0740・王都スラムの壊滅
Side:ファーダ
この4人組が会話に夢中な隙に! ………どうだ、喰った事に気づいたか? どうも気付いて無いっぽいな。となるとこの調子で喰っていってもおそらく気付かないだろう。ならばどんどん喰っていくか。気付いたら周りに誰も居ない状態にしてやる。
俺が周りの奴等をどんどん食べているにも関わらず、未だ暢気な4人組は海の話を夢中でしている。どうやらシーサーペントの事のようだが、娼館にも入らず何しに来たんだよ。周りの客引きも若干睨んでるぞ。
客じゃないのに何しに来やがったって感じだろうな。俺もそのイラ立ちはよく分かる。善人4人組が空気を読まない所為で面倒な事になってるからな。出来ればさっさと表に戻ってほしいんだよ、客引きにとっても邪魔でしょうがないんだし。
流石に客引きはまだ殺せない。娼館が多いのでその関係は明日だ。入った客と共に喰らうしかないな。善人なら眠らせるだけで済ませる。その形で処理するのがベストだろうし、ミクも本体も同じ意見だ。
今日一日で何処までやれるか……とにかく頑張るしかないな。
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Side:ロフェル
昨夜ミクとファーダがスラムの悪人を食い荒らしに行ったらしいけど、どうやら王都のスラムは娼館が多いみたい。そして善人も客として来る所為で、なかなか進まなかったんだって。あと、魚族の男女の判別は顔では無理って言ってる。
「いや、どうみても魚じゃん。鯵なのか鯖なのか鰯なのか秋刀魚なのか知らないけどさ、完全に青魚の顔なんて判別つかないって。むしろ胴の方に違いがハッキリ出るんだから、そっちの方を見て判断するしかないでしょ」
「まあ、魚族の男って大抵のヤツが下着のみでうろついてるわよね。暑いのかもしれないけど、それなりに鍛えられた体をしているから分かりやすいわ。女は服を着てるもの。男は殆どのヤツが上半身裸だけど」
「分かりやすいから良いですけど、確かに顔を見ても同じにしか見えません。魚は川にも住んでますからボクも見た事はありますけど、まんま魚の顔ですから最初見た時には唖然としましたよ」
「私もそうだし、幾らなんでも魚族なんて種族がこの星に居た事が驚きよ。何だかんだといっても星1つ、広いわねえ。私の知らない事がいっぱいあるし、私の知らない種族もいっぱい居る。これだからこそ旅に意味があるのよ」
「旅をしなければ見る事も出来ませんでしたし、確かに自分の目で見る事は大事だと思います。多分ですけど人伝に聞いても信じなかったでしょう、あんな姿の種族が居るなんて。にも関わらず普通に喋ってますしね」
「あの口で何故普通に発音できているのかは謎だけど、出来ているし聞き取れるんだから考えなくてもいいでしょ。考えたら思考の渦に嵌まり込みそうよ」
「それはいいとして、まずは朝食に行こうか?」
ミクがそう言うので、私達は部屋を出て食堂に向かう。流石に外では魚族の事については喋れない。何が彼らを激怒させるか分からない以上は、迂闊な事を話す訳にもいかないしね。特に首から上の魚の部分。
この魚族に比べたら、リザードマンの方がよほど全身がしっかりしてると思う。何で胴が人間に近いのかサッパリだし、どういう風に生まれて育つのかとか、色々と考えると頭がおかしくなってくる。それぐらい意味の分からない生き物にしか見えない。
食堂で大麦粥を食べたら散策するんだけど、売っている物には期待していない。ここは王都だけど内陸なのよ。海は遠いし、海産物は干物。それでも海産物が見られるだけマシとは言えるけどね。でも、干物じゃ納得いかない。
武器や防具も微妙に変わってるけど、それは水かきが付いた手でも持ちやすいように工夫されているだけ。それ以外はゴブルン王国やオーレクト帝国と変わらないので、見ていても目新しさは無い。
結局、適当にミクが干物を買ったら宿に帰ってきた。買い物に出た甲斐が無いわねえ。
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Side:ファーダ
昼間に買い物に出たらしいが、見るべき物は特に無かったそうだ。ガイアであれば割と変化があった筈だが、この程度の距離ではそこまで変わらないのだろうか? しかしロフェルもマハルも【身体強化】して走るから速いし、ゴブルン王国から少なくとも1000キロは離れている筈だが……。
その割には大した変化が無いという事実をどう考えるべきか。それとも王都は変わらないのか、その辺りは北限の町に行ってみない事には分からんな。魔境も無いし、他の町に寄る意味も薄いだろう。唯でさえ厳しい環境で悪人も生きにくいんだ。
王都のスラムを潰したら、次は北限の町に進んで問題ない。それより今日も人数が多いな。外に屯しているのも多いが、悪人は逃さず先に食い殺す。それが終わったら娼館に侵入だ。
窓から入った俺は片っ端から殺害していき、善人が居たら眠らせてから対処する。<眠りの香り>が効くのは楽だし、注入すればあっと言う間だ。意識を失うように倒れて寝るので、起きても寝たという記憶しかあるまい。
そもそも俺の触手の針は非常に細いので、人間種に痛みを与えるようなものでも無ければ感触すら与えない。そして注入された香りは体の中に一気に拡散する。それがあっと言う間に昏倒させ気を失わせるわけだ。
そうやって朝まで眠らせつつ、悪党どもはどんどん殺害していく。娼婦の中にも善人が居たので、おそらく借金のカタか何かで連れて来られたのだろう。スレていないので善人なんだろうが、いつしかスラムに染まって悪人になる。
レティーが言うには、大半は客の金を盗んだりした程度のようだ。それでも盗みは盗みだがな。しかし中には集団で暴行をし、他の娼婦の売り上げを奪ったりしている者も居たらしい。当然見て見ぬフリをされている。
そういうヤツは根こそぎ食い荒らしているし、そもそも奴隷契約の書類は俺が全て破棄する。なので善人の連中は好きに生きられるだろう。急に自由になったからといって、精々できるのは逃げるか表の酒場で働くくらいだ。
それでもきちんと売り上げが得られるだけマシだし、酒場の方が儲かるのだから十分に生きていけるだけ稼げる。こんな所に押し込められる女は借金以外はあり得ないからな。自ら進んで地獄に行くヤツは居ない。
さて、ミクとの分担で一気に食い荒らしたが、そろそろ終わりそうだ。長かったが、それでも朝になるまでに済んでヤレヤレといったところか。場合によっては終わらない可能性すらあっただけに、本当に安堵した。
よし、これで終わり。後は本体空間に帰るだけだ、貨幣も回収したしな。
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Side:ミク
妙にスラムに屯する連中が多かったけど、何とか昨夜の間に終わらせる事が出来た。それにしても善人や普通の連中が溜まるスラムというのは勘弁してほしい。あんな邪魔なのが大量に居るスラムなんて初めてだったよ。
おかげで随分苦労させられたけど、同時に善人が居ても上手く対処すれば喰えるという事も分かった。ついでに香りも上手く使えば役に立つというのも学べたし、経験的には悪くなかったのが唯一の良かったところかな。
2人も準備が出来たみたいだし、そろそろ食堂に行って朝食を食べるか。次に行くのは北限の町クシェーロ。そこに行ってシーサーペントがどういう生き物か確認し、駆除できるかどうかを調べよう。
狩人ギルドに依頼があったら請けようかな? たまには狩人の仕事をしておかないと忘れそうになる。それに仕事をしてなさ過ぎて登録証を取り上げられても困るしね。




