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0073・61階から先の攻略開始




 「話は変わるけど、今日は一旦休みというか、様子見にしたいんだけど良いかい? 必要な者達は既に処理してもらったからね。これからは細かい連中になる。本当に喰うべきか、上手く使うべきかは悩みどころでね」


 「明確に国にとって問題だと言える程でもない、小物って事ね。そういう連中だと微妙なラインになってくるから、新たな犯罪が掘り起こされない限り難しい?」


 「それもある。だけどそれ以外にもスラムの連中とかね、そっちを精査しなきゃいけないのさ。他国の工作員は入ってるけど、泳がせる工作員も居れば、消さないといけない工作員も居る。一概には言えないんだよ」


 「成る程ね。まあ、<王の影>の事もあるし、連日食べてるからそこまで気にしなくていいよ。喰わなくてもいいなら、私はゆっくりしてるだけ。明日からはダンジョンだしね」


 「そうかい? そう言ってくれ……どうぞ」


 「申し訳ございません。夕食が出来ましたので、お呼びに参りました」



 メイドが来たので話を終え、ヴェスと共に夕食に行くミク。メイドや執事が居る前では話せないので、ここまでで話し合いは終わりとなった。


 宛がわれた部屋に戻り、服を脱いで下着姿になると、レティーを枕元に置いて寝転がる。後は関わりを薄くして、本体空間で暇を潰すのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 翌日。朝食を食べて屋敷を出たミクは、雑貨屋に寄って中銀貨1枚分の紙とインクとペンを購入する。これは本体用だ。


 一度アイテムバッグに入れて王都フィラーを出る。そしてダンジョンへと歩いて移動している時に、右手をアイテムバッグに入れつつ肉塊にし、取り出した物を本体空間に転送した。これで本体も紙に地図を描ける。


 ダンジョンへと移動し、誰も使った事がない上の魔法陣へと向かう。周囲の探索者がジロジロ見てくるが、ミクは魔法陣に乗り転移。ミクが消えた後、周囲はどよめきに包まれた。



 「61階からは砂漠? ……これって人間種に攻略出来るようになってるのか疑問があるんだけど……」


 『確かにそうですね。私は問題ありませんが、普通の人間種にこの陽射しは厳しいものがあるでしょうし、実際に移動だけで耐えられなくなりそうです』


 「だねえ。とりあえずは進んで行くけど、本体が地図を描いてるから適当に進んでみよう」



 ミクは魔法陣の上から歩きだし、真っ直ぐ前へと進んで行く。周り一面が砂漠である為、東西南北が分からず目印が無い。幾ら1階層5キロ四方しかないと言っても、これは厳しいのではなかろうか。


 そう思っていると、所々にサボテンが生えているのが確認できる。そのサボテンに近寄ると、突然足下から魔物が突き上げてきた。


 ミクは素早くバックジャンプを行い離れたが、並の人間種なら反応できずに死んでいるかもしれない。それほどの鋭さを持った攻撃だった。


 地面の下から現れたのは、巨大なミミズのような魔物だ。ただし先端が8つに分かれ、中には牙が並んでいるのが見える。全長は8メートル程で、胴の直径が50センチ程もある、なかなか凶悪な見た目だ。


 ミクは皮質からウォーハンマーでは駄目だと判断、代わりにバルディッシュを取り出す。そのバルディッシュを右下段に構えて様子を見るも、向こうは何も考えず突っ込んできた。


 ミクは素早く右にステップしてかわすと同時に、バルディッシュを振り下ろす。【身体強化】はしていなくとも、人外パワーなら余裕を持って断ち切れたようだ。


 先端から50センチ程の部分に斧を叩きつけたので、人間種なら首を落とされた形であろう。レティーが体液を吸ったものの、栄養が少ないのですぐに止めてしまった。


 ミクも無理に吸えとは言わず、自分で処理する事に決めたようだ。右手を肉塊にして先端を包むと、体液だけを吸い出して、肉の別の場所から吐き出している。そうやって体液を吸い出したら、本体空間へと転送した。


