0741・クシェーロ到着
Side:ロフェル
私達は王都を出発し3日、ようやく北限の町であるクシェーロにやってきた。町ではあるんだけど、やはり壁は高くて分厚い。王都ほどではないにしても、この町が儲かっているのがよく分かる。
そんな町の門番に登録証を見せて中に入るも、町の人達の表情は完全に沈んでいる。聞いていた通り、大量にシーサーペントとやらが出ていて海産物が獲れないのだろう。そんな雰囲気の町中で情報収集し、まずは宿に行って部屋を確保する事に。
一ヶ月分の3人部屋を確保したら、シーサーペントの情報を貰いに狩人ギルドの受付嬢のところへ。そしていつも通りミクが中銀貨を渡す。
「ここクシェーロにシーサーペントが大量に来たと聞いたんだけど、その事を詳しく教えて」
「シーサーペントは数十年に一度大発生するのですが、前回は5年前なのです。今回の大発生は非常に早く、前回から海の生き物が回復しない内に発生している為、既に根こそぎやられている可能性が高いですね」
「つまり海の中の食べる物が全く無い? シーサーペントに食べられて?」
「はい、おそらくそうだろうと言われています。今までの過去の記録を引っ繰り返しても、こんな短い期間でのシーサーペントの大発生は無く、ギルドとしても困惑するしかないのが現状です」
「狩人に依頼を出したりしてないの? シーサーペントを狩る依頼」
「出してはいるのですが……シーサーペントの数が多いうえ、相手は海の中なのです。簡単には陸に揚げられませんし、倒すのも難しいとしか言えません。なので殆ど減らせていないと聞いています」
「つまり今もシーサーペントは町の近くの海をうろついていると?」
「はい。シーサーペントが居なくならない以上は海に出て漁をする事も出来ませんので、このままでは町は衰退の一途を辿ってしまいます」
「とりあえずシーサーペントを討伐する依頼を請けるかな? 1体で幾らぐらい?」
「傷が少なく綺麗なシーサーペント、それも1体丸々ならば小金貨1枚と聞いています。平均は大銀貨1枚から2枚です。やはり暴れ回る上に討伐するまでに傷だらけになるそうですので」
「成る程、理解した。ありがとう」
ミクはそれだけ言ってギルドを出たので、私達も後に続く。そのまま雑貨屋に行ったミクは、売られていた縄を幾つか購入して店を出る。そして町の北側に向かうと、私は初めての海を見た。
何か妙な匂いがするものの、特に嫌いな匂いじゃない。そんな香りを嗅ぎながら見ていると、魚族の男達が縄を引っ張っている。いったい何をしているのかと思ったら、大きな蛇のようなものが海の方から引っ張られてくる。
あれがシーサーペントかと思うも、大きさがおかしい。あまりに大きくて驚くも、ミクはシーサーペントの大きさを目で測っていた。胴の直径は1メートル50センチ、長さは約8メートルだそうだ。
そんな巨体が暴れ回り、魚族の男達が引っ張っている縄が左右に大きく振られる。それでも先端に刺さっている物が抜ける気配はなく、男達は負けそうになりながらも踏ん張る。
暴れ回る力が弱まったら引っ張り、そんな格闘をする事およそ15分。やっとシーサーペントが陸に揚がってきた。結構な巨体だからか陸の上ではそこまで動きはないものの、噛みつこうとしたりはしている。
どうやらミクが言っていた通り体が大き過ぎるからか、陸の上ではそこまで大きな力を揮えないらしい。つまり海から揚げるのが大変なだけで、陸に揚げてしまえばそこまでの敵じゃないみたいね。
そしてそれならやりようはある。魚族の男達は砂浜の一部で戦っているけれど、私達はそこから離れた場所に行って準備を始める。ミクはいつ作ったのか分からない鉄の槍をアイテムバッグから取り出し、そこに縄を括りつける。
