0754・盗賊団との戦い
Side:マハル
ミクさんが挑発したからか、あっさりと敵が攻めてきました。対人戦というのは常に多数を考えて組み立てる必要があるそうです。その為、ボクもロフェルさんも本体空間で乱戦というものを学びました。
本体さんの触手の先が色々な姿の種族に変わり、それらが木剣を持って襲ってくる。いったい何度叩かれたか分からないほどに叩かれ続けましたし、現に今でも叩かれます。それぐらいに多数との戦闘というのは難しいのですが、目の前の盗賊団はそこまでみたいで助かりますね、本当。
相手の攻撃を盾で流しつつ、体を泳がせて別の者の邪魔をさせる。武器でも同じく流して、別の者にぶつけるように転倒させる。すると隙が出来るので、その頭に一撃を見舞う。インパクトの一瞬だけ【身体強化】を使えば、その一撃で頭が割れて血が噴出する。
革の兜を被っているけど、そんな物は【身体強化】とドラゴン素材のメイスの前では何の役にも立たない。頭をカチ割った相手には目も呉れず、ボクは更に攻撃してくる相手の攻撃を流していく。
「クソッ! また殺られたぞ。これでいったい何人目だ! いちいち鬱陶しいんだよ、さっさと死ね!!」
「っと。そう簡単に死ぬ訳ないし、こんな程度の攻撃じゃ死ねないよ。それにしても大した事ないんだね。1人相手にここまで梃子摺るなんてさ。ボクが一番弱いんだけど、そのボクすら殺せないとは情けない」
「何だと、テメェ!!」
怒って攻撃すると短絡な直線的攻撃になる。だからそれを流して頭に一撃を加えてやれば、この通り簡単に血を噴出して死ぬ。
戦闘中に怒り狂うなんて、殺してくれと言っているようなものだよ。そもそも目を【身体強化】しているボクには全部見えているし、ミクさんのような理不尽な攻撃は来ない。
その時点でボクにとっては楽な相手でしかないね。後はダラダラとこれを続ければ、ボク達の勝利で確定だ。何より無理に戦わなくても構わないんだ。怪我さえしなければ、ミクさんかロフェルさんが援護してくれるだろうからね。
「ガキ、なかなかやるようじゃねえか。だがな、上には上が居るって事を教えてやる。こっちの大陸にはザコしか居ねえようだが、オレ達の元居た大陸を舐めてもらっちゃ困るぜ?」
出てきたのは何やら熊みたいな見た目の種族だ。ミクさんがいうところの獣人ってヤツかな? 右手に大きな鉈のような物を持ってるから、おそらくアレを叩きつけて戦うんだろう。盾は大丈夫だろうけど、ボクの腕が保たないだろうなぁ。流すか。
「そら、さっさと潰れろや!!」
右手一本で鉈を振ってきたので流そうとすると、熊の獣人は途中で止めて蹴ってきた。いきなりだったので慌てて防ぐが、その威力に吹き飛ばされてしまう。それでも冷静さを失わないのは、やはりスキルの御蔭なんだろう。
後ろに下がって呼吸を整え、再び相手を見据える。熊の獣人は面白そうな顔をしているが、ああいう事をしてくる手合いだと分かれば対処方法は知っている。ミクさんはもっとエゲツない方法を使ってくるからね。
「運良く防げたようだが次はねえぞ。次の攻撃でテメェは終わりだ」
「そう思い込みたいのかい? だったらそう思い込めばいいよ。そのお目出度い頭のまま死んでいけ」
「………こんの、クソガキィ!!!」
今度も鉈を袈裟に振ってきたけど、ボクはそれを僅かに後ろに下がることで回避する。すると熊は更に一歩踏み込んで、切り上げて来た。しかしボクはそれを盾で流して体を泳がせ、相手の左足にメイスを見舞う。
ドゴッ! という音がして相手の左足を粉砕。ボクのその一撃で相手は倒れるものの、そこで攻撃を止めるようなボクじゃない。訓練で止めようものなら容赦なく攻撃が飛んでくるからね、訓練では。
相手は左足が潰されたので、踏ん張れなくなって倒れていく。ボクは素早く後ろへとバックステップし、距離を取ったら狙いを澄ませる。相手がうつ伏せに倒れた瞬間、ボクはメイスで倒れた相手の後頭部をブン殴った。
ゴシャッ! という音がした後で血が噴出。相手はうつ伏せのまま痙攣し、そして死亡した。周りの盗賊団の連中は熊が殺された事でボクから距離を取ろうとする。
