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0748・お薬の結果




 Side:ファーダ



 あれから10日ほど過ぎた。書かれていたレシピは間違いなく、シーサーペントは海岸を強襲するかの如く集まっている。更には善人に洗脳した連中に情報を流させているので、元はマーリナ公国がマリウェンに対してやった事だともバレている。


 その所為かマーリナ公国では激怒した民によって、貴族の屋敷が襲撃されたり闇討ちにあったりしているようだ。ま、俺達には何の関係も無い話だし、マーリナ公国側は収拾するのに軍を派遣している始末だ。そして平民と武力衝突を起こしている。


 マリウェン王の執務室にも薬とレシピと書類を置いてきたが、こちら側はマーリナ公国の内乱が分かっているからか傍観しているらしい。介入しても双方から怨まれるだけなので、何もしないのは正しい対応だ。国内を抑えられるなら。


 マリウェン側で被害を受けたのがクシェーロだけだというのもあるのだろう、いちいち揉め事を大きくする気は無いみたいだ。クシェーロに関しては補償などを検討しているようだが、それより早くミク達がシーサーペントを狩ってしまった。


 途中から1日に4匹に変わりペースが上がったので、昨日の時点でシーサーペントは居なくなっている。ついでにシーサーペントの肉を干物にして大量に出荷しているらしく、結構な好景気に湧いているのを見た。


 あとは海産物が戻ってくれば、クシェーロの近くの海は回復するだろう。海藻なども採ってないので、魚が好む環境は維持されている。マーリナ公国? 知らんな。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ミク



 シーサーペントも居なくなり、お金なんかも稼げたので私達は帰る事にした。そもそも北の海の海産物を食べに来ただけなのに、何故あんな下らない事に巻き込まれたのかは分からない。まあ、そこまで時間もかからずに解決したし、大した事でもないんだけどね。


 私達は朝食を食べた後で町を出ると、ある程度離れた所で【転移】を使い一気にアルダギオン伯爵家の庭へと飛ぶ。既に【座標観測】で調べているので、交換する空間に何も無いのは分かっていた。


 しかし【転移】の瞬間をセルウェーヌとオルトリーに見られていたのは計算外だった。まあ、見られていたとしても構わないのだが。



 「「「「「………」」」」」


 「【転移】の瞬間が見られるのは貴重だけど、驚き過ぎて声が出ないとは思わなかったよ。とりあえず、ストレーナは居る?」


 「え、ええ。まずはお部屋に戻りましょう。私達も政務の前の散策中だったのよ。なかなかに大変でね」



 そう言うとセルウェーヌとオルトリーが先導する形で応接室へと入る。相変わらず元皇女2人は所作がしっかりしていて美しいね。もう取れない程に染み付いているんだろうけどさ。


 私達は応接室に入った後ストレーナが来るまで待ったけど、ついでにエリザヴェートも来たらしい。一緒に休憩ってところかな?。



 「お帰りなさい。ではありますけれど、妙に早かったですね?」


 「北の海に行って海産物を食べるのが目的だったからね。【身体強化】をして走って行ったし、馬車なんかよりも遥かに早いんだから当然だよ。ついでに王都の悪人を潰したりとかしてたから、その時間は掛かってるけどね」


 「私達も聞きましたけど、まさか古の【呪魔法】が使える方だったとは……」


 「それはどうでもいいんだけど、北の国であるデヴェルヴェ王国。リザードマンの国は特に何も無かったよ。しかしその北にある魚族の国で問題が発生してた。その国はマリウェンっていうんだけど、北限の町であるクシェーロでシーサーペントが大発生中だったよ」


 「「「「「「シーサーペント?」」」」」」 「釧路?」


 「エリザヴェートが引っかかるのはそこだよね? 私も微妙にアレ? って思ったけどスルーしたよ。ツッコんでも誰も反応しないし」


 「それは仕方ないわよ。私とミクの間でしか通用しないしさ。それより魚族ってどんな種族なの? 激しく嫌な予感がするんだけど……」


 「首から上が青魚で、首から下が人間の体。肌は薄い水色で手足に水かきが生えてる」


 「おおぅ………そっちかー。マーマンとかサハギン系統かと思ったら、もっとギャグ寄りだったとは。この星、予想以上にやりおる!」


 「誰目線なのか知らないけど、話を進めるよ。そのシーサーペントの騒ぎは人為的に起こされたもので、東のマーリナ公国の暗部らしき連中が流した薬で引き起こされてた。何故かクシェーロのスラムに居たから、潰して書類と薬を押収。レシピもあったので作った」


