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0780・遥への説明




 Side:葉月遥



 「それでそっちは今どうなんだい? まだ八重と桜の出産までは一月ほどある。でも翠の出産はもうそろそろだろう。まだこっちに来ていないようだけど、間に合わないなんてマヌケな事をするんじゃないよ?」


 「流石にそないな事せんわ。せやけどあのアホどもが邪魔しくさっとる所為で、もう2~3日掛かりそうなんや。それで終わるから、そしたらすぐにそっち飛んでいくわい。本気で邪魔したら問答無用で潰すからなー言うてあるし、流石にあいつらもそこは本気やと分かっとるようや」


 「まあ、それなら良いんだけど……?」


 「なんや? 何ぞあったんか?」



 急にノックの音がしたので許可を出すと、いつもの秘書が困惑した顔で入ってきた。こいつがこの顔をするのを見るのは何十年ぶりかねぇ……。もう70近いっていうのに、こんな顔をするとは珍しい。いったい何があったのやら。



 「どうした? あんたがそんな顔をするなんて随分と珍しいねえ」


 「はい。実はいきなり邸の玄関前にミク様がやって来られました。それも大勢を連れて来られています」


 「なんや、またあの怪物が来たんかいな? この6~7ヶ月は平和やったのに、また何ぞやらかす気か?」


 「それで、ミクが来たという程度で困惑するようなお前じゃないだろう? 大勢連れて来たっていう奴等に問題があるのかい?」


 「それが……連れて来られたのは、いわゆる獣人のようなのです。その獣人の親子や子供達だそうで……」


 「それなら適当に大広間にでも入れておけば良いだろう。あそこは威圧も兼ねて人を入れる部屋だから広いし」


 「あの、異なる星である<アルデム>の獣人ではなく、毛むくじゃらの動物に近い姿の獣人なのです。顔も兎や狐、猫や犬に虎などとりまして……」


 「なんやて!? 獣に似た獣人!? ……つまりアレか? またぞろ別の惑星っちゅう所に行っとったんか!」


 「すまないが通信を切るよ。どうやらミクはまた何か私にさせたいようだ。お前はさっさと仕事を終えて、こっちに来な。じゃないと娘の出産に間に合わないよ」


 「せやな。出来得る限り早よ終わらせて、すぐに東京行くわ。それと、あの怪物の話は聞きとうないから、言わんでええで。ほな!」



 チッ! 一方的に切りやがったか。ま、仕方ない。動物に似た獣人ってのがよく分からないけど、さっさと行くかね。待たせる意味も無いし、そんなのは時間の無駄でしかない。


 ……で、来たのは良いんだけど、こりゃまた驚いた。本当に動物の姿をした獣人じゃないか。<アルデム>の耳や尻尾だけが獣っぽい人間じゃなくて、正真正銘の獣人だろうね、こりゃ。



 「久しぶりだねえ、ミク。急に来たと思ったら随分な大所帯で現れたらしいじゃないか、いったいどういう事だい?」


 「久しぶり、ハルカ。実は新しい星に飛ばされたというか、ここガイアと第一の星には関わるなと神どもから言われたんだよ。だから私は新しい星に飛ばされてね。そこで色々としていた訳だ」


 「ガイアとアルデムに関わるな、ねえ……。あっ、ミクが言う第一の星はアルデムという名前に決まったよ。一応は向こうと話したんだけどね、イマイチ向こうは惑星という概念が理解できていなくて困ったけど」


 「このガイアだって古い時代では信じてなかったんだから仕方なくない? 夜空に浮かんでいる星を見てる癖に、大地は平面だとか意味が分からない絵が残ってるじゃん」


 「まあ、そうなんだけどね。で、この獣人達は?」


 「この子供と女性達は別の惑星のデジム王国って所で、居場所が無くなった女性と子供達だよ。戦争があって戦ったんだけどね、その戦争で亡くなった傭兵達の奥さんと子供」


 「成る程。戦争で旦那を亡くした未亡人や子供達か……。それにしても戦争に参加してたなんてね。それと、ミクの左右に居るのはなんだい? 1人は角っぽいのが見えるに鬼か何かで、もう1人は物凄い美人だけど……」


