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0751・第1皇女エイシャーダ




 Side:ミク



 夜のうちにアルダの宿に戻ってきた私は、セリオが寝ているベッドに第1皇女とレティーを寝かせる。ついでに枕元にファーダが奪ってきた第1皇女の宝飾品などが入ったアイテムバッグを置いた。


 右腕を肉塊にしてアイテムバッグを転送したら、部屋の中に【浄滅】を使う。そして狐の毛皮を取り出して床に敷くと、そこに寝転がって目を瞑り、朝まで瞑想をしながら待つ事にした。


 …

 ……

 ………


 朝になったのでロフェルとマハルを起こし、ついでに第1皇女を起こす。このまま寝かせていてもしょうがないので、早めに第2皇女と第3皇女に会わせたい。



 「………はっ! 貴女達はいったいなんですか!? 私をどうするつもりです!!」


 「どうもしないよ。そもそも牢の中に居たのを助けてやったんだから感謝しなよ。ここはゴブルン王国のアルダギオン伯爵領、その領都アルダの宿の一室。これから朝食を食べに行くから準備して」


 「ゴブルン王国?」


 「はいはい。貴女が誰かは何となく分かるけど、準備して朝食に行くわよ。ここで喋っていても時間の無駄だからね」


 「えっ? ……えっ?」



 ロフェルとマハルに挟まれて連れて行かれる第1皇女。しかしマハルの顔を3度見するのはどうなのかな? 第2皇女であるオルトリーと似た反応なうえ、マハルも呆れてるじゃないか。


 とりあえず食堂に行った私達は小銅貨30枚を支払い大麦粥を注文。第1皇女は納得できなさそうだけど、美味しい物は太る事を教えると食べ始めた。何となくで分かってはいたらしい。特にオーク族は脂肪が付きやすいからだろうね。


 食事が終わった後、少しゆっくりしてから伯爵邸へと向かい、門番に話すとあっさりと通れた。過去に威圧されたのが未だに尾を引いているらしい。トラウマになったかな? ……ま、どうでもいいか。私相手だけみたいだし。


 伯爵邸の中を進み応接室に通されると、そこにはストレーナとエリザヴェートが居た。なので残りの2人を呼んでもらう。すぐにメイドと共に来たが、第1皇女の顔を見て驚く2人。



 「「エイシャーダ姉上!?」」


 「オルトリー! セルウェーヌ! 貴女達、無事だったのね!! 近衛が貴女達を追いかけたとは聞いていたけれど、それ以降の話は無かったのよ。だから何処に行ったか不明という事になっていて……、それがこんな所に居たなんて」


 「私達はここゴブルン王国のアルダギオン伯爵領に、一瞬で連れて来られたのです。姉上は?」


 「私は……ごめんなさい、分からないわ。気付いたら牢じゃなく、宿の寝台で寝ていたの」


 「………牢、ですか?」


 「その話を始める前に、とりあえず座ってくれる? 話し辛いから。それと適当な椅子を持ってきてくれない? 全員が座れないからさ」



 そう言うと、オルトリーのメイドとセルウェーヌのメイドが動き始めた。既にアルダギオン伯爵家の何処に何があるのか把握しているらしい。その間にアイテムバッグの説明をし、そこに第1皇女の宝飾品が全て入っている事を教えておく。



 「いつの間に……」


 「それは後でね。っと、椅子が来たから座ろうか。……さて、まずは話を始める前に私の正体をそろそろ話しておこう。完全に知っているのはエリザヴェートだけだしね」



 そう言いつつ顔を化け物にし、それを見せる事で有無を言わせず理解させた。その後に神に創られ、ゴミを食い荒らす役目を負っている事を伝えると、この場に居る全員が何故か深く納得した。



 「明らかに何か隠している感じだったし、それに帝都からいきなりゴブルン王国へ移動するなんてあり得ないでしょ。むしろ神様が関わっているとなれば納得はするわね。それで姉上を連れて来てくれたのはいいんだけど、何があったの?」


