0749・帝都で蠢く怪物
Side:ミク
アルダギオン伯爵領の領都アルダで宿の部屋をとり、5日分の代金を支払った。私がオーレクト帝国の帝都に移動するのは夜になってからなので、今はまだゆっくりとしている。もうそろそろ夕食なので酒場へと移動するかな?。
「そうね。久しぶりにゆっくり出来そうだし、私も多めにお酒を飲もうっと」
そんな事を言う機嫌の良さそうなロフェルを先頭にして、私達は酒場へと移動する。マハルが微妙そうな顔をしているけど、私はスルー。どのみち私が居ない間はマハルがロフェルの面倒を見る事になるしね。
酒場で大銅貨8枚を支払ってお酒と食事を注文し、飲みながら適当な会話をしつつ食事を楽しむ。終わったら帰るのだが、鬼神族になってもお酒に弱いのは変わらないようだ。鬼は大酒飲みっていうイメージがあるんだけどね? ロフェルには当てはまらないらしい。
肩を貸しながら宿まで運び、部屋のベッドに寝かせると、私は狐の毛皮を敷いてセリオを寝かせる。それが終わったらレティーとアイテムバッグを本体空間に移し、【座標観測】で該当の座標を調べる。
問題が無い事が分かったので2人と1匹に話した後、私はムカデになってから【転移】で移動。宿の部屋から消える。
……オーレクト帝国の帝都前に移動したが、見ている者は誰も居なかった。というより、既に夜なので誰も外に居ない。透明なムカデになってから【転移】したものの、そこまでする必要は無かったようだ。
私はすぐに帝都へと入り、スラムへと移動すると早速食い荒らして行く。もちろんファーダも出てきているので手分けして食い荒らしているのだが、流石は1国の中心。気配だけで判断しても数が多い。
それでも分かりやすい悪人しか居ないので、いちいち確認せずとも良くストレスの溜まりにくいスラムで助かる。微妙なボーダー上の者が多いなど、鬱陶しくて仕方がない。それに比べれば数が多いだけなど、喰える者が多いというボーナスステージのようなものだ。
そんなボーナスステージを満喫している私とファーダに気付いた者が出始めた。正しくは消えていく気配に気付いた者が数名出たというところだが、どうやら狩人くずれらしい。大した相手でもないので適当にスルーし、少数になったら即座に襲う。
特に密室なら一気に麻痺させて喰えるので楽に処理できる。逆に屋外にいるヤツは誰が見ているか分からないので狩りにくい。周りに誰も居なければ狩るのだが、気配が分かっているヤツは臆病なヤツが多く面倒だ。
迂闊な事はなかなかしないし、誰かが見ているような場所に陣取っていたりする。もしくは多人数が居る部屋から動かないなど、それなりに面倒臭い形で居るヤツが多い。それでも部屋の中なら麻痺させれば済むし、動いているヤツは目線が切れれば即座に喰っている。
所詮は素人の浅知恵というか、スラムから逃げられないヤツの無様な抵抗だ。仮にスラム以外の場所に逃げても、それこそ見ているヤツが少なくなって狩りやすいだけだ。スラム以外の場所で起きているヤツなど殆ど居ない。
それに、そんな動きをするヤツは目立つので追いかけやすい。なので結局は私かファーダに喰われて終わりだ。そうして気配などを把握できるヤツを喰えば、後は大した連中など残ってはいない。
今回はわざわざアリバイを作る必要は無いので、仮に夜が明けたとして食い荒らし続けて終わらせる。そもそもロフェルとマハルはアルダに居るのだし、ここでは見られている事を考えての行動をする必要がない。御蔭で気分も楽だ。
朝方になってきたものの、私達はそれに関わり無く食い荒らしていき、昼前にはスラムの全てを食い荒らし終わった。後は孤児院だが、オーレクト帝国の孤児院は工作員養成所でもあるからなぁ……。食い荒らそうか?。
