0775・スキル持ちの騎士 その2
Side:ロフェル
適当に金棒をブンブン振り回しているだけで勝てる。そういう戦いになってしまっているんだけど、チラリと私の視界にプレートアーマーが映る。どうやらスキル持ちの騎士が来たみたいね。
そいつらはマハルの方に3人行き、私とミクの所に1人ずつ来た。どうやら男だからマハルの方に3人も行ったみたいね。女2人は1人ずつでいいって? 随分と舐めてくれるじゃないの。狩人は舐められたら負けなのよ。
こいつらが理解してるかは知らないけど、狩人を舐めてくれたんだから覚悟は出来てるわよねえ? 派手に叩き潰してあげようかしら、それとも四肢を潰して放置してあげようか。
「貴様が昨日から暴れている3人組の1人か。女と戦わねばならんのが腹立たしいが、さっさと殺して敵の士気を挫かねばな」
「その女にあっさり殺される程度のゴミが何様のつもりなんだか。そもそも昨日から手も足も出てないのはそっちでしょうに、現実も認識出来ないほど頭が悪かったのね。それは負けるでしょうよ」
「……今すぐ死ね」
こっちを挑発してきた割には沸点の低い奴ねえ。何というか怒る気も失せるわ。それより切り込んできたから対処しましょうか。
通常の剣に比べて随分と分厚い剣ね? 普通は重量を軽くする為になるべく薄くするものなんだけど、こいつの剣はかなりの重量をしている筈。その割には軽々と振り回している。もしかして筋力強化スキルの持ち主?。
【豪腕】も重い武器を軽々と振り回していたし、それを考えると可能性は高そうね。振り回せるだけの力があれば、分厚い剣身は耐久力の高さと重さで使い勝手は良いでしょう。それが当たればもっと良いんでしょうけどねえ。
「チッ! ちょこまかと鬱陶しい! さっさと喰らって死ね!!」
「そんな事を言われてもねえ、その程度の攻撃に当たるとかバカじゃない? 流石に私はバカじゃないから当たらないのよ」
「ぬんっ!!」
両手で持って振り回してるけど全く当たらない。そもそも力が強くなるスキルじゃそれだけだし、基本も然して出来てないのよコイツ。今まで力で勝ててきたからか、まるで基本がなってない。
正直に言って避けるだけなら大して難しくもないし、このまま避けていれば体力が無くなって勝ててしまう。それでも良いんだけど、つまらないからねえ。どうしようかしら? 体力削って放置でもいいかな? そっちの方が屈辱でしょ。
「ふんっ! ぬんっ! はぁ!! せいっ!! ……ちょこまかするな!!」
「なに言ってんの? 敵が避けるのは当たり前でしょうが。当てられないような下手くそが戦場に出てくるな。【剛力】とか【怪力】とかの筋力強化系スキルなんでしょうけど、当たらなきゃ何の意味も無いのよ」
「チッ! 気付いてやがったか! だがいつかは当たるぞ? 完璧に避けられ続けるヤツなぞ、居やしねえんだからな!!」
再び騎士が振りかぶって突撃してきたけど私には当たらない。こいつの敗因はプレートアーマーを着ている事ね。強い力も重い鎧で遅くしていたら当たらないし、ガチャガチャ五月蝿い奴からは離れれば済むだけよ。
ん? 敵兵が私の後ろに回りこもうとしてる? ……ふーん、そういう事ね。相手に気付かれなければ策として良かったのかもしれないけど、気付かれてるとマヌケでしかないわね。気配でバレバレなんだけど、どうしようかしら?。
後ろに回った兵士は槍持ちだったわね。となるとコイツが前で目立つ行動をし、後ろに兵士を回らせて攻撃させる。そんな下らない策で勝てると思ってるんでしょうね。ま、だったらまずは兵士を捕まえましょうか。
「ぬんっ!!!」
大きな体を振り回すように目立たせてるけど、私は大きく右に避けた後、後ろを向いて槍持ちの兵士に向かう。慌てた兵士は私に槍を突きこんできたけど、そんなへっぴり腰の攻撃に当たる私じゃない。
