0777・領都へと戻りながら雑談
Side:ロフェル
騎士や兵士に迎えられて、私達は辺境伯領の領都へと戻っていく。やるべき事はどうやら復旧と確認らしい。少なくとも巻き上げ機を直して食料の融通を多少受けたいみたいね。
それをしなきゃ足りないという訳じゃないんだろうけど、それでも不安がある分しか残っていないのかしら? そう思って聞いたところ、そうではなく持って来た食料が傷んでいた場合だそうだ。
敵軍の装備なども戦場には散らばってるし、それらを含めれば交渉の余地はあるとの事。デジム王国の兵士の装備品はアレだが、ナロンダ国の騎士や兵士の装備は売っ払っても良心が痛みはしない。
どうやらそういう理由らしいけれど、気持ちはよく分かる。言葉は悪いけれど敵ってそんなものだし、私達だって同じような扱いにしかしない。私達がデジム王国の者ではなくても、味方した以上はそんな心境ね。
それはともかくとして、今は辺境伯家が残っているかも含めて調べているらしいわ。巻き上げ機が壊されているから門は開かないし、まずはそこを復旧しないとどうにもならない。
今は領都としての機能も麻痺してしまっているし、これでは新しく物を運び込む事も出来ない。そうなってくると食料の問題も出てくるうえ、商人が来ても運び入れる事が出来なくなってしまう。
つまり現在は致命的な状況だという事のようで、早急に何とかしなきゃいけないみたいなのよ。特に門の方をどうにかしなきゃいけ……? そういえば爆発が2度起きたけど、アレでもっと壊れたんじゃ……。
「確かに大きな爆発音は2回していましたね。あれで巻き上げ機も完全に壊れたのだとしたら、1から作り直す必要があるのでは? だとしたら1日や2日で出来る事ではありませんよ?」
「……確かに大きな音がしていたが、アレで巻き上げ機が壊れたのか? すまないが私にはよく分からん。もしかしたらナロンダの新しい武器なのだろうか?」
あれ? こっちの大陸では不死玉が使われていると思ってたけど、そうじゃない? ……だとしたら幾つか考えられるわね。
1つ目はナロンダ国の秘密兵器だった。2つ目は帝国の秘匿技術であり、それが流出した。3つ目は傭兵達の秘密技術だった。実際に3つ目の可能性は否定出来ないのよね、この大陸では成り上がりが可能だから。
とはいえ考えの本命は2番。つまり帝国の技術が何処かから流出した。デジム王国は西の端だから、そもそも帝国とは縁遠かったと考えられる。だって帝国は大陸の中央部を支配していたんだもの、距離的にも遠い。
だからこそ、仮に不死玉の技術が入ってくるとしても、大陸の中では最後の方になってしまう。普通なら伝播するように拡がるんだから当たり前だけど、今回の戦争はその時間差を利用したのかしら?。
不死玉の技術がナロンダにしか無い期間を狙っての侵略。可能性として考えたら有りだと思うのよね。ま、後でミクとマハルに伝えて様子見ってところかな? 突飛な発想かもしれないし。
そんな事を考えていたら戻ってきたけど、どうやら門は半壊しているようね。正しくは門の右側の壁が壊れていて、左の壁で支えてる感じ。これって左の壁も壊して鉄の格子の門を撤去した方が早くない?。
「確かにそうかもしれんが、門が無いというのも大きな問題がある」
「言いたい事は分かるんだけど、門が邪魔で商人が入って来れないのも大きな問題でしょ。そもそも辺境伯領って食料の生産をほぼやってないんだし、食料が尽きたら飢え死にしかないわ」
「辺境は地形も合わせて国境を守る防衛の要ですからね。食料を生産する余裕はありません。確かに食料が入ってこなくなったら終わりですね。もちろん備蓄はあるでしょうけど、それもいつまで保つのか……」