「それでも良いし、止めておいてもいい。俺としてはどちらでもいいと思うが、もし喰うのであれば夜を待った方が良いぞ? 流石に孤児院はスラムには無いからな。下手に喰うとバレる。今はまず第1皇女の件が先じゃないか?」
「そういえば、それがあったか。仕方ない、まずは皇女宮に行こう」
私とファーダは透明ムカデのまま移動し、帝城の奥にある皇女宮にまでやってきた。既に第2皇女と第3皇女は居ないので、第1皇女だけとなっている場所だが……何故か前回よりも随分と反応が少ないな?。
第2皇女と第3皇女の使用人だけじゃない、第1皇女付きの者も減ってない? ……まだ第1皇女は生きてるみたいだけど、いったい何があったのやら。ちょっと調べてみよう。向こうの部屋に居るみたいだし。
「申し訳ございません。何とか撃退いたしましたが、また1名が死亡してしまいました。いったい何時まで送ってくるのかは分かりませんが、残っている者がもう……」
「分かっているわ。おそらく全てが敵なんでしょう。皇族だけじゃない、皇帝陛下も敵ね。どうやら相当に2人を殺せなかったのが癪に触るみたい」
「第2皇女殿下と第3皇女殿下は狩人の助力があり、見事に逃げ切ったようでございますから」
「そうね。本当なら私も逃がしてほしかったけど、あの時点では公爵家が許してくれなかったから無理ね。そして今は勝てないからと逃げてしまった。御蔭で私の守りは何も無い。随分と自分勝手だこと」
「まことに。まさかここまで公爵閣下が先を見ておられなかったとは……」
「所詮は己の欲で参戦しただけなのでしょう。あんな後ろ盾では負けて当然。最初から勝つ道など無かったのでしょうね。母は殺されないから良いのでしょうが、私はもはや終わりよ。あんな連中に殺されるなんて納得は出来ないけど、これも運命だと諦めるしかないわ」
「エイシャーダ様……」
もはや完全に諦めてるねえ。ま、私には関係ない事だから、さっさと出て行くか。おそらくそんなに長くは保たないだろう。邪魔な奴を殺していくのが皇族の戦争だからさ。
とはいえ、私を襲ってきたヤツの国なんだよねー……そんな簡単に予定通りにしてやるのも面白くないし、どうしたものか?。
とりあえずは城の中をうろついて色々と調べるかな。ファーダも探ってるみたいだし。
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Side:ファーダ
「ははははははは………。オルトリーとセルウェーヌは殺せなかったが、エイシャーダはそろそろ始末できそうだな。シェルマの守りも弱くなってきた。後はリューダのヤツだけだ。あいつを殺せばオレが皇帝! ふふふふふはははははは……」
もはや高笑いか。まだ殺せてはいないというのに、既に勝った後の事を考えるとは……こいつは皇帝の器ではないな。さて、第2皇女と第3皇女が本命だったとはいえ、近衛騎士団長とやらは俺達の敵になった。
既に【善なる呪い】を刻んだとはいえ、敵になった事実は変わらない。なら俺達が引っ掻き回しても良いよな? 目には目を、歯には歯を、暗殺には暗殺を。同じ事を返されるのだ、恨むなら愚かな自分を恨むがいい。
とはいえ、まずは孤児院の件をどうにかするのが先か。ついでに町中の悪人も食い荒らしておくか。そろそろ夜になるような時間だしな。ミクの方も一旦帝城から出るようだし、こちらも孤児院を潰して回るとしよう。
流石に工作員養成所の者を善人に書き換えても意味が無い。工作員養成のノウハウ自体を潰さないと、これからも下らん事をし続けるだろう。それは面倒なので、今の内に潰しておきたい。
おっと、ミクが動き始めたな。なら俺もそろそろ動くか。エイシャーダというヤツにとって、今日の俺達の動きは重要になるだろう。




