0742・シーサーペント狩り
Side:マハル
ミクさんに頂いたグレートソードという大きな剣。これを使うのは大きなモンスターを狩る時だと聞いている。大きな相手となると突き刺す武器は範囲が小さくて使えず、殴る武器は効きが悪くて使えない。なので残るのは斬撃武器だけなんだそうだ。
何度も攻撃して切り裂いていき、そうやって打ち倒す。そうしなければいけない程、大きなモンスターというのは厄介で強いと聞いていた。そして実際に大きなモンスターを目の前にすると、その通りだとしか思えない。
そんな中、狙いをつけて当てようとするんだけど当たらない。シーサーペントが暴れるし、その暴れ方も大きいんだ。その所為で首の所が特に大きく振られ、狙いが定まらない所為で振っても空を切るだけになってる。
どうすれば当たるんだと思うも、ボクとしてはチャンスが来たら振るしか出来ない。噛みつきに来ようとする事もあるけど、そうなった時にはミクさんが引っ張ってくれている。その御蔭でボクもロフェルさんも噛みつかれてはいない。
口の中には大量の牙が見えたけど、あんなので噛みつかれたら磨り潰されて死ぬ。手前は鋭い牙だけど、奥の方は小さな鋭い牙ばかりだった、あの部分で噛み千切った肉を細かく切り裂いて潰すんだろう。恐ろしい「ドゴンッ!」モンスターだ。
「よしっ! 当たったぁ!!」
ロフェルさんがシーサーペントの頭をブン殴り、その一撃でシーサーペントは倒れてピクリともしなくなった。一撃で気絶したのかな? とんでもない威力みたいだし、あの金棒って武器は重さがおかしい。ボクが【身体強化】しなきゃ持てないくらいに重いんだよ。
前に持たせてもらった事があるんだけど、素の力じゃ重すぎて持ち上げる事も出来なかった。長さが1メートル50センチ、先の太さが20センチというとんでもない棍棒。手元から先に向けて太くなっていて、先のほうにはトゲが沢山付いている。
見た目だけで危険武器だけど、それを自在に振り回しているのは本当にとんでもないと思う。ボクには絶対に無理な事なので、素直に凄いなとしか思わない。ボクは魔法を教えてもらっているし、そっちの方が性に合ってるかな?。
と言っても、今はまだロフェルさんの方が上手いので何とも言えないけど。
「おっ、上手くいったじゃない。マハル、その調子で首を切り落としてしまいなさい。私は金棒のままだから、起きたらまたブン殴るわ」
「分かりました。しかしミクさんは手伝ってくれなさそうですね」
「そもそも海に入って刺してきてくれてるんだし、引っ張るのも手伝ってもらってるんだから、せめてこっちは私達で何とかするべきでしょ。でないと大して役にも立ってないって事になるわよ」
「そうですね。それにミクさんが縄を持っているので、絶対に逃げられない訳ですし」
「ええ。それにミクがこっちに来ないって事は、このシーサーペントはまだ死んでないって事よ。死んでたらミクは【生命感知】で分かる筈だからね」
「確かに。じゃ、今の内に急いで倒しましょう!!」
何度も切るけど、上手く切れない事が多い。おそらく切る動作に失敗してるんだと思う。改めてミクさんの教えてくれた事を思い出しつつ、ボクは切る練習をシーサーペントでする。ある意味で贅沢かもしれないけど、逃がしたらと思うと大変なんだ。
そんなプレッシャーを受けつつも、ボクは思い出しながら体を動かし切りつけていく。首が十分に切れれば血が噴き出す筈だから、まだ表面しか切れてないんだろう。シーサーペントの体の表面がヌルヌルしているのも影響しているのか、なかなか切れてくれない。
ボクは構えて集中し、【身体強化】を使って全力で切る!。
「はぁっ!!」
