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0071・ギルドに報告




 探索者ギルドに入ったミクは、受付へと真っ直ぐ進んで声をかける。



 「ちょっといい? 聞きたい事があるんだけど」


 「はい、何でしょうか?」


 「60階のボスを始末してきたんだけど、どうしたらいい? 一応ボス熊は持って帰ってきたから出せるよ」


 「えっと、60階ですか? 少々お待ち下さい。……えーっと、60階、60階………。えーーーーっ!? 60階ーーーーー!!!」



 受付嬢の大きな声で、一斉にこちらに注目が集まる。「こういうパターンも予想はしていたけど、見事に当たったなー」と暢気に考えているミク。彼女が面倒だと思っている状況には、まだなっていない。



 「あの! えっと! ほ、本当に60階のボスを倒したんですか!?」


 「だからそう言ってるじゃない。60階に居たボス熊を倒したから、どうすればいいの? 一応、ここじゃ最高記録なんだよね? だらか受付に聞きに来たんだよ」


 「えっと、えっと………どうしたらいいんでしょう?」


 「いや、知らないよ。知らないから聞きに来たんだし、知ってたら自分で動くでしょうよ。ギルドマスターか何かに伝えてくればいいんじゃないの?」


 「あっ、そうだ!! ギルマス! ギルマスーーー!!!」



 受付嬢は、カウンターの裏にある階段から2階へと駆け上がっていった。かなり慌てていたけど大丈夫だろうか? と後ろ姿を見ながら思うミク。周囲の連中は訝し気に見てくるが、全てを無視してギルマスを待つ。


 周りの連中も視線で牽制ばかりしていてミクに話し掛けてこない。これは予想の中でも良い方の展開だと思っていると、入り口からゾロゾロと6人組の連中が入ってきた。


 そいつらは妙な雰囲気になっているギルド内が気になったのか、周囲に話を聞いている。少々面倒な連中の可能性があるなと思っていると、予想通りにミクに突っ掛かってきた。



 「おい、60階を攻略してきたとか大ボラ吹いてるそうじゃねえか。てめぇのような奴が居るから探索者全体が苦労すんだよ。とりあえず大ボラ吹きはさっさと失せろ」


 「………」


 「おい! 聞いてんのかてめぇ!! オレ様が優しいうちに、とっとと失せろっつってんだよ! 聞こえねえのか!!」


 「………」



 後ろから喚いているが、ミクはガン無視している。こうやって難癖を付けてくる奴は予想していたが、まだマシな方で助かる。いちいち揚げ足をとったりする面倒な奴を警戒していただけに、こういうチンピラ系はマシなのだ。



 「おい、てめぇ!! いい加減にしておけよ!!! 力づくで叩き出さ「やめろ!」れたくなきゃ……」



 その時2階から声が掛かり、1人の老人と先ほどの受付嬢が下りて来た。ミクは内心、「随分と遅かったね、上で下の様子を確認してたみたいだけど」と思っている。


 生命反応でしっかりと分かっていたのだ、出てくるタイミングを計っていたのは。



 「バウド、決めるのはお前ではない、攻略できたのかを決めるのはワシらギルドだ。いちいち口を挟むな」


 「チッ!」


 「お嬢さん。お嬢さんが60階を攻略したとの事だが、何か証拠はあるかね?」


 「60階で倒したボス熊の死体と、52階から60階までの地図。これだけあれば証拠として十分だと思うけど……他に要る?」


 「それが事実であれば十分すぎる証拠じゃの。まずは死体から見せてもらおう。とりあえずは解体所へ行こうか?」



 こちらを威圧しているつもりなのだろうが、ミクには欠片も通用していない。そもそも肉塊に威圧しても意味が無いうえ、ボス熊よりもチャチな威圧では話にならなさすぎる。


 ミクは威圧をスルーして老人の後をついていく。後ろから五月蝿かったバウドという奴もついてくるが、老人が居るからか揉め事を起こす気は無いらしい。


 所詮その程度なのだから、最初から絡んでこなければいいのに、チンピラというのは本当に意味の分からない連中だ。そうミクは思ってるものの、表情や態度には出さない。


 解体所に着いたので、出すように言われた場所にボス熊を出す。その巨体に驚く解体所の職人と周囲の野次馬。



 「これは凄いのう。クリムゾンベアか、それともブラッディベアか? そこは調べてみねば分からぬが、熊型の魔物などは51階まで確認されておらん。これがダンジョンの魔物ならば、間違いなく証拠じゃな」


