0770・戦争の続き その2
Side:ミク
鬱陶しい傭兵団を壊滅させたけど、敵は多く残っている。私達にとっては特に問題ないけど、既に隊列が崩壊している本隊は態勢が立て直せないままの戦闘を余儀なくされていた。
領都を攻めていた傭兵団が、反転して敵の主力を攻め始めたので多少マシになったが、それでも戦いの流れは悪い。私達は3人しかいないので戦場の流れを変える程の働きは出来ないのだ。まあ、そのこと自体はそこまで問題のある事では無いけど。
私達はデジム王国に雇われているだけであり、別に勝たせたい訳ではないのだ。更には他の傭兵団のように褒美が貰えなければ困るという訳でもない。最大の目的は戦争に参加する事であり、その事は戦闘をしている時点で達成されている。
なので私達としては戦いを続けられるだけで十分なのだ。むしろ不利になればなる程に、それだけ多くの敵と戦えるのだから、ありがたい限りだと思う。<願わくば、我に七難八苦を与えたまえ>の山中鹿介幸盛じゃないけど、今はそんな感じかな?。
まあ、再興する家とか何も無いんだけど、腕を上げる為には七難八苦が欲しいところだね。願わくは強めの敵が欲しい。ロフェルはともかく、マハルが苦戦する程度の……それも難しいか。【身体強化】を教えてあるし。
適当な事を考えつつ戦っても余裕で勝てるようなザコしかいないし、私が本気で戦わなきゃいけない相手なんて神ぐらいだからねえ。こんな所に居る筈も無く、それ故に苦戦なんて事は無い。それよりも何とか良い経験をしてほしいくらいかな?。
傭兵達も戦いに参加し始めたからか、段々と敵を押し止め始めた。それでも騎士や兵士がやられているから、完全に押し返す事は出来ない。そもそも最初の奇襲を受けてバラバラになった時点で不利であり、簡単には戻らないだろう。
そのうえ敵もそこは分かってる。だからこそ態勢を立て直させない為に猛攻を続けている訳だしね。これで傭兵が活躍した御蔭で勝ったとなったら、デジム王国の首脳陣はどうするのやら。それでも騎士や兵士の功績だと言う気かな?。
そこはちょっと楽しみにしておくけど、今はこのザコどもを屠る作業を続けよう。死体が勿体ないけど、それは仕方ないと諦めてもいる。夜中になったらひっそりと喰いにくればいい。そうすれば荒らされる前に処理できるだろう。
戦場には死体の装備を剥ぐハゲタカみたいな連中が必ず湧いてくる。ガイアでもあった事であり、どこでもある事だ。死体の装備だって綺麗にすれば十分に売れる。拾って綺麗にして売れば臨時収入だからね、領都の連中は必ずやるよ。
それらが来る前にどうにか死体を喰らいたいんだけど、難しいかな? その辺りは戦いがいつ終わるかで変わってくるだろうが、できれば夜遅くまで続いてほしいと思う。ここには昼を過ぎてから到着しているし、このまま戦闘が推移すれば夕方でも戦いは終わらない筈。
マハルはキッチリと相手の攻撃を流し、カウンターの一撃を決めている。ロフェルは当たるを幸いに振り回しているが、そもそも当たるように振っているうえ、その速度が速いので外れる事は無い。そして当たれば致命の一撃だ。
それらを繰り返しているものの、特に体力が無くなったりはしていない。ロフェルの方が体力の消耗は激しいが、鬼神族の体力が膨大なのか疲れた顔は全くせずに振り回している。このまま更に攻め立てたいところだね。
私は槍を使っているので、そこまで目立ってはいない筈だ。敢えて槍で1人1人殺していっており、長巻を使って数人を一撃で両断などはしていない。なので目立つ戦功を稼いではいない筈だ。今は目立ちたくないし、目立つなら2人の方にしたい。
まあ、2人が目立ったら必然的に私も目立つ羽目にはなるんだけど、それでも名が売れない事は大事な事だ。変な話かもしれないけど、私にとっては名が売れたところで損しかないからね。
