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0737・次なる国へ




 Side:マハル



 アルダギオン伯爵の屋敷を出るとお昼ぐらいだったので、先に食事をしてから北へと出発する事になりました。ここ領都アルダを歩いているんですけど、周囲を見てもゴブリンしかいないという初めての光景を目撃しています。


 これはこれで新鮮ですけど、ゴブリン族ってびっくりするぐらい背が低いんですよね。確かに言われる通りオーレクト帝国ではゴブリンは下に見られてるんですけど、コボルトと比べて下に見られている訳では無いんですよ。



 「それってどういう事? ゴブリンとコボルトではゴブリンの方が上って事なの?」


 「そうです。もちろん良い意味では無いんですけど、それでもゴブリン族の方をこう……愛玩する方は貴族の中に居ると聞きます。その……オーク族とゴブリン族では子供が出来ませんので」


 「あー……そういう事ね。それに小さいのが良いってヤツは、どの種族にも関係なく居るもの。マハルの言ってる事はそういう事でしょ?」


 「ええ、まあ……」


 「ゴブリンの女性って120センチから130センチくらいでしょ? 人間だと年齢は別にして、身長だけだとペドフィリアの領域だよね。ロリコンを超えてると思う」


 「??? ……何ですか、それは?」


 「ロリコンとはロリータコンプレックスの略称で、そもそもは少女などに対して恋愛感情を抱く者を指す言葉だったみたい。徐々に性的な意味も持つようになったらしいけどね。それとは違ってペドフィリアは完全に少女や幼女に性的衝動を覚える者の事だよ」


 「……たしかにボクが言っているのはロリコンではなくペドフフィリアの方ですね。ただ、ゴブリン族の方は成人年齢でも背が低いですけど……」


 「けどオーク族からしたら、完全に少女や幼女を相手にしているようなものよね?」


 「……………でしょうね」



 これ以上はこの話題を続けないでほしいんだけど、と思っていたら食堂に来た。さっさと話題を変えて、普通の話にしよう。



 「マハルが嫌そうだから話題を変えるけど、北の国に行くのは良いんだけどさ、海があるって言ってたよね? って事は、北はそこで途切れてる? それとも内海みたいなものなの?」


 「ごめん、私も行った事は無いから知らないし、そもそも海っていうのを見た事が無いのよ。だから行きたいっていうのもある」


 「ボクも知りません。オーレクト帝国には海なんてありませんし、海があるのはオーレクトよりも南の方の国です。ですがそこは高い山に隔てられていて行けないそうです。オーレクト帝国から南東にぐるっと回ればオーガの国があるらしく、そこから東の大陸への船が出ているとは聞きました。本当かどうか知りませんけど」


 「へー……本当だとしたら、東に大陸があるのねー。それはそれで楽しみだけど、まずは北の国に行くのが先よ。ミクは海っていう所で美味しい物が獲れるって言ってたし」


 「まあね。何かしらは獲れると思うよ? ただ海のモンスターも多いだろうし、簡単には陸に揚げられないだろうけどね」


 「なんで?」


 「ちょっと難しい話をすると、海では陸と違って浮力という浮く力が働いているの。だから陸よりも生き物が大型化しやすいんだよ、何故なら体の力が弱くても体が浮くから。だから海のモンスターにも大型のものが居る筈」


 「大型かー、それが美味しいなら言う事は無いわね。美味しければ!」



 おっと、大麦粥が来たので食べよう。ここまで飽きもせずに食べられてるからいいけど、飽きてきた時にキツくなりそうな気もする。とはいえ美味しい訳ではないんだけど、不味くもないんだよね。だからこそ毎日でも平気なんだけどさ。



 「流石に海のモンスターなんてのは私も詳しくないんだよ。1つ目の星でも2つ目の星でも海には行かなかったから、戦った記憶が殆ど無い。場所も場所だし、私も行ってから考えるしかないかな?」


 「行き当たりばったりって感じ? でもそれが旅なんだし、それで良いんじゃないの。そっちの方が楽しそうだしさ」


 「楽しそうか楽しくなさそうかで言えば、楽しそうですけどね。ただ、それでどんな危険があるか分からないのが怖いです。冗談でもなんでもなく、大型のモンスターって相当に危険だと思いますし」


