0773・2日目の戦闘開始
Side:マハル
ミクさんに起こされて朝を迎えましたが、特に疲れも無ければ精神的に辛いという事もないです。おそらくはボクの中の<理の樹>という物が冷静で居させてくれているんだと思いますが、思っている以上に辛さがありません。
「悪い事じゃないんだし、それで良いと思うよ。別にウジウジと悩まなきゃいけないっていう決まりも無いんだし、そういうヤツが全てじゃないからね? 普通の兵士の中にも気にしないヤツは居るし、どうでもいいってヤツも居る。全員が全員同じじゃないよ」
「まあ、そうね。ミクの言う通りウジウジ悩まないだけ良いじゃない。それだって、そうしないと振り解けないから悩むんだしね。悩みが無いって事は、最初から囚われてないって事よ。悪い事じゃないわ」
「はぁ……そういうものですか」
「そういうものよ」
早めの朝食を食べながら体調の話をしたけれど、特に問題は無いみたいだ。思っている以上に何も感じてないのが気になったけど、それはそれで悪くないなら問題ないかな。それに悩む事が振り解く為だとは思わなかった。そんな風に考えた事もなかったし。
とりあえず早めの朝食を終えて、準備をしておかないといけない。今日も戦いだし、今日はどれだけの時間を戦うか分からないんだ。場合によっては今日1日ずっと戦う羽目になるかもしれない。気合いを入れて準備をしないとね。
そう思っていると、昨日も来た騎士の人がやってきた。この人も熊だから、やっぱり熊系の人が多いのかな? それとも偶然?。
「キミ達は昨日と同じように前線で敵を蹴散らしてほしいんだが、良いかな? 2日連続で厳しいと思うが、我々の士気の要もキミ達だ。倒れてもらっては困るが、かといって前線でキミ達が戦っているからこそ兵士が奮い立っているというのもある」
「私達は構わない。どうせ昨日とやる事は変わらないと思ってるし、出来得る限りは敵を減らすよ。流石に休憩は要るけどね」
「それは当然だ。しかし、そこまで長い戦いにはならないと思う。向こうも昨日の戦いでかなりの損害を出した。傭兵団は既に壊滅、残っているのは士気の低い兵士達でしかない。昨日キミ達に散々やられたのも記憶しているだろう」
「ちょっとした事で士気は上がったり下がったりするものねえ。私達が前に居て士気が維持できるなら構わないけど、今日は集中的に狙ってきそうね」
「ああ。場合によってはスキル持ちの騎士がキミ達の方に行くかもしれん。知っているかは分からないが、私もそうなのだがスキル持ちの騎士は相手の要でもある。倒せば一気に敵の士気を下げられるが、かなりの強さをしている事が多い。注意してくれ」
「了解、了解。出てきたら叩き潰しておくよ」
「生き残る事を優先してほしいが、スキル持ち相手だと倒しにいった方が安全か。戦いは当然そちらに任せるが、くれぐれも命を大事にしてくれ」
「分かりました。それで何時から戦いが始まるんですか?」
「そこまで長くは掛からないだろう。相手の陣地に偵察に出したのも居る。もし敵が逃げたら我々は全速力で追いかけ、敵の尻に噛みつく。後は追いかけながら出来るだけ倒すという形だな」
策の大まかな部分を聞かせてもらうと、騎士の人は去って行った。僕達も朝食を終えると準備をし、いつでも戦いを始められるようにしておく。ミクさんは昨日と同じ槍を持ち、ロフェルさんは金棒を持っている。
ボクは色々と迷ったけど、今日はグレートソードで行こうと取り出した。これで準備は万端だ。後は上手く戦うだけなんだけど、盾を持たないのはちょっと緊張するなぁ。今までは盾で防げたけど、今日は回避に徹さないといけない。上手く行くだろうか……。
「敵軍が動き始めた! 皆の者、行くぞ!!!」
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」
