0756・盗賊団壊滅
Side:ファーダ
リーダー格の奴が護衛を連れて逃げ出したみたいだな。あれだけ大口を叩いていた割には無様なものだ。さて、先回りして止めるか。俺達からすれば全てがザコなのだし、そもそも魔法を使っていればすぐに全滅させる事は出来た。全ては2人の経験の為だ。
「おっと、ここから先に通す訳にはいかんな。お前達にはここで全滅してもらわねばならんのだ。盗賊団など1匹でも残すと蛆虫の如く増えるからな。確実に根絶やしにする必要がある」
「……チッ! 貴様、あいつらの仲間か。まさかまだ居たとは……気配は無かった筈だぞ」
「ほう、誰が【気配察知】持ちなのか分からなかったが、お前だったのか。ま、所詮は【気配察知】程度しか持っていないみたいだし、大した相手では無かったようだな。負け犬の如く逃亡する程度なのだから」
「貴様……覚悟は出来ているのだろうな? ここに居るのは置いてきたザコどもとは違うぞ」
「心配するな。俺達にとってみれば、この星の全ての者がザコなのだよ。お前達だけではないのだから、怒る必要などないぞ?」
「ふん、頭のおかしいヤツか。一気に殺るぞ」
「「「「「はっ……?」」」」」
その瞬間、透明にしていた俺の触手が、5人の護衛の心臓を貫いた。あっと言う間に致命の一撃を受けた5人は倒れ、その事に動揺したリーダー格のヤツはパニックを起こす。
「き、貴様! いったい何をした!?」
「何をもなにも、殺しただけだ。見れば分かるだろう、心臓を貫かれて死んでいるのだよ。お前の目は節穴か? それともガラス玉か何かで出来ているのか?」
「ふざけるな! 何があればいきなり死ぬなどという事がある!」
「それをわざわざ敵が教えてくれるとでも思っているのか? 随分と愚かなヤツだな。そんな事だから元居た大陸から逃げる羽目になったのだろう? 負け犬のように」
「何だと貴様!! 今すぐ死ねぇ!!!」
短剣を両手に持って襲い掛かってきたので素直に受けてやる。男の右手の短剣は心臓の位置を貫いており、男の左手の短剣は喉を貫いていた。しかし、それだけだ。
「ふん! 私が本気になれば避ける事も出来んか」
「避ける必要が無いからな」
「なに!?」
慌てて後ろに飛び退いたが、驚愕の表情でこちらを見ているリーダー格の男。必死に何がどうなっているのか考えているようだが、答えが分かる筈も無い。さて、そろそろ種明かしをするか。時間を掛ける意味も無いしな。
俺は透明な触手でリーダー格の男の足を掴んで宙に吊り下げ、両手を触手で叩いて短剣を落とさせて拘束。最後に胴体に触手を巻きつければ、逆さ吊りの完成だ。
「ぐっ! クソ!! いったい何がどうなっている!?」
「単に逆さ吊りにしただけだ。透明になっているから触手が見えんだけで、こうすれば分かるか?」
「しょく、しゅ……だと!?」
俺の触手に絡めとられている事にようやく気付いたが、既にもう遅い。後は両腕両足を切り落として連れて行くだけだ。せっかくなので殺した5人の死体はこっちで喰っておくか。
俺は更に触手を増やして5人の死体を絡めとると、顔を化け物の口にして噛みつき咀嚼する。それを目の前で見て、ようやく自分達が勝てるような相手ではない事を理解したようだ。
「な、何故? 何故お前のような化け物がいる!? 何故我々を襲う!? 何故だ!!!」
「最初にミクが言わなかったか? 金と装備を寄越せと。お前達は殺して奪っても許される存在なのだよ。盗賊などしていなければ、最強の怪物たる俺達に襲われなかったものを。全ては自業自得だ」
「我々が悪いと言う気か!? 底辺に落とされ、這い蹲ってでも生きてきた我々が悪いとでも言う気か!!!」
「そんな事は知らんな。それに盗賊の言葉など信用せんし、お前達の言い分をいちいち聞く気など無い。どうせレティーが脳を喰えば、全ての知識と記憶を奪えるのだ。お前の言い分に耳を貸す意味など無い」
「なにっ!?」