 「けっ! どっかで手に入れてきたもんだろ、どうせ」


 「何処で?」


 「あん?」


 「何処で手に入れてきたと言う気? 王都の近くで赤い熊が出てくる所なんて無い。アイテムバッグに入れていたところで腐る。ならばどうやって運んできた?」


 「グッ……」


 「お嬢さんの言う通りじゃの。王都フィラーの近郊では、赤い熊の目撃情報すら無い。どうやって運んだのだという話にしかならん。己らで攻略してやると息巻いて10年以上、いったい何をしておったんじゃろうの?」


 「ウッ……」


 「そしてやる事は他人への嫌がらせか? あの時の小僧っ子は随分無様な大人になったもんじゃのう。情けなくて涙が出てくるわ」


 「くっそ、オレが悪かった! これでいいんだろう!」


 「当たり前じゃ、阿呆が。他人を口汚く罵っておいて許される訳が無かろう。謝罪せねば闇討ちを受けても文句は言えんぞ、相手の面目を潰しおって」


 「あ、いや……そりゃ……」


 「ここまで巨体の熊を殺せるお嬢さんじゃ、お前如きでは相手にもならん。そんな者を敵に回す愚かさを、そろそろ理解せい」


 「………」


 「とりあえず、お嬢さんには悪いんじゃが、今日すぐに買い取るという訳にはいかん。正規の値段を払うが、まずこの魔物がどういう魔物かを解剖して調べねばならんのだ。お嬢さんへの報酬はそれが終わってからじゃ」


 「まあ、それなら仕方ないね。報酬が出来たら持って来てほしい。いつになるか分からないし、その時はダンジョンに潜ってるかもしれないから」


 「分かった。お嬢さんはどこに泊まっとるんじゃ」


 「貴族街の伯爵家の屋敷。正しくは、スヴェストラ・オルネイ・カロンヴォルフの屋敷だね」


 「「………」」


 「お嬢さんは、<雪原の餓狼>殿の関係者……なのか?」


 「私はヴェスに雇われただけだよ、ゴールダームで。王都フィラーの探索者は金儲けに走って攻略しようとしない。だからそいつらに見せ付けてやってくれってね」


 「なんと……あの方がそんな事をの。まあ、お嬢さん程の実力があるなら、スカウトしてくるのも当然かのう」


 「スカウトっていうか、私はここのダンジョンを攻略し終わったらゴールダームに帰るよ? ここ程度のダンジョンで満足なんてしないし、あくまでも攻略するという依頼で雇われてるだけだからね」


 「ほっほっほっほっ、豪気なお嬢さんじゃ。探索者はこうでなくてはのう。何処かで小さく纏まった情けない奴ではなくてのー」


 「くっそ! いちいちオレを引き合いに出すんじゃねえ!!」



 バウドという人物は怒りながらギルドの建物へと入って行った。その後に老人もギルドの方へと歩くので、ミクも続く。どうやら相当良い形で終えられそうである。


 ヴェスの情報を出すかどうかは悩んだが、一番良いタイミングで自然に出せたであろう。交渉事など碌にした事もないミクなのだ、及第点はとれている。


 ギルドの中に入った老人は、ミクに「ギルドマスターの部屋までついてきてくれ」と言い、受付の裏へと移動。ミクもついていき階段を上ったら、一番奥の部屋へと進む。


 老人が扉を開けて中に入ったので、ミクも中に入り、言われたソファーに腰を下ろす。おそらく確認したいのは地図の事だろう。



 「お嬢さんは地図を描いたと言っていたが、見せてもらってよいかの」


 「いいよ。そもそもギルドに渡す前提で描いておいた物だしね。流石に他の探索者を使って調べないと、本当かどうかは分からないでしょ」


 「分かってくれて助かるわい。自分達が行ったのだから、事実に決まっておるとか言い出す輩が多くての。御蔭で嘘の報告が多かったのだ。まあ、そういう奴等は纏めて登録証を剥奪したがの」



 お前も嘘だったら剥奪するぞ、という脅しは、肉塊には全く通用しない。無意味である。


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