0783・情報収集と話し合い
Side:テイメリア・フェルス・ゴールダーム
私はロフェルと一緒に町中で聞き込みをしています。当初ロフェル殿と呼んでいたのですが、その呼ばれ方は他人行儀だと言われて変える事となったのです。結果、全員の事を名前だけで呼ぶ事になりました。
礼儀的にどうかと思うのですが、私達は傭兵だと言われると返す言葉がありません。確かに傭兵が上品な言葉使いをしていれば怪しまれるでしょう。という事で、現在はロフェルと一緒に町中でお金を使っての聞き込み中です。
「そうだよ。前に攻めて来たナロンダに大きな被害を受けた所為で、北のボンクルに対して強い反撃が出来ねえんだとさ。その所為で北の辺境伯様が必死に追い返しているそうだが、それが何時まで保つのか……」
「成る程……ナロンダには背後から奇襲されたし、その所為で一気に大混乱したから仕方ないんだけど、総指揮官の怠慢と言えばそれまでだもんね。おまけに半数も騎士や兵士がやられたし、結果としたら大損害か」
「そんなに倒されたのですか? 普通、3割が倒された時点で負けなんですが……何故そんな被害になるまで戦ったのでしょう」
「多分だけど私達が戦ってたからじゃない? 傭兵である私達が前で戦い続けてるんだもの、下手に逃げれば逃亡兵扱いになるわ。むしろ上の者はそうするでしょ? 負けた責任を明確にしなきゃいけないし」
「つまり前線で戦い続けている者が居るので逃げられなかったと……。それはそれで、どうなのかと思いますね」
「でも結果として、ナロンダ軍の6割以上を倒したわよ? こちらは5割の損害だけど、ナロンダは6割以上の損害で撤退していったわ。奇襲が上手くいったにも関わらず、相当の損害を受ける羽目になってる。これって実質敗北よね?」
「6割を超える損害も、5割を超える損害も負けですよ。敵を追い返したというのは勝利と言っても良いですが、王都の軍の5割が失われたとなると大損害です。その状態で別の国に攻められるというのは厳しいですね」
「そういう情報が飛び込んできたから、王都の雰囲気がこんなに悪いの? それとも別の理由?」
「皆、同じさ。いつ北から敵国が攻めてくるか分からねえんだ。怖くて仕方がねえんだよ。ナロンダ相手に大損害っていうんじゃ、ボンクル相手には負けそうだろ? 既に大分やられてんだからさ」
それだけを言って男性は去っていきました。多少の情報は得られましたが、決して良い情報が得られた訳ではありません。単に王都民の不安の理由が分かっただけですからね。他にも情報を得なければいけませんが……。
「それにしても、さっきの男も変わらなかったわね。チラチラとティアの事を見てるのは丸分かりなんだけど、自覚はしていないみたいよ? あれ程あからさまならバレてて当たり前なのにさ」
「私もこうなりたくてなった訳ではありませんが、あそこまで見られると面倒です。しかも何やら体に入れられて得たものであって、自分の努力で得たものじゃありませんし……」
「まあ、そうだけどね。ミクは私達なら女でもあるから大丈夫だけど、力の無い男は間違いなく引っ掛かるって言ってた。それが正に証明された証よね。ついでに【夢幻搾精】で精を吐き出させて、その気である精気を吸収するんでしょ?」
「そうらしいですね。そして精気を吸収すれば強くなれるそうです。意味が分かりませんけど、ある程度は使って慣れるしかないんでしょう。私、元は唯の人間だったんですけどね……」
「それは諦めるしかないでしょ。私なんて元は唯のゴブリン族よ? 気付いたら鬼神族なんていう種族になってるし、種族名に神っていう字が付いてるんだけどね」
「それも恐ろしい事ですよね。……とりあえず下らない事を話していないで、情報収集を続けましょうか」
「そうね、そうしましょう。考えてても疲れるだけだし」