 「言葉が通じないだろうけど、右に居るのがロフェルで左に居るのがマハルね。ロフェルは鬼神族で、マハルが天樹族だよ。元はゴブリン族とマンドレイク族だったんだけどね、何故かこうなった」


 「何故かってトコは深堀しないでおくよ。聞いても碌でもない事になるくらいだろうしさ。つまり私はこの子供達と奥さん連中を食わせてやればいいのかい?」


 「そう。私がこの37人の話を聞いた後、何故かこの邸の玄関前の空間座標が口から出たんだよ。ガイアの事を強制的に終わらせられた私は、神どもから【空間魔法】を教えられてる。その【空間魔法】で転移するのに必要な空間座標がね、口から勝手に出たんだよ」


 「つまり……?」


 「ここに連れて来いと【世界】が言っている。私はそう認識した。何故なら私の分体の口だけを操って空間座標を言わせるなんて、神どもか【世界】にしか出来ない事だからさ。そして神どもには、そんな事をいちいちする理由が無い」


 「だから【世界】がやったと。いったい何の為にだろうねえ」


 「さあ? 【世界】のやりたい事なんて分からないし、分かる気もしないね。アルデムやガイアの事は【世界】がやるから、これ以上お前は手を出すなと言われたのにさ。【世界】が私に空間座標を教えるんだから笑うよ」


 「まあ、それは確かにそうだね。それよりこの子供や未亡人達とのコミュニケーションはどうしようか? 言葉が分からないんだけど……」


 「またAIに学習させて翻訳アプリに追加したら? それならそこまで苦労しないと思うけどね。それに向こうの星の言葉も分かるしさ」


 「それしかないか……。それにしても大人しい子供達だね、普通はもっと騒ぐもんだけど随分静かなもんだ。ま、見慣れない場所で戸惑ってるんだろうけど」


 「戦争があって旦那が亡くなったばかりだからね。どうしていいか分からないし、連れて行かれた場所なら飢えなくて済むってだけで移住を決めたから」


 「そういうレベルの星なのかい。参ったねそれは……。っていうか戦争ってどのレベルの戦争なんだい? 第一次? それとも昔の合戦?」


 「昔の合戦レベルだね。辺境伯の治める町が既にやられてて、鉄の格子の門の巻き上げ機が壊されてたよ。ついでにその町の門の攻略中に、後ろから奇襲を受けた形で隊列も整えられなくなった。それが私達が参加した戦いだよ」


 「完全に中世から産業革命前までの戦争だね。あの時代だと大砲を使ってたから、ちょっと違うかもしれないけど、魔法があるから似たようなものか。そんな戦争で町攻めの先鋒である、門を攻めさせられたと」


 「まあね。傭兵は傭兵であって、正規の軍じゃない。当然のように捨て駒として使われるさ。それでも成り上がるヤツが出るくらいに戦国乱世の大陸なんだよ。こっちで言うと、乱世過ぎてノブナガとかヒデヨシが出てきそうな感じ」


 「それはまた……。確かに戦国乱世なら英傑が出てきても不思議じゃないけどね。何でイエヤスの名前は出さなかったんだい?」


 「イエヤスって最後に横から掻っ攫っていったヤツであって、戦国の世で勝ち上がった訳じゃないじゃん。勝ち上がる力があったのはノブナガ、次いでヒデヨシでしょ?」


 「まあ、そう言われたらそうか。乱世で勝ち上がるって、そう簡単な事じゃないからねえ。現状維持で精一杯なヤツとか負けるヤツが多いなか、あそこまで勝ち上がれるのはノブナガだけか」


 「だろうね、私はそう思うよ。それは横に置いといて、まずは食事を頼める? 食べれば緊張も減ると思うんだ」


 「分かった。すまないけど、合わせて40人の食事を頼むよ」


 「「「「「かしこまりました」」」」」



 しっかし人間と同じじゃないし、この子供達はどうしたもんかねぇ……。


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