0769・戦争の続き
Side:ロフェル
傭兵達が壁を越えて門の裏側に殺到する。巻き上げ機で門を開けてしまえば、後は町中に残る敵を掃討すれば済む。そう思っていたんだけど様子が変ね? なかなか門が上がらない。いったい何をやっているのかしら?。
私達がそう思っていると、背後から突然大きな声が聞こえた。何かと思って振り返ると、軍の騎士や兵士が戦闘を始めた声のようだ。つまり、軍が何処からか攻撃されたらしい。
「後ろの軍が攻められたって事は、そもそもあの領都自体が囮だったって事。そしてその狙いは本隊の奇襲にあったんだろうね。だから堂々と敵国の旗を掲げてたんだよ。あそこに居ると見せかける為に」
「成る程、そういう事ね。領都に釘付けにしておいて、本命は本隊を攻撃して壊滅させる事にあったと。じゃあ、門が開かないのは何故?」
「もしかしたら巻き上げ機を壊してるんじゃ……」
「マハルの意見が多分正解だと思う。巻き上げ機を壊しておけば門を開けるには修理するしかない。敵軍の兵は壁から外に逃げればいいし、開かないなら敵は巻き上げ機の近くで困った事になる」
その時「ドォン!」という音がして、領都の門近くで悲鳴が起きた。あれだけ大きな音がしたんだし、魔法か何かでしょうけど何が起きたのかしら? どうやら結構な傭兵が被害を受けたみたいだけど……。
「あの音から察するに、もしかしたらだけど不死玉を使ったんじゃないの? なんだか嫌な予感がする。こっちの大陸では既に実用化されていたりして……」
再び「ドォン!」と音が鳴り、傭兵達の悲鳴が大量に聞こえてきた。銃で起きている爆発が大規模に起きたなら、多くの傭兵が犠牲になった筈。まさかこっちの大陸での初めての戦争がこうなるなんてね。
「何が起きてるかはともかく、これからどうするんですか? なんだか本隊も負けてる気がするんですけど?」
「それはね。準備を万端に整えていた相手の前にのこのこと現れたんだから、どう考えても負けでしょうよ。本来なら到着してすぐ偵察を出せば良かったのに、それすらしてなかったんだから当然だけどね」
「そうねえ。偵察していたら変だって気づいたかもしれないけど、着いたらすぐに門攻めだものね。指揮官がまともな指揮も出来ないんじゃ敗北確定でしょ。それはともかくとして、本当にどうする? このままじゃ褒美も何も無しよ?」
「いやいや褒美どころじゃないでしょ。敵軍に殺されてしまいますよ。ここは逃げるべきでしょう」
「逃げたら逃げたで五月蝿そうだけどね? なるべく敵を殺しつつ戦っていようか? 私達には体力も十分あるし。流石に本隊が完全にやられたら、私達が逃げても文句は無いだろうさ」
「その辺りが無難かしら? 他の国に行くならどうでもいいんだけど、それでも似顔絵とか出回ると面倒このうえないものね。そもそも傭兵の所為にされても困るけど」
「そうだけど、とにかく自分が責任を負いたくないヤツは何かの所為にするよ。だいたい総責任者は既に逃亡してるかもしれないしさ」
「とりあえず戦うならしっかり戦いましょう。ボクも似顔絵が出回って追い掛け回されるなんて勘弁ですからね」
意見が一致した私達は本隊の方に回り、そこに居る敵軍を殺していく。敵軍の装備は鉄の鎧に赤い鳥が描かれているので分かりやすく、私はそいつら目掛けて斧を振るう。水平でも振り下ろしでも切り裂いていき、一気に敵を倒して回る。
「ぎょ!?」
「くそっ! また殺されたぞ!! こっちの傭兵を先に倒すんだば!?」
「またか!? この傭兵ども明らかに強さがおかしいぞ! 早くえんごぉ!?」
私達は当たるように武器を振り回している。ミクは石突で股間を強打したりとしているけれど、私はそこまでしない。流石に可哀想だという思いもあり、なるべく一撃で倒している。ここは戦場なので容赦をすれば自分が死ぬ。