ミクが取り出した鉄の槍は返しが深くついており、更に石突が無く輪になっている。そこに縄を括りつけて引っ張るようだ。♂みたいな形ね。
縄を幾つも取り出しては端と端を結んで長くし、ミクはアイテムバッグとレティーとセリオを砂浜に置く。そして服を脱いで下着姿になると振り返った。
「今から私が海に入ってシーサーペントに突き刺してくるから、刺さったら引っ張って陸に揚げて」
「ボク達2人でですか!? 向こうは何十人と居ますよ? 流石に2人では【身体強化】があっても足りないような……」
「誰かさんは【剛体】まで持ってるから余裕でしょ。それに私も戻ってきたら引っ張るしね。ま、とりあえず縄はしっかり持って、シーサーペントがいきなり引っ張る可能性があるから。そしたら槍ごと持っていかれる」
「分かりました」 「了解」
そう言ってミクはさっさと海に入っていった。大丈夫かしらと思うも、そもそも呼吸の必要が無いんだから溺れる事も無いのよね。色んな意味で最強なのを改めて理解するわ。流石は!?。
「来た! 引っ張るわよ!!」
「はい! 分かりました!!」
縄を握っていたけど、いつ力を篭めていいか分からなかったから、いきなり引っ張られて海に持っていかれるところだったわ。思っている以上に力が強いけど、【身体強化】を舐めてもらっちゃ困るのよ。
私とマハルは縄を引っ張りながら後ろへと進んでいき、シーサーペントを海から引きずり出していく。少しずつ少しずつ引っ張っているとミクが戻ってきたんだけど、開口一番やり方が悪いと言われた。
「引っ張り方が悪い。2人居るのに力が合わさってないから引くのに苦労するんだよ。せーの! って言葉の「の」の部分で力を入れる。分かった? タイミングを合わせて引っ張る。それじゃ、いくよ。せーの!」
ミクが言う様に「の」のタイミンゲで引っ張ると、3人の力が合わさったからか、一気に後ろに進んでしまい倒れてしまった私とマハル。慌てて立ち上がったけど、ミク1人でビクともしていなかった。
流石は最強の怪物と思いつつも、素早く立ち上がった私達は再び縄を握って準備を整える。
「じゃあ、行くよ」
「「「せーの!」」」
再び引っ張りシーサーペントを陸に引っ張り揚げていく。3人の力が合わさっている以上はシーサーペントに抵抗できる筈もなく、海から揚がってきて姿が見えたのは向こうのシーサーペントより大きかった。
胴の直径は2メートルを超え、長さは10メートルを超えている。ここまで大きいとなると、間違いなくミクは選んで刺してきているわね。それでも私達の方が力が強い為、シーサーペントは抵抗空しく陸に引き揚げられていく。
そして全てが出きった辺りでミクが引っ張り続け、その間に私とマハルがシーサーペントを仕留める。その事は海に来る前に決まっていた。
鬼神族になって私が貰った武器、それは金棒。ミクが言うにはガイアという星では、鬼というのは金棒を持っているものらしい。
なので私はこの武器でシーサーペントを殴る。出来るだけ頭をブン殴れと言われてるから殴りたいんだけど、暴れるからなかなか狙いが定まらない。そんな中、マハルが横から攻撃を始めた。
マハルが持っているのはグレートソードと言われる大きな剣。ミクはマハルの装備に関してはグレートソード以外は元のままにしている。つまりはメイスと盾だ。理由はそれが一番安定するからと言っていた。
そもそもマハルはあまり近接戦闘が得意じゃない。もちろん私と比べてなので、狩人になって半年の者と比べたら十分に上手いんだけどね。とはいえ、その程度で納得するマハルじゃないし、私達も更に教える気だ。
そのマハルにグレートソードを渡したのは、大物用の武器はコレで行くと決めたからであり、決めたのはもちろんマハル自身。なので元気に横で剣を振っている。……当たってないけど。