 「まあ、ミクは何ともなくても、私達が助からない可能性はあるものね。そういう意味では確かに危険はない訳じゃないんだけど、そんな事を言ってたら何処にも行けないわよ」


 「行かないとか危険だとか言ってる訳じゃなくて、海に近付くのは気をつけましょうって事ですよ? 特に大型のモンスターですけど」


 「まあ、それはね。……さて、食事も終わったし、そろそろ出て出発しましょうか? ここから北なら、まずは公爵領を目指すわよ」



 ロフェルさんはゴブルン王国出身だから、何となくで地理が分かるんだろう。ボクは詳しく知らないけど、ミクさんが居る以上は遭難とかしないだろうし、仮にしても必ず生き残れる。


 そう考えると知らない土地に行くのも楽しみな気持ちの方が上回る。ちょっと危険かなとも思ったけど、そこまで危険だと思わなくても大丈夫かな? ロフェルさんはノリで決めるところがあるのがね……。


 そんな事は口には出さず、ボク達はゴブルン王国を北に走って行く。それなりの速さで走っているからか驚かれるのはいつもの事だけど、周りの驚愕なんて無視して走りぬける。どうせ関わらないんだから、驚かれる程度はどうでもいい。


 ボクも最近そう思えるようになってきたし、図太くなってこれたんだろう。そうなった方が良いとも言われたし、色々と考えても無駄な事は、結局考えても無駄だって言われたからね。


 そんなことで悩むのは無駄だって事なんだろうし、今はボクもそう思える。何か事が起きてから対処すればいいだろうし、先を考え過ぎていると何も出来なくなっちゃうしね。


 こんな思考をするようになったのも体が変わってからだから、おそらくボクに使われたっていう<理の樹>が影響してるんだと思う。とはいえ悪い影響には思えないし、ボクとしては色々と助かってる感じかな。


 今までだと考えすぎる部分があったんだけど、それが良い感じに減ってる。もしくは前向きに考えられるようになったかな。っと、走るのに集中しよう。ちょっと遅れてる。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ミク



 領都アルダを出発してから3日、ようやく国境までやってきた。それでも早いのは分かっているけど、私達が走った割には時間が掛かったと思う。理由としては曲がりくねった感じで進まなければならず、真っ直ぐ進めない道の所為だ。


 それでも国境まで来たのだから、ここからは新たな国だ。マリウェン王国という国なのかどうかは知らないけど、まずは村か町に行って情報収集しないといけない。


 国境近くの村で話を聞くと、どうやら道なりに真っ直ぐ進むと違う国の村があるらしいとは聞いた。どうも北の国が攻めて来る事はないらしく、国境に砦も置かれていない。辺境伯は何をしてるんだと思うも、私達からすれば通るのに楽なんだよねえ。


 なんだか微妙な感じだと考えていたら、早速村を見つけた。まずは近付いて敵意が無い事をアピールしつつ、食事が出来る場所があるか聞く。本当のド田舎だと食堂すら無い事があるんだよ。



 「こったら村に食堂なんてもんはねえべや」


 「そうなんだ。適当に離れたら煮炊きすれば良いわね。ところでここの国って何ていう名前なの?」


 「こん国は、たんしか……で、デヴェッベ国とか言うんじゃなかったっぺかな?」


 「で、デヴェッベ? なんだか喋り難い国ねえ。それはともかく、私達はマリウェン国を目指してるんだけど、その名前の国は聞いた事ある?」


 「マリ、ウェン? ………おー! 海のもんば獲れる国じゃろ。知っとるべ、そら北の国だって言うとっただよ」


 「成る程。このデヴェッベ? という国より北に行けばいいのね。ありがとう」


 「ここから更に北の国ですか。海の美味しい物を食べるには遠そうですね」


 「仕方ないわよ。我慢、我慢。それに移動してればいずれは着くでしょ」



 教えてくれた村人には情報料を渡し、私達は更に北へと走る。ここから更に時間が掛かりそうだけど、一度行っておけば【転移】で移動できるから頑張ろう。


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