 「私は悪徳な者を食い荒らすという神命がある。そして帝都のスラムは食い荒らしていなかったから向かったの。そしてスラムが終わった次の日に皇太子を八つ裂きにした。何故なら近衛騎士団長が私達の命を狙ってきたから。それは皇太子の後ろ盾でしょ?」


 「それはそうだけど……オーレクト帝国の皇太子を八つ裂きにしたの?」


 「言われているような優しさがあったかは疑問だね。何故なら皇太子、第2皇子、第3皇子共に悪人だったからさ。もちろんマシか酷いかという差はあるけど、それでも3人とも悪人だったのは間違い無い。そして第1皇女はギリギリ悪人一歩手前だった。だから助けたんだよ」


 「悪人の一歩手前……ですか」


 「暗殺者を送るまではしてなくても、色々とやったんじゃないの? たとえそれが生き残る為でも」


 「ああ、それは確かにそうです。ですから悪人の一歩手前なんですね」


 「これから悪行を為さなければ、少しずつマシになっていくよ。悪人になってたら私に喰われるだけだ」


 「………胆に銘じておきます」


 「話を元に戻すよ。で、皇太子を殺した4日後、何故か第1皇女が皇太子を殺したとして牢に入れられた。何故かは知らないけど、あの皇帝の事だから適当なんじゃない? 策士気取りの愚か者だし」


 「まあ、そうでしょうね。誰でも良かったんでしょうけど、皇子達に比べれば姉上の方が押し通しやすかったのでしょう」


 「公爵家は既に引いていたから、今までよりも簡単だったでしょうね。むしろ皇帝の権力で好きに出来た筈よ。母も実家も無様なもの。あれだけ偉そうに息巻いておきながら、不利になったらすぐに逃げる。呆れて文句を言う気すら失せたわ」


 「その日の夜、つまり昨日の夜に私達は動き、第3皇子を殺害しつつ側室も全員殺害。第1皇女と体がよく似た死体を確保していたから、それとすり替える形で第1皇女を確保。死体は八つ裂きにして顔も潰しておいたから、おそらく殺されたと思う筈」


 「「「「「「………」」」」」」


 「側室まで殺して大丈夫? それぞ、うん? ちょっと待って! 第2皇子を殺してないの?」


 「エリザヴェートの言う通り、第2皇子は殺してないよ。何故なら一番愚かだから。アレが皇帝になったら随分と混乱するだろうね。安直である暗殺という手段を使いまくるような頭の悪さだ。すぐに内部で争いを始める」


 「そこまで分かっていて、カンガスを生き残らせたのですか……」


 「私達を招いて毒杯、そして私達に罪を着せる。そんな事をしなければ、こんな事にはならなかったのにねえ。最強の怪物に喧嘩を売っておいて、そのまま済ませてもらえるなんて甘いんだよ」


 「「「「「「「「………」」」」」」」」


 「確かにアレは余計でしたね。あんな事をしなければ、ミクさんだって適当に終わらせたでしょうに」


 「愚か者って余計な事をするから愚か者なのよ。第2皇子も皇帝も変わらないみたいだから、ちょうど良かったんじゃない? 決まるべくして次の皇帝が決まった気がするわよ?」


 「ま、それは終わった事だから良いとして、後は第1皇女ことエイシャーダの鑑定でもしておこうか。これからはここで働くんだし」


 「そうね。エイシャーダ姉上も死んだ事になっているから、平民になった私達よりも酷いし」


 「そういえばそうね。でも、死んだ事にならなかったら、私はあそこから生きて出られなかったでしょうし……。仕方のない結果だと受け入れるしかないわ」



 私が<鑑定の石板>を出すと、よく分かっていないエイシャーダにオルトリーとセルウェーヌが教えている。そして出たステータスは妹達のものとは違っていた。


 ―――――――――――――――


 <エイシャーダ・ラ・オーレクト>


 種族:オーク族

 年齢:19

 性別:女

 スキル:統率・謀略


 ―――――――――――――――



 「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


 「これ、完全に皇帝が持つべきスキルだよねえ……」


 「本物の皇帝の器がここに居るとかさ、面白すぎない?」


 「これは………」



 公爵家からの協力が碌に無かったから、力を発揮できなかったんだろうね。


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