 「いや、作ったって……薬をですか?」


 「そう。本当に効くかも分からないし、作って試してみないとね。マーリナ公国の海近くの町で試していった結果、シーサーペントの群れが押し寄せるという状態になったよ。ちなみにシーサーペントは巨大な蛇だと思えば分かりやすいと思う」


 「大きさは?」


 「私達が最初に狩ったのは胴の直径が2メートル超え、長さは10メートルを超えていた個体だった。そんな大きさのが群れているんだから、普通の海の生き物は近付かないよ。喰われるだけだしね」


 「「「「「「………」」」」」」 「予想通り大きいわね」


 「1人だけ反応が違うけど、エリザヴェートは予想出来ていたからかぁ。それも前世の記憶で?」


 「そうそう。創作物とかに出てくるモンスターだね、シーサーペントって。かなりの強さを持つ上に巨体で、簡単には倒せないようなヤツだよ」


 「ふーん。そのシーサーペントだらけになったんだけど、マリウェンの方は私達が集まったのの大半を狩ったから終わったよ。マーリナ公国は知らない。ファーダが自作自演をしたくらいかな?」


 「嫌な予感しかしませんが、一応聞いておきますね。何をやったんですか?」


 「海近くの町、その海に薬をバラ撒いたのよ。そのうえで善人に書き換えたヤツに、マリウェンに薬を撒いた事で報復を受けたんじゃないかって言わせたの。それも結構な数の連中に」


 「あー……民衆を蜂起させた?」


 「その通り。その結果、マーリナ公国軍と蜂起した民衆で争ってる。特に漁師は仕事にならないからね、薬を作ったマーリナ公国の所為だと怒り心頭。そもそも薬が無かったらこんな事にはなってないって」


 「まあ、それは正しいでしょう。薬がなければシーサーペントとやらも集まらない訳ですし、それはマーリナ公国とやらが作って使ったんですものね」


 「ええ、姉上のおっしゃる通り。そもそも自分達が使わなければ、それが跳ね返ってくる事もなかった。たとえそれが立ち寄っただけの狩人がやった事でも」


 「食べ物の恨みは恐ろしいという事がよく分かるでしょ? ファーダが随分と色々やった結果だけどさ。ちなみにマーリナ公国は元々シーサーペントの制圧にマリウェンの国軍が動くと思ってたの。その隙を突いて攻め込む予定だったらしいわ」


 「あーあー……。敵国に攻め込む筈が内戦状態に変えられたと。御愁傷様としか言えないわ」


 「そもそも私達が行ってる最中に下らない事をするからだよ」


 「ところで次は何処に行くのですか?」


 「実はオーレクト帝国の帝都、そこの悪人を潰してないんだ。だから帝都に行って悪人を潰してから、オーガの国かな? 東の大陸に行く船も出てるらしいし」


 「私達だけならミクの【転移】で帰ってこれるしね」


 「それなら、エイシャーダ姉上の事も見に行ってくれませんか? 助けてほしいとまでは言いませんが、どうなったかだけでもお願いします」


 「帝都には私1人で行くから終わったら戻ってくるつもりだし、その時になったら教えてあげるよ。流石に帝都の連中は私達の顔を覚えてるだろうからね。2人と2匹は連れて行けない。私だけなら幾らでも変われるし」


 「ま、しょうがないか。流石に私達が行くと捕まるから無理だろうね。帝都じゃなきゃ大丈夫っぽいけど」


 「それでもオーレクト帝国は危険ですから、我が国の南東にある自由国家バンダルを通って行った方が良いでしょう。あそこは種族で差別を受ける国ではありませんし」



 なら、そっちから行くかな。オーレクトの帝都が先だけど。


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