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0772・夜の考察




 Side:ファーダ



 夜になりさっさと外に出た俺は、死体を喰らって装備品だけは置いている。死体だけを喰うのは面倒なので、全て取り込んだ後で装備品だけ戻している。膀胱とはらわたは後で適当に捨てるので、今は本体空間だ。


 とにかく死体が多いので喰らっては装備の吐き出しを繰り返していき、なるべく素早く死体の処理を行っていく。今日はミクが見張りをしなければならんので、食い荒らす役は俺1人でせねばならん。間に合うのか不明だが、喰えるだけ喰おう。


 そうやって処理していると、微妙に起きている奴等の話も聞こえてくるな。興奮して眠れないのだろうが、その話し声で寝られないヤツも居るようだ。喧嘩にならなきゃいいがな。



 「それにしても、総指揮官が討ち取られたのはマズくねえか? オレ達の立場じゃ何も出来ないし、責任をどうこうとは言われないだろうけどさ。場合によっては良い方が更迭こうてつされるかもしれねえし……」


 「逃げた連中が居るらしいって聞いたぞ? そいつらに責任を負っ被せりゃいいと思うがねえ。どのみち敵前逃亡は死罪だろうにさ。真面目な方が罪を負うのは見たくねえなあ」


 「だな。オレ達だってあの状況で戦ったっていうのによぉ。お偉い騎士さんが逃亡したらしいじゃねえか。良い方も居るんで悪く言いたかねえが、名前だけの騎士なんて要るのかって思うわ」



 何処でもそうだが今回の戦いの愚痴が多いな。仕方がないとはいえ、敵の策を見抜けなかった状態からの奇襲だ。御蔭で一気に陣形から瓦解したうえ、乱戦になって敵前逃亡。そりゃ兵士のヘイトを集めるのも当然だろう。


 自分達は必死に戦ったのに、敵前逃亡を無かった事にしてシレッと戻ろうとしてるんだ。そんな事は下っ端でも分かる。そうしないと敵前逃亡である死刑になるからな。問題はそれを許すのかって事だろう。


 許すと生き残った兵士達が不満に思うし、許さないとなると盗賊化する恐れがある。許して明日の戦いの先鋒にするのが一番良いと思うが、敵前逃亡するような奴等だからな。後方に逃げを打つ可能性も高い。


 どうするのか知らんが、せっかく生き残ったのに難しい舵取りを迫られる事になったな。兵士を許して騎士だけ捕まえるというのもアリだろう。見せしめにはなる。



 「まさか、あの3人組があそこまで強いと思わなかったんだけど……。ずっと一番前で戦い続けてなかった? 私達の所からチラチラ見えてたけどさ」


 「僕も見えてたよ。まさかあんなに強いなんて思ってなかったし、凄まじい敵の数を殺してた。3人だからそこまで数は多くないとはいえ、3人で殺した数としては驚異的だよ。そのうえずっと戦ってたしね」


 「誘ったらウチに加入してくれるかしら?」


 「………正直に言って無理だと思う。他の傭兵団も狙ってるっぽいけど、あそこまで強いんじゃ団長でないとおかしい。僕と一緒に副団長を辞める気ある?」


 「ふざけないでよ。危険な事も結構したし、そうやって団に貢献したから副団長になれたのに、またヒラに落とされなきゃいけないわけ?」


 「真面目な話、傭兵なんだから強い者に従うのは当たり前の事だ。そして向こうの方が圧倒的に強いんだから譲るしか纏める方法は無い。彼らが仮に入ってくれてもヒラのままなら、やがて傭兵を引き抜いて出て行く。誰だって強い奴と共に居る事を望むからね」


 「あいつらが望もうが望まなかろうが分裂するって事ね。だったら入れる訳にはいかないわ」


 「そうなんだけど……」


 「なに?」


 「既に彼らの強さは伝わってる。ウチから出て彼らに鞍替えする可能性があるんだよ。あそこまで強いなら戦場で生き残る可能性は高い。誰だって強い者についていきたいさ、僕もそこは変わらないよ。たとえ団長でもね」