おっと、傭兵団の一番前に居た奴等も遂にこの戦場に雪崩れ込んできたね。そして門は上がってないんだから、間違いなく巻き上げ機は壊されていたと見ていい。となると囮だし、金品を強奪している可能性が高く、不満の渦巻く町になっている筈だ。
どうやって治めるのか知らないけど、放っておく事も出来ないっていう大変な事態になっているだろう。この戦いが終わった後には地獄が待っている。もちろん私達は傭兵なので何の関係も無いけど、現場の治安維持と文官は地獄だろうなぁ。御愁傷様。
更に傭兵達で押し込んでいると、敵軍から大きな声が挙がった。
「敵将、討ち取ったりーーーー!!!」
「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」
敵は勢いを増し、こちらの軍は勢いが衰えた。それでも私達は無関係に敵を殺し続けている。こちらの将が殺されたからといって、止まってやる義理など何処にも無い。ましてや傭兵なんて投降は出来ないんだ。保証なんてされないし。
『2人とも、このまま戦闘継続。どのみち投降したところで、傭兵なんて命の保証はされないしね。それに私達が死ぬ事も無ければ、負ける事も無い。ならこのまま乱戦の練習を続けよう。敵はまだまだ沢山居る』
『投降するぐらいなら逃げた方がマシよ。絶対に碌な事にならないし、私達であろうがマハルであろうが犯されるだけよ。そもそも向こうの大陸の狩人でさえそうなんだから、こっちの傭兵なんてもっと酷いでしょうね』
『最悪ですね。それならこのまま戦った方がマシでしょう。ですが最後はどうするんです? ボク達で敵軍を殲滅なんて出来ませんよ?』
『最後はセリオに乗って脱出すればいいだけだよ。その時にはセリオに敵軍を少し蹂躙してもらえばいい。それで敵も逃げるでしょ。そのうえで夜にはファーダが皆殺しにすれば終わる』
『全滅させるの?』
『何の問題も無いよ。殺し殺される関係でしかないんだ。戦争が終わったとしても、自分の居場所に戻るまでが戦争だ。行きよりも帰りの方が怖いものさ』
『敵さんは帰れなくて全滅かー。でも領都に色々とやったっぽいし、そうなっても文句は言えないでしょ。戦争なんだしね』
『そう、ですね。相手の方が上手だったとはいえ、こちらがやり返してはいけないという決まりも無いですし、食べてもいい者なら問題は無いのでしょう』
『それじゃ、このまま戦闘を続けて経験を積んでいこうか』
『『了解!』』
そう決めて、私達はひたすらに戦いを繰り返していく。まあ、やっている事は戦闘というより、敵兵を殺しているだけだなんだけどね。それでも私達が前で戦い続けているからか、傭兵達も踏ん張って戦っている。
本隊の騎士や兵士の方が及び腰で戦いを止めたがっているぐらいであり、連中は恥というものを知らないらしい。それとも敵将を討たれたら戦闘を止めなければいけない決まりでもあるんだろうか?。
おそらくは私達が戦闘を止めないので逃げるに逃げられないのだろう。今逃げたら間違いなく逃亡兵にされる。傭兵がどうこうと言うより、傭兵を利用して逃亡兵に仕立て上げられるという事だ。
そうしないとデジム王国としても民に言い訳が出来なくなる。傭兵が戦い続けていたのに軍が逃げたなど、完全に国内における軍の立場が崩壊してしまう。信頼も何も無くなってしまう以上は、絶対に逃げられない。
もちろん既に逃げた者は居るだろうが、そいつらは逃亡兵で確定だ。今の内に戻ってきて戦いに参加すれば大丈夫だろうが、戦闘が終わってから戻ってきたら絶対に処刑される。
逃げた騎士や兵士がそれを理解しているかは知らないが、離れた所に多数の生命反応があるのは今も変わっていない。つまり都合の良いところで戻るタイミングを計っているのだろう。
しかし現場の指揮官組もまだ生き残っているし、納得はしないだろうねえ。
エピソード3の人物紹介を更新しました。




