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0767・門前の戦い




 Side:ミク



 あれから5日。昼を過ぎて、ようやく戦場である場所に辿り着いた。だが、そこは当初冗談で言っていた辺境伯領の領都だ。どうやら敵に奪われたらしく、敵国であるナロンダの旗が掲げられている。


 デジムの旗は白地に青い三角が2つ描かれた物で、ナロンダは白地に赤い鳥が描かれたものだ。全く色が違うので分かりやすい。それは良いのだが、早速とばかりに傭兵を使い潰す策が決まったようだ。


 つまりは先鋒。分かりやすくいえば、門を開ける為の生贄だね。壁の上から攻撃を受ける以上、死亡確率はかなり高い。だからこそ、こういう場所で傭兵を使い潰す訳だ。兵士が死んでも困るので、困らない傭兵が死ねという事だろう。


 大変分かりやすい事だが、私達の場合は魔法を使うと門を破壊出来るんだよね。言わないけど。



 「つまり貴様らには名誉ある先鋒を任せ、門を開けるという勲一等を与えようという事だ! 名誉と褒美の為にひたすら励め!!」



 明らかに傭兵達の士気が低いね。平原などで開戦、または森などから奇襲と思ってたら、一番過酷なところに投入されるんだ。やってられないと考えても仕方がない。そして傭兵達で始まる先鋒の押し付け合い。


 当たり前だけど、誰だって一番前には行きたくない。何故なら一番死亡率が高いからだ。門は鉄格子であり簡単には壊せない。ならどうするかと言えば、門の近くの壁を登って上に上がり、裏に回って鉄格子を開ける。


 これをしないと町攻めなど出来ない。まして辺境伯領の領都なんて、だいたいが城砦都市となっている。つまり他の町と比較しても堅牢なんだ。むしろ敵軍が奪えた方法が気になる。もしかしたら間者でも居たかな?。


 こういう堅牢な城砦の場合は闇雲に攻めるよりも、内部に潜ませた間者に開けさせる方が早いし被害も少ない。そうやって乗っ取った可能性が高いけど、こっちはその方法を使えない。中に居る人達に呼応してもらえれば開けられるだろうけど、それは私達でもなければ無理だ。


 そして僅か3人が活躍したとなれば他の傭兵達が黙っていない。当たり前だけど門を開けるというのは非常に大きな名誉だ。もちろんデジム国がその名誉を傭兵に与えるとは思えないけどね。だから行きたくないというのも多い。


 苦労しても奪われて適当な褒美で誤魔化される可能性が高いんだから、誰も前に行きたい奴なんか居ない。そうしていると、騎士どもと軍の偉い者が来て勝手に命じてきた。どうやら数が多い傭兵団から前に行けという事らしい。


 別に私達が前でも良かったんだけど、数が多い奴等を前面に出すのは当たり前と言えば当たり前だ。傭兵の数は全部でざっと500ほど、騎士と兵士が合わせて2000の合計2500。そのうち500で門を破れって言うんだから随分と無茶を言う。


 そもそも2000でさえ門を破れるかどうかは分からないからだろうけど、普通は合同で当たらないと門を破れないと思うけどね。ま、とりあえず私達は3人しか居ない。一番後ろでゆっくりと戦わせてもらおう。


 渋々といった感じで傭兵達が並んでいき、私とロフェルは弓と矢筒を取り出す。それを着けて準備を整えたら、マハルを前に出して適当に守らせる。もちろん無理はしなくていいと言ってあるから、マハルも無理はしないだろう。


 どのみち投げられてくる石や飛んでくる矢で死んだりなどしないし、そこまで近寄ったりもしない。敵の攻撃は間違いなく門に取り付いた連中、もしくは門近くに梯子を架けようとしている連中に集中する。その後は登ろうとしているヤツだ。


 弓矢で遠距離攻撃を考えている私達には攻撃など殆どしてこないだろうし、もし私達に集中するなら傭兵団の連中は登るだろう。どっちにしても損は無い。ロフェルも昔と違い、今は狙って当てるだけの技術がある。