マハルはちょっと顔色が悪いけれど、おそらくは血の臭いと死体の見た目にダメージを受けているんだと思う。この生温かい臭いと風は何度か経験しないと厳しいものがある。私もかつては苦労したのよね。後方でも臭いは来るし死体も見えるからさ。
それを喜んでやってた【二重詠唱】や【気配消失】に【豪腕】と【魔大剣】はやっぱりおかしい。あいつらは戦争に参加し過ぎて、何処かが狂ってしまったんだと思うわ。マハルもそうならないようにしないとね。
私達が暴れれば暴れる程に、敵兵が輪切りになったり首が吹き飛んだりしている。輪切りにしているのは私だけど、恐ろしい速さで首を突いているのはミク。マハルは顔色が悪いけれども、それでも戦えている。
今も敵兵の頭を兜ごと潰して殺しているし、敵の攻撃は盾で上手く捌いている。練習の成果が十分に出ていると思うし、動けているなら問題ないでしょ。そう思いつつ敵兵を殺していると、敵軍の者と思しき傭兵がやって来た。
どうやら私達が暴れまくるんで、数を使って無理矢理にでも止めろってとこかしら? 向こうでも傭兵は捨て駒扱いなのねえ。仕方ないんでしょうけど。
「てめぇらが敵の傭兵か! なかなかに強いようだが、オレ様がべっ!?」
あーあー、ミクがさっさと槍で突き殺したわねえ。戦場でわざわざ名乗りを挙げるとかバカじゃないの? いっそ殺してくれと言っているようにしか聞こえないわね。そういう頭の悪いのから死んでいくんだけど、その通りの結果になったわ。
「くそ! 団長を殺りやがった!! 名乗りの途中だってのにふざけやがって!! てめぇら、ブチ殺せ!!!」
「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」
それなりに大きな傭兵団だったのかしら? 全員が揃って熊の獣人みたいだけど、こういう傭兵団もあるのねえ。国には色々な種族が居るけども、傭兵団で纏まるのはアリと言えばアリね。
とはいえ熊の魔物より強くないんだから、大した相手でも無い。相手は連携して攻撃なんてして来ないし、戦場でそれを行うのは難しい。相手が私だけなら良いんだけど、そうじゃないからね。
隙を見せればミクやマハルに殺される。そうなると連携して1人を攻めるなんて危険な事、出来る訳がない。だからこそ力押しになってしまうし、だからこそ私達に殺される。力押しでは私達に勝てないのよ。
怒った敵が攻めて来ても、私達は頭を真っ二つにしたり、カチ割ったり、首を飛ばしたりしている。やる事自体を変える必要なんてないし、このまま殺し続ければ私達の勝ちにしかならない。
敵もそれが分かっているからか必死に攻撃してきているものの、私達がその攻撃に当たってやる必要も無い。避ける事を優先しつつ攻撃している為、相手の攻撃が私達に当たる事って無いのよね。
「くそっ! 押し込め、押し込めば絶対に当たる! その一撃で殺っちまえ!! 団長の仇討ちだ!!」
「「「「「「「「「「おうっ!!」」」」」」」」」」
仇討ちってねえ。そもそも戦場に出るという事は、殺される可能性を背負うって事よ。殺される覚悟も無しに出てきたのかと言いたくなるわね。そうやって覚悟が無いから殺されていくのよ。
覚悟が出来ているなら、そして仲間が大事なら退くでしょうに、仇を討つ事に躍起になっているからこうなる。マヌケの命運も尽きたわね。
「何でだ!? 団長を殺りやがったヤツだぞ! オレ達が仇を討たなきゃいけねぶぇ!?」
鬱陶しかったのか、さっさと首を刎ねられたわねえ、ミクに。
戦場で感情に囚われるからそうなるのよ。って、もう聞こえてないでしょうけど。