避けて更に前に出た私は兵士の首を左手で掴んで圧し折ると、掴んだまま振り向き騎士に対して近付くと放り投げた。慌てた騎士は両手で防ぐも、1人の体重を防ぐのは簡単な事では無い。
それでも倒れずに済んだようだが、それは明確な隙となってしまっている。当然私がその隙を逃す筈もなく、金棒を頭に叩き付けると鉄の兜ごと潰れ、夥しい血が隙間から噴出し始めた。
元々いつでも殺せたんだけど、最後がこれになるとは……。兵士を後ろに回らせて、なんて下らない事をしなければ、こんな死に方はしなかったでしょうに。
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Side:ミク
「あれも殺されたか。これで戦場に居るスキル持ちの騎士は私だけだ。お前達は強いな、本当に」
「私達が強いのは当然だけど、いつまで邪魔をしているつもり? 真面目に戦う気が無いなら、さっさと離れてくれない? いちいち面倒臭いんだけど」
「申し訳ないのだが、それは出来んな。私は君達を倒せと言われていてね、騎士として命令された以上は全うせねばならんのだよ」
「それが邪魔? 真面目に戦うならまだしも、さっきから兵士と共に戦ってばかりだね。しかも兵士を使い捨てにしているばかりじゃない? ぜんぜん突っ込んで来ないし、いたずらに兵士を殺させてるだけだけでしょ」
「そんな事は無い。君が強いからそうなっているだけだ。普通ならとっくに決着はついている」
「まあねえ。どうもそっちの近くに居る兵士は妙に動きが良くなるし、おそらくそういうスキルなんだろうさ。【配下強化】や【支配強化】、または【友軍強化】かな? どれも魔力が続く限りは強化できるけど、果たしていつまで強化できるのやら」
「………予想以上だよ。まさかスキルが当てられるうえに、似たようなスキルが他にあるとはね。弱点まで把握されているとは思わなかったし、通りで強い筈だ」
「知識は力だよ。腕っ節だけが強さじゃないんだけど、バカは理解しないんだよね。ま、バカが幾ら死のうがどうでもいいんだけど」
「君は我が国に来る気はないかい? 君ならすぐに上にあがれると思うよ?」
「私は自由な傭兵で居たいのであって、愚か者に仕えるなど虫唾が走る。よって何を対価に持って来ようがあり得ない。そもそも私を使えるほど有能な者など、この世に居ないんだよ。当然だけどね」
「随分と自信満々に言うけれど、それは驕りというものだ。君よりも上の者は、この世に幾らでも居るよ。まずは私より上だと示したまえ!!」
目の前の騎士から結構な魔力が出ると、それが兵士に繋がっていく。そもそもこれが見えているから私は強化系のスキルだと見破れるんだけど、向こうにはヒントもやってないから理解できてないね。
更に私の後ろに回った3人の兵士にも繋がってる。目の前の騎士も私が360度を見渡せるとは予想も出来ないだろう。誰がどう動くかなんて分かってるし、私にとっては非常につまらないんだよ。
どうしてこう、自分が見えているものが全てだと思い込むんだろうね? 魔力が繋がった兵士達がじりじりとにじり寄ってきて、前に居る奴等は大きな動きで後ろの連中を隠そうとしてるけど甘いね。
むしろ怪しい動きをしてどうするんだか。こういう時にやるべきは、相手にプレッシャーを与える事だ。それによって視野狭窄を引き起こし、後ろに意識を割けないようにする。それが正しい行動だというのに……。
こういう3流が相手だとガッカリするね。冷静さは持っているヤツだけど、所詮はその程度か。ま、こんな所に派遣されてくるぐらいだから、程度が知れるのは仕方ないんだろうね。