もう仕方がないと諦めるしかないのですが、ミクと神様は私達をいったいどうしたいのでしょうか?。
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Side:アレッサ
様々な場所で聞き込みをし、宿へと戻ってきた。これからどういう風に動くかの話し合いを始めるんだけど、シャルが何杯か飲んできたらしい。それに大してロフェルってのが微妙に怒ってる。どうも酒好きみたいね。
「放っておけばいいよ。ロフェルには昼間から飲ませる訳にはいかないしね。鬼なのに酒に弱いのがロフェルでね、簡単に泥酔するんだよ。シャルは強いから問題ないんだけどさ」
「ああ、そりゃ駄目だね。酒に呑まれるヤツは大人しく寝る前に飲みな。流石にそれじゃあ、昼間から飲むのは駄目さ。それはともかく、ボンクルとかいう北の国が攻めて来るからっていうのが理由で間違い無いようだね」
「まだ攻めてきてるかどうかは分からないけど、単に情報がこっちまで来ていないだけの可能性もあるしね。場合によっては既に攻められて陥落してる可能性もあって、何とも言えないんだと思う」
「かつては国の軍事力に自信があったのでしょうが、今は完全に落胆している感じでしたね。とはいえ後ろから奇襲を受けたうえでの乱戦ですから、被害が大きくなるのは仕方がないと思いますが……」
「大局的に見たら話しにならないお粗末さだよ。5割を超える損害を出した所為で、北からの侵略を防げなくなってる。これで全軍を北に出したら、少ない兵力でも東は出してくるだろう。そうしたら、それを防ぐ戦力が無い」
「東からは多分ですけど攻めてきませんよ? ファーダさんが皆殺しにした筈ですから。ですよね?」
「そう。撤退中のナロンダ軍を強襲して皆殺しにした。だからナロンダ軍は国まで戻れてない。装備品のうち鉄はインゴットにして売って、残りは燃やして捨てた。食料は確保したし、膀胱と腸は肥料かモンスターの餌だね」
「「「「「………」」」」」
「いつものミクって言ったらそれまでだけど、相変わらず全く容赦が無いねえ。東の敵軍は全滅かい。そりゃ攻めてこないだろうさ。こっちは被害が5割で、向こうは全滅なんだからね。大損害どころじゃないよ」
「それが分かれば全軍を北に向かわせても良いのでしょうが、説明する訳にもいきません。どうやったのかの部分でミクの事がバレてしまいます。面倒な関わり方をしてくる可能性があるでしょうね」
「なら、どうするべきなんでしょう? ボク達はこのまま動かない方が良いのか、それとも敢えて北に行きますか? 王城が動かないのであれば、ボク達で動くしかないと思います」
「そうだね。わたし達だけで動くのが一番良いと思うけど、既に攻められてる場合はどうする? 敵軍と戦う事自体は構わないけど、タダ働きはゴメンよ?」
「とりあえず北に行くしかないかな? 王都だと北がどうなってるかの情報が無いからね。まだ敵軍が来てないなら色々と考えられるけど、来てたらどうするかな? 私達が情報を持ち帰る形が良いのかも」
「流石に敵国に攻められてるとなれば動くしかないだろうからね。それでも情報を信じない可能性はあるけど、そこで無能かどうかが分かるよ。無能なら滅んでも仕方ないねえ」
「という事で、明日からは北に行くって事で良い? 東が攻めて来る可能性は低いから、そっちは無視して問題ない。3000以上の兵と傭兵を送って全滅したんだから、簡単には次を送れないでしょ。少なくとも回復に年単位が必要だ」
「そりゃね。3000以上も一気に失われたら、軍はガタガタだろうさ。それでも送ってくるとしたら農民兵かい? それじゃ恐怖に駆られたら一気に逃げ出すねえ」
「なら問題なし。明日からは北に行くんだし、今日はもう酒場にでも行きましょうよ」
「賛成、賛成。早速行きましょうか!」
酒好きらしいから分かるけど、早々に撃沈するんじゃないの、コイツ。