 「………」



 あの傭兵団の男女か。心配せずともミク達は傭兵団に入る気も無ければ、有象無象を従える気も無いんだが……。まっ、こいつらには分からんから仕方ないかね。大した話でもないし、喰う事に集中するか。


 今はまだ夜だから装備を奪っている連中は居ないし、軍も居るんでハゲタカ連中も出て来てはいない。領都の中に居るだろうから、領都の中で爆死した傭兵の装備は漁ってるかもしれないな。傭兵はそこまで良い装備も持ってないが、小遣い稼ぎにはなるだろう。


 なかなか終わらないが、ミク達も含めて両軍入り乱れたからな。デジム王国も結構な被害を出したが、ナロンダ国もかなりの被害を出した筈だ。ミク達が戦線を維持し、ひたすらに殺し続けたからな。アレは大きかった筈。


 逆に言えばアレの所為で被害が大きくなり、退くに退けなくなったのがナロンダ国だ。そして手をこまねいている内に被害が拡大していったのだが、今は頭を抱えているだろう。早くに退いておけば良かったと。


 死体を喰うだけなので本気を出してるんだが、なかなか終わらないんだよ。俺の見立てじゃ両軍共に3割以上の死者を出してないか? もしそうなら両者敗北とも言えるんだが、今さら止めるのも難しいだろう。


 被害がどれくらいあったかに関して正確なところは分かっていないだろうが、被害が甚大だという事は両軍共に分かっている筈だ。ただしデジム王国側は王国の領土に入られている。この時点で退却するなどあり得まい。


 ナロンダ国も夜中に疲れた体を引き摺っての退却は難しい。そんな事をすればモンスターの餌にしかならん。これがモンスターの出る星の戦争の難しさだ。人間種以外の敵の事も考えなければならない。


 それを分かったうえで、両軍は明日も戦わねばならないだろう。そもそもデジム王国の被害は軍だけではなく辺境伯の領都もだ。どれだけの被害を受けているかは分からないが、領都は一度陥落している。これがデジム王国には痛い。


 辺境伯の一族が生き残っていればいいが、仮に生き残っていてもクズなら辺境は任せられまい。辺境伯に任じられるのは相当に優秀な人物か一族でないと無理だ。そしてそんな一族を敵国が残しておくとは思えない。


 辺境に新しい領主が行っても、領地を掌握するのにそれなりの年数は掛かる。その間に再び攻められると相当に厄介な事になるだろう。それらも含めて策を弄してきている可能性が高い。ここら辺は戦略的な話だが、そこまでやってきていないと考えるのは甘いだろうな。


 少なくとも辺境伯の領都は簡単に陥ちたんだ。中から手引きした者が居る可能性が高い以上、計画的に辺境伯の領都を陥落させている。なら、そのついでに色々と画策するのは当然であり普通の事だ。


 何処までやられているのかは分からないが、デジム王国としても辺境伯領を確保しておく為に負けられない。そしてナロンダ国側は簡単に逃がしてくれない事を知っている。何より空きっ腹では逃げられない。


 朝早くから炊き出しをして食べても、逃げるのに時間は掛かる。何より相手は敵国まで入り込み過ぎた。ここから脱出するまでにも結構な距離がある。そこまで逃がしてくれるかどうかと考えれば……正直にいって難しい。


 デジム王国側は死に物狂いで追いかけるだろう。敵というのもあるだろうが、それ以前に敵が逃げれば勝ち戦だ。出来得る限り敵を討てば、その分だけ褒美に近付く。傭兵もまだ残っているくらいだし、連中は目の色を変えるだろう。


 奇襲が始まった時のデジム王国とナロンダ国との立ち位置は既に逆転してしまっている。今はデジム王国の方が士気が高く有利な状況だ。総指揮官が討たれても前で戦い続けた以上、デジム王国側には勝てるんじゃないかという空気がある。


 これが有るのと無いのでは大きいだろう。明日になってみないと分からないが、この空気は高い確率で引っ繰り返らない。理由は、この空気を作り出しているのがミク達だからだ。俺達が負ける事はあり得ないからな。だから揺らがない。


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