「確かにそれを言われると厳しいものがあるな。しかし仮に門を一時的に撤去するにしてもだ、辺境伯家の許可がなければ出来ん。我らでは勝手な事は出来ぬし、それは越権行為でしかない」
「仮に辺境伯家が敵によって族滅させられてたらどうするの? もしそうであれば命令を出せる人が誰も居ないという事になるけど、放ったらかし?」
「……流石に想定されていない事を言われても困る。私はどこまでいっても騎士なのでな。貴族のように領地に関しての知識はあまりないのだ」
「まあ、確かにそうですよね。騎士の方々が統治できるなら、それはもう貴族と変わらないって事になります。それが出来るというだけで、今度は貴族の方々が五月蝿いですよ」
「貴族しか知らない事を知っているとはけしからんって感じ? 相変わらずだけど、貴族って面倒臭いわねえ。別に知っていようが知っていまいが、貴族と言う地位は変わらない癖にさ。いったい何に怯えているのかしら」
「地位や立場があるほど誰かに奪われると思い込むそうですよ。それを持っている方にとっては大事なんでしょうね。ボクからしたら、自由が無くなって大変な地位だとしか思いませんけども」
話の最中に門まで来たけど、やっぱり辛うじて門がくっ付いてるだけって感じね。明らかに門の役割は果たせそうに無いわ。これでは門があっても邪魔なだけだし、これを修理するにしたって10日やそこらでは無理でしょ。
「そうだな。壁から直さねばならんとすれば、それだけで一ヶ月以上掛かる大仕事だ。とてもではないが門が邪魔にしかならん。無理矢理に通れる場所を作るしかないであろうな。それにしてもナロンダめ……」
「それより中に行かなくても良いの? 今や総指揮官みたいに思われてるんじゃなかった?」
「……私は上級騎士ではなく中級騎士なのだが、仕方ないか。君達は他の傭兵団と同じ所に居てくれ。我々は辺境伯家に行って話さねばならん」
「了解、了解」
ミクがそう言うと騎士は崩れた壁の部分から町中へと入っていった。私達は町から離れ、傭兵達が固まっている場所に行く。何やら傭兵達が自分達の馬車に敵兵の装備を剥いで詰め込んでるわね?。
そんな光景を見ながら戻ると、私達の前に居た傭兵団の団長と副団長が居たわ。残りの人数が……。
「ははははは……。キミ達は3人とも生き残れたようで何よりだよ。こちらは駄目でね、相当に亡くなってしまった。全部で6人だけさ」
「19人も亡くなってしまった以上、傭兵団とは言えない程に規模が縮小してしまったわ。当分は村の専属傭兵になったりして、お金を稼ぐしかないわね。仕事の選り好みはしていられないし」
「村にはそもそも専属傭兵が居るのでは? そこに割り込むとなると揉め事になりそうな気もしますが……」
「確かにその部分は無い訳じゃないけど、ほぼ問題無いさ。村で傭兵をしているのは、基本的に一線を退いた傭兵か、それとも若い傭兵ぐらいだよ。ちょうど良い年齢の傭兵は殆ど町に居るんだ」
「活躍出来る、名を上げる。そういうチャンスを掴むには町に居るしかないのよね。どれだけ名を上げても村じゃ誰も評価してくれないの。やってる事はモンスター狩りだからね。たまに盗賊退治があるけど」
「それも滅多にないけどね。盗賊も村の近くでは静かなものさ、彼らも補給は絶対に必要だ。だから村を襲ったりはしないし、その村でモンスター退治をしている傭兵も襲わない。ただし手を出されなければね」
「毎年、どこかの若手が盗賊に手を出して殺されたという話を聞くわ。よくある事だけど、正義感だけで動くからそうなるのよ。勝てるかどうかぐらい考えろと思うわ」
確かにそうね。盗賊団なんて許せないと言っても、勝てない相手に喧嘩を売るってバカのやる事じゃない。