わざわざ問答などする気が無い俺は、さっさと触手で両腕両足を切り落とし、【火炎】で傷口を焼く。所詮は一時的な止血でしかなく、すぐにこいつは殺してレティーに脳を食わせる。なのでわざわざ手加減してやる理由も無い。
いちいち「ギャーギャー」五月蝿いのは、おそらく痛みが酷すぎて気絶できないからだろう。とはいえ俺には関わりの無い事なのでどうでもいい。興味も無い俺は傷口の止血が完了した段階で、リーダー格の男を連れてミク達が居る場所へと戻る。
……ミク達の元に戻って事情を説明。既にリーダー格の男の心は折れていたというか壊れていたみたいで、こちらの問いかけに何の反応も示さない。しかし反応する意味も無いので放置、最後にレティーに喰われた。
その後、少し留まって情報を精査。それが終わったレティーから話を聞く。
「どうやら今回壊滅させた盗賊団は、向こうの大陸では傭兵団だったようです。東の大陸には狩人ギルドが無く、傭兵が主に活躍しているようですね。そして戦国のような状態らしく、かなり治安が悪いようです」
「もし本当に戦国時代のような状態なら、治安が悪くて当たり前だろう。傭兵から成り上がろうとしているヤツも居るだろうし、国としても領土の奪い合いだろうさ」
「それは分かるけど、その理由は判明してるの?」
「どうやら最初は東の大陸の中央部を握っていた帝国の崩壊から始まるようです。それが大凡10年ほど前の事であり、現在はその余波が周辺各国にも飛び火した形でしょうか。結構な国が領土欲を隠さなくなっているようですね」
「成る程。それなら戦国というのもよく分かるよ、誰も彼もがこの混乱期に己の欲を満たそうと躍起になってるんだろうさ。命の安い大陸だ」
「でも行くんでしょ? こっちの大陸に残されてるのは更に西か南だけ、行ったところでそこまでの場所じゃない。むしろミクにとっては東の大陸で食べる必要があるわ」
「そうですね。大陸が荒れているというのも相当ですけど、だからこそ悪人が大量に居るでしょう。そういう人達を減らしておかないといけませんが、民心は荒れてそうですね。そういう状態だからこそ、良い人も居そうですけど」
「もし向こうで良さ気なヤツを見つけたら、またストレーナの所に連れて行こう。荒れている場所より働き甲斐はあるだろうしね」
「これ以上……居ても問題は無いか。足りてないってハッキリ言ってたし、そうなると連れて行った方が良いかしらね? ストレーナなら元ワルドー伯爵領をエイシャーダに任せているかも。あれだけのスキル持ちだし」
「【統率】と【謀略】だからな。どう考えても上に立つ者に有用なスキルだし、アレを持っている者を見抜けず皇太子を皇帝にしようとしたのだから、マヌケと言われても言い返せまい。皇帝は何も知らんが……」
「あの皇帝はそういう者でいいんじゃない? 次の皇帝もそっくりみたいだし、似合いの皇帝だと思うわよ?」
「今の皇帝陛下よりも酷いような……」
「そんな事は無いだろうと思う。何故なら皇帝の仕事の殆どは決済だよ? 暗殺なんてしてる暇は無いし、誰かと殺し合いなんてしてる暇は無い。周りは近衛が固めていて軍じゃないからね。落ち着くというか、動く事は出来ないんだよ」
「周辺国を攻めたら?」
「今の状態が更に悪化するだけだし、それで失敗したら貴族からの突き上げが凄い事になるだろうね。それに軍が後ろ盾だけど、さっき言ったように帝城の中では期待できない。そこは近衛の領分だからね。そして近衛は2度も恥を掻かされてる」
「成る程。そういう事ですか」
「次代の皇帝に思うところがあり、今の皇帝にも思うところがある。そんな所に居続ける必要があるんだよ。そういえば今の皇帝も成り上がったんだっけ? それであんなに太ってたのかな? 近衛が怖くて、それを紛らわせる為に食べていた……とか」
「あり得そうな感じねえ。ところでレティー、町の方向は分かる?」
「道に戻って真っ直ぐ南に行けば町があります。ここは町から遠くないので潜伏場所として選んだようですね」
「成る程ねえ。それじゃ行きましょうか?」
町に着いたら夜に出て掃除を始めなきゃいけないが、今は本体空間に戻るか。