何が良かったのか分からないけど、渾身の一撃はシーサーペントの首を深く切り裂き、一気に血が噴出し始めた。ボクは慌てて距離をとるも時既に遅く、結構な血を浴びてしまい最悪な状況に。
「あはははは、上手く回避しなきゃ血を浴びてしまうのは仕方ないわよ。ここまで大きいのじゃ血の量も多いし、当然噴き出してくる血の勢いも強いものになるわ。想像してなかったか、切れなかったので焦ってた所為ね」
「それはあるかもしれません。ドラゴン素材で作られているのに、あんなに切れないなんて想像すらしていませんでした。おそらく表面がヌルヌルだった所為だと思いますけど」
「ああ、それで切れなかった訳ね。妙に苦戦してるっぽいから変だなとは思ってたけど、ヌルヌルで切れなかったとは思わなかったわ。私の方はブン殴れば済んだから楽なのよ。もしかして頭を潰した方が早い?」
「どうなんでしょうね? 綺麗に倒した方が高値で売れるって言われましたし、それなら首を切りつけて血を出した方が良いと思います。それに、慣れれば素早く切れるとは思うんですが……」
「おつかれー。とりあえず【清潔】と【聖潔】を使っておくよ。それで綺麗になるだろうしね。レティーは血抜きをお願い。私も綺麗にしてから服を着るから」
「分かりました」
「倒すのに時間が掛かったけど、あれはマハルが慣れてなかったからだろうね。表面がどうこうよりも、剣自体で切る事に慣れてないのが理由だよ。今までメイスで戦ってたから当然なんだけどさ」
「やっぱりそれが影響してるわよねえ。ちゃんと切るという動作をしなきゃいけないし、何よりそれを動く相手にしなきゃいけない。メイスみたいにブン殴れば済む武器と、正しく切らなきゃいけない武器は同じじゃないし」
「まあねえ。とにかく何回も戦って慣れるしかないね。誰しもがそうやって強くなっていくんだよ、それより血抜きが終わったら運ぶから準備を手伝ってよ」
「運ぶのはいいけど、準備って?」
「【清潔】の魔法でヌルヌルを綺麗に落とすんだよ。そうしなきゃ持った時に汚れるじゃん。ちなみに戦闘中にヌルヌルをそうやって落として切るのは無しね」
「えっ!? 何故ですか?」
「それじゃ練習にならないからだね。たとえヌルヌル付きでも、技術で切らなきゃ上達したとは言わない。シーサーペントが居る間は剣の扱いを学ぶチャンスだから、しっかりと修行をしてもらうよ」
「わ、分かりました……」
あの大きなシーサーペントを相手にして、やる事が剣の練習かぁ。とはいえ今の内に練習しておかないと、大きな魔物相手にしかボクは剣を使わないから練習が出来ない。もちろん小さな相手に使ってもいいんだけど、わざわざ使う意味も無いんだよね。
そもそも刃が1メートル60センチの剣って大きいよ。持ち手が40センチで丁度2メートルだけどさ。それにしても大き過ぎる。コレを振り回すって大変だし、ちゃんと切る動作をするのも大変だ。
それでも大きな相手には有効な武器だから、頑張って練習するしかない。
改めて気合いを入れていると、血抜きが終わったらしいので【清潔】を使っていく。それが終わったらボクが一番前の頭を持ち上げ、ミクさんが胴体の中ほどを持ち、ロフェルさんが尻尾の近くを持つ。
当然長いので途中を引き摺ってしまうけど、前に進むのは難しくない。その理由は、縄がセリオに括り付けられていて、狩人ギルドへと引っ張ってくれているからだ。
どちらかと言うと、ボク達は持ち上げて運ぶという立場かな。セリオが凄い力で引っ張ってくれるから本当に助かるよ。今度は海から出す際にも引っ張ってほしい。おそらく凄い速さで陸に揚げられると思う。
ここから町中へと入って行くから何か言ってくる狩人が居るかもしれないけど、何とかボクが邪魔者を排除しないとね。奪おうとするヤツが居るかもしれないし。




