解できないわね。傭兵の手も借りたい癖に上から目線とか、頭がおかしいとしか思えない。
そんな納得できない事を感じつつも、私達は領都を出て近くの森へと歩いていく。ミクは弓矢を出しているけど、あれは鳥系の魔物を獲る言い訳用の武器ね。魔法で獲ってもいいんだし、ミクなら好きに出来る。
わざわざ弓矢を使って獲る必要が無い以上は、完全に言い訳の為でしかない。っと、狙いを定めて……当たった! けど、矢が貫通していったわね? まあ、獲物は落ちてきたけど、あれ地面に激突したらグチャグチャにならない?。
「羽が欲しいだけだからね。最悪は森の中に羽以外は捨てるかも」
「それでも肥料になって還元されるから悪い事じゃないね。たとえ動物やモンスターが食べても、そこは変わらないし」
「そりゃ糞をするから変わらないだろうね。それはともかくとして、あの鳥の羽は使えるのかい?」
「さあ? でも使えそうなんじゃない? そもそも私達の使う弓に矢羽が必要なのかは疑問があるけどね。クロスボウと同じく矢本体だけでも十分な気もしないでもない。回転だったりとかの為だしね」
「そういえばガイアの矢って羽が使われていない物もありましたよね。でしたら必ずしも羽でなくても良いのでは?」
「それはそうなんだけど、どういう風な材質で、どう取り付ければ良いかは知らないんだよ。だから矢羽そのものを無くそうかと思った訳だしさ」
「もうクロスボウを作った方が早いと思うけど? ドラゴン素材なら十分な物が作れるだろうし、それなら鉄のボルトでOKでしょ」
「そりゃ大丈夫だろうけど、パワーがとんでもない事になると思うけどね? それと下に撃てないっていう欠点は解決出来ないから、使う場所が多少限定されるかな」
「とりあえず本体が作ってみるってさ。クロスボウの構造自体は知ってるし難しいものでもないからね。問題は素材と引けるかどうかぐらいで」
「それも【身体強化】をすれば引けるでしょ。弓が使えるなら弓で、駄目ならクロスボウで良いんじゃない? わたしは使えないからクロスボウね」
「私も弓など持った事もありません」
「あたしは弓も使えるよ」
「となると私とロフェルとシャルは弓。アレッサとティアとマハルがクロスボウね。ただ、今は鉄が無いしどうするかな? せっかくだから、ファーダを何処かの町に行かせて買い出しをしてもらうか。手が空いてるのはファーダだけだし」
「敵軍が来たら忙しくなるけどね」
それはいつもの事なのよねえ。今度からは鉄は売らなくてよくなりそうだから、楽にはなるだろうけど。