 これはミミズの皮の質感がゴムに似ていたからであり、本体は何かに使えるのではないかと思い送ったのだ。現在、様々に弄って調べているようだが、分体は気にせず先へと進む。



 『先ほどの巨大ミミズはアイテムバッグに入れなくて良かったのですか?』


 「本体がゴムに似てるから調べたいってさ。本当にゴムと似たような素材なら、いろいろ使い道があるだろうしね。それはともかく、先へと進もうか」



 下から強襲してくるのも分かったので、地面の下も調べながら進む。すると次はトカゲのような魔物が出てきた。どうやら砂漠だけあって乾燥に強い魔物が出てくるらしい。


 そのトカゲは走って噛み付いてきたものの、ミクはミミズの時と同じようにかわし、足に思いっきり振り下ろす。一撃で左前足が切り落とされたトカゲは、途端にまともに動けなくなった。



 「Gu! Geee!!」



 必死に威嚇してくるも、既に足が死んだ者など相手にもならない。結局トカゲの側面に回って左後ろ足も切り落とし、倒れたトカゲの首にバルディッシュを落として終了。レティーに血抜きをしてもらったら収納する。



 『このトカゲは収納するのですね? つまり使えそうな素材は無い訳ですか』


 「いや、使えない訳じゃないと思うけど、気になる程の物でもないってところかな? 無理に使わなくてもいいって言うか、仮に優秀でも見た目からは分からないってところ」


 『ああ、ミミズはあからさまに分かりやすく、奇妙な質感の皮でしたもんね。確かにあれなら気になりますか』


 「そういう事。分からない物は放置するけど、面白そうな物は触るって感じだね」



 そんな話をしつつも階段を見つけたので、下りて62階へと進む。この調子で砂漠が続くとなると厄介だなー、とミクは思っているが、それでも歩みを止める事は無い。


 本体が地図を描きつつも、ミミズの皮に色々な実験をしている。そんな状況であるにも関わらず、冷静にしっかりと魔物を倒してアイテムバッグに収納していく分体。


 傍から見ると機械的に思えるような動きをしつつ、63階、64階、65階と下りていき、現在70階に到達した。



 (意外に砂漠を走るのも、そこまで苦じゃないね。負担の掛からない走り方も分かったし、砂漠自体の暑さはそもそも私に効かない。人間種なら大変だけど、そこはそれっぽく説明すればいいか)



 ミクは目の前の砂漠を見つつも、上空に鳥が飛んでいるのを確認。ここからは空からも襲われるらしい。地面の下に反応があるのも分かるし、地上を走る反応があるのも分かる。


 それだけを確認したら、ミクは61階へと戻っていく。ギルドでの説明や売却、それらを考えると時間的にギリギリだろう。だからミクは走って帰るようだ。


 地図に目印となる物は書き記している為、迷う事もなく戻っていく。実はサボテンの近くにある岩には、必ず入り口の方角を示す矢印が書かれている。なので帰る方角は分かるようになっていた。


 ミクはそれを見なくても理解しているが、こういった情報も渡せば、何故ミクが行き来できるかも納得するだろう。ミクの場合は記憶と照らし合わせれば分かるのだが、反則の記憶力は説明できない。


 だからこそ人間種でも攻略できるような情報が必要になるのだ。人外が人外能力を駆使しました、では話にならない。



 (私としては出来て当たり前なんだけど、人間種では絶対に無理。そういう事はよくあるからねえ。これも面倒臭い事の一つだけど、騒がれるともっと面倒臭くなるからしょうがない)



 61階の魔法陣に辿り着いたミクは、溜息を吐きながら魔法陣に乗り、61階から脱出した。ここの攻略は明日か明後日には終わるだろうと思いながら。


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