 弓の使い方が云々というヤツが居るけれど、重要なのは当たるかどうかだ。弓の使い方が変わっていようが何でもいい。大事なのは命中率であり、それ以外じゃないんだよ。今のロフェルはロングボウを持っているが、これは新しく作った物だ。


 今までの弓じゃ小さいのと、ロフェルのパワーに対応した弓にする必要があった。なので大型のロングボウになったんだよね。私が使っている和弓よりは小さいとはいえ、なかなかの大きさの弓を持った事で、前の傭兵団の2人が驚いている。


 あの2人、実は前の傭兵団の団長と副団長だったらしく、途中で正体を明かしてきた。それと傭兵は名乗り合わないのが当たり前らしい。傭兵稼業は死亡率が高いので、いちいち名前を覚えていたら感情移入してしまう。なので覚えずに済ませるのが常識のようだ。


 もちろん同じ傭兵団なら知っているが、戦場では暗黙の了解で名前は出さない。それに名前を出すと命を奪われると言われていて縁起が悪いそうだ。死なない為に色々な願掛けをしているのだろう。


 一番前の傭兵団が覚悟を決めたのか大声を上げて進む。



 「「「「「「「「「ウォォォォォ!!!」」」」」」」」」」



 後はもう前の傭兵団についていくだけであり、傭兵達の戦いの火蓋は切って落とされた。軍が持って来ていた梯子は全部で6つ。それで何とか壁の上に登り、裏から鉄格子を開けなければいけない。


 専用の巻き取り装置が近くにある筈なので、それを動かして鉄格子を上げれば私達の任務は終了だ。後は騎士や兵士が手柄を横取りする為に突撃してくるだろう。


 傭兵達の後ろについているんだから、ある意味で督戦のような状態になっている。傭兵が逃げられないように圧迫し、本当に逃げたら殺すつもりなんだろう。傭兵が減れば、その分だけ払う報酬を減らせる。だからこそ、そういう任務も帯びている配置だ。


 前についていった私達は矢が飛んできたので止まり、その位置から敵兵を狙撃する。マハルは私達に当たりそうな矢を弾いていく。私達の矢が飛ぶ度に、「ズドンッ!」という音がして敵の兵士が後ろに飛ぶ。


 おそらく壁の上から落とされているのだろうが、落ちて死んだかな? 敵軍から怒号が聞こえる。とはいえ私達には関わりの無い事だ。どんどんと矢を射って相手の兵士を殺していく。


 流石に相手も私達を殺さないとマズいとでも思ったのか、こちらに向けて石や矢を放ってくるが当たる物は無い。マハルが守ってくれているし、そもそもこちらは敵の攻撃範囲ギリギリだ。元々非常に当たり難いのである。


 そしてこちらの攻撃は一方的に当たる距離であり、当たれば致命の一撃になる距離だ。実際に私とロフェルならプレートアーマーでさえ相手にならない。それだけの威力の矢を放っている。


 敵兵に当たる度に「ズドンッ!」という音がするので、その度に傭兵団の方から歓声が上がっていく。どうやら私達が壁上の兵士を倒すからか、予想よりも被害が少なく梯子を登れているらしい。


 私達が牽制の意味も篭めて壁の上の兵士を倒していると、何としても私達を倒したいのだろう。プレートアーマーを来た騎士が壁の上に現れ始めた。しかし私達は気にせず、より力を篭めて矢を放つ。


 再び「ズドンッ!」という音がすると、プレートアーマーを着た騎士の体を貫きながら吹き飛ばす。騎士が消えたので、どうやら落ちたのだろう。傭兵達から更なる歓声が聞こえてきたが、それは壁の上に到達したからのようだ。


 ここまで来たら押していく事で鉄格子の門は開けられるだろう。私とロフェルは壁の上の残敵掃討に移る。味方に当てないようにしなければいけないが、離れている敵なら射殺す事が出来るだろう。


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