こちらの兵士の人達も動き始めたけど、何だか前の方に居る兵士達の顔色が悪い? ……ああ、あの人達が逃げた人達か。やはり最前線に出して禊をさせるつもりなんだね。これは仕方ない。
そもそも敵前逃亡した人達なんだし、言ったら悪いけど死刑で決まっていた人達だ。前線で戦わされても文句は言えない。死刑か前線に立って生き残るか好きな方を選べってところだろうね。裏切りを擁護なんて誰も出来ないんだし。
それに昨日戦って亡くなった人達も居るんだ、その人達が納得しないだろう。僕達も一番前だけどさ、これに関しては士気の問題だから仕方ないよね。ついでに生き残る確率も高いし。
よし、そろそろ敵とぶつかる。そして……今!。
ボクの一振りで敵が輪切りになって死ぬ。ドラゴン素材の武器の威力は伊達じゃない。相手の鎧ごと真っ二つにしたよ。流石にコレを何度も見せるのはマズいな。武器の素材なんかを聞かれる可能性もある。
輪切りになった敵兵は目立たなかったので、ボクがやったとは分からないだろう。横では豪快にロフェルさんが敵兵の頭を潰しているし、ミクさんは槍で敵兵の首を飛ばしている。そっちの方が目立つから大丈夫。次から気を付けよう。
殺した敵の後ろから更に迫ってくるけど、ボクはグレートソードで敵兵の首を切る。簡単に首が飛ぶが、そのまま前へ。次の敵は首を穿ち、そのまま左へ流して切る。それが終わったら更に前へと進む。
後ろから傭兵団の人達が来て、前線が混雑状態になったけど、それでもボクは変わらず目の前の敵の首を刎ね続けた。
「お前凄いじゃねえか! オレが居る傭兵団に来ねえか? 今なら幹部待遇で迎え入れてもらえるぜ!」
「お断りします。特に傭兵団に所属したいとか思ってませんので」
「まあ、そう言うなよ。今なら女もつけてもらえるように上に言ってやるぜ?」
「お断りします。それより真面目に戦った方がいいですよ?」
「なんでえ、オレ様が直々に声を掛けてやったってのによ。テメェら3人ぽっちでどうにかなるとか思ってんのか?」
「あんまり鬱陶しいと剣がそっちに飛ぶかもしれないので、気を付けた方がいいですよー」
「………」
単に匂わせた程度で黙るなら、最初から五月蝿く言わなければいいものを。こっちを攻撃してきたら真っ二つにしてやるつもりだけど、どう出てくるかな? ……って、さっさと逃げた。
同じ傭兵団の連中から白い目で見られてるけど、大丈夫なのかな? まあ、他人の心配をしてる場合じゃないな。目の前の敵と戦おう。それに、ミクさんやロフェルさんにも勧誘してる連中が居る。
御二人とも完全に無視していて全く聞いていない。ボクもああした方が良かったのかな? 戦場でいちいち受け答えもおかしいしね。勧誘なら終わってからするべきだろう。アレじゃ戦いの邪魔をしてるようにしか見えない。
いや、アレは明確に邪魔してるね。ずっと話し掛けてるみたいだし、ボク達が活躍したから足を引っ張りたくて仕方ないんだろう。あんな事をやったところで名が売れたりはしないのにね。
むしろ戦場で邪魔をする傭兵団だと思われるけど、分かってないのかな? もしくは嫌がらせしたヤツは辞めさせて、自分のところとは関係ないって言い張るつもりかもしれない。
いろんなヤツが居るなと思うけど、こんな戦闘の最中に足を引っ張るって敵対行為でしかないんだけどなー。……あっ、ミクさんが大きく振りかぶった時に槍の柄が当たったみたい。頭を押さえて悶絶してる。
ロフェルさんに絡んでいたヤツは、金棒を振りかぶった際に腕に当たって喚いている。近付きすぎなんだろうけど、もしかしたら御二人の方から近付いたのかな? 鬱陶しいヤツを叩く為なら、それぐらいやりそうだけど……。
っと、敵の攻撃に集中しよう。盾を持ってないから昨日とは違うし、下らない怪我なんてしたら目も当てられない。