「もしかして、逃げられるとは思ってないよね? まだまだ体力に余裕はあるし、最後まで付き合ってもらうよ? 君達が全滅するまで」
「「「「「「………」」」」」」
よほど熊の獣人が死んだ事がショックなんだろうけど、呆然と口を開けてるなんて駄目だよ。それは戦場じゃ殺してくれと言ってるようなものなんだ。だから容赦なく殺させてもらう。
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Side:ロフェル
私は素早く前に出て敵の盗賊に対して矛を振るう。私が叩きつけても大丈夫な代物だ、ただし【剛体】と【身体強化】を同時に使わなければ。実はこの矛は2本目で、1本目は全力で振るった際に壊れたのよ。
前の物より柄も太くなってるし、剣身の幅も広くなってる。にも関わらず、今の私にとっては前の物よりも軽く、まるで小枝を振っているようにしか感じない。そしてその一撃で敵が吹き飛んでいく。正直に言って脆いとしか思えない。
「何かつまらないわねえ。もうちょっと歯応えのあるヤツは居ないの? どいつもこいつも吹き飛んで終わりなんだけど?」
「く、くそぉ……囲んで一斉に殺っちまえ! 幾ら馬鹿力を持ってようが、囲んじまえば敵じゃねえ!!」
「「「「「おうっ!!」」」」」
盗賊どもが無い知恵を振り絞ったんでしょうけど、随分と浅はかねえ……。その程度で勝てるなら誰も苦労しないのよ。
私は囲まれる前に右に移動し、私の背後に回ろうとする盗賊の頭に矛を振り下ろす。剣身は当たってないけど、柄が当たって頭をカチ割られた盗賊は即死した。
私は気にせず矛を持ちながら走り、手元に引き寄せつつ次の敵に接近。相手は慌てて剣で袈裟切りにきたけど、私は急に立ち止まり敵の攻撃をスカす。
そこから再び踏み込み左手で相手の首を鷲掴みにすると、圧し折ってから別の盗賊に放り投げる。それにぶつかった盗賊は倒れ、その後ろに居た盗賊に向かって私は走る。
慌てた相手よりも遠い間合いから矛を突き出し、相手の首を穿ったら素早く引き戻す。左から盗賊が襲ってきたけど、左足を後ろに下げるように半回転し矛を右下から切り上げる。それはあっさりと相手の左足を切り裂き、そいつは放っておく。
一旦距離をとって相手を全て視界に収めると、再び一気に走り出して端の盗賊へ。一撃で首を刎ねると他の者が動き出すが、その大半は気配と共に感知出来ている。それに目を【身体強化】しているので、見て判別するのは容易い。
相手の攻撃をかわして蹴りを見舞い、かわして首を圧し折る。矛を使えば頭をカチ割り、喉を穿って首を刎ねていく。残念だけど、盗賊に負けるほど私は弱くないのよね。
「なかなかの力量だな。まさかオレ様が戦う必要が出てくるとは……。ま、オレ様が出てきた時点で、お前の命は終わりだ」
「御託はどうでもいいのよ、御託は。お前も結局は同じにしかならないんだからね。さっさと掛かって来い、そして死ね」
「ハッ! 元気のいい嬢ちゃんだが、お前の命もここまでだ!!!」
黒と黄色の毛皮を持つ獣人がいきなり大きな剣で切り込んできた。おそらくはグレートソードなんでしょうけど、ミクがマハルに持たせた物より小さいわね。こいつも【身体強化】が出来ないみたいだし、この重さで限度なのかしら?。
それを素早くコンパクトに振ってくる。それなりに力量はあるし技術もあるんだけど、所詮その程度としか言えないわね。何より下半身が安定してないのよ。おそらく力任せに振っても勝ててきたからでしょうけど、技術のある相手には通用しない。
私は袈裟切りに来た相手の攻撃を、矛を右下に構えたままバックステップで避ける。そして相手が次の攻撃を始動させるより早く、剣を持つ手を穿つ。胴なら十分な力が乗らなきゃ駄目だけど、手を穿つ程度なら片手で出来るのよね。
「ギャァッ!?」
「手を刺されたら、武器も振れないでしょ。じゃあ、さようなら」
「!?」
ゴシャッ!! という音と共に、振り下ろした矛が相手の頭をカチ割った。私にとっては他の下っ端と然して違わないのよねえ。周りの盗賊どもは絶望した顔をしているけど、その程度にいったい何を期待してたんだと言いたい。
ま、後はザコどもだけど、最後まで気を抜かずに殲滅しますか。




