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0736・これまでの事 その5




 Side:ミク



 「これは、また……。いったい何と言っていいのか分からないわね。種族名に神とか入ってるってマジでヤバいんじゃないの? っていうか鬼神ってシャレにならないと思うんだけど。だって鬼の神様なんだよね?」


 「まあ、そうだね。とはいえエリザヴェートが想像するような鬼じゃなくて、神霊の方なんだよ。エリザヴェートが想像してるのはどうせアレでしょ、赤とか青の皮膚で金棒持ってるヤツ」


 「そういう言い方するって事は違うのね?」


 「そうだね、いわゆるヤクシャとかヤクシニーと言われる方だよ。毘沙門天の眷属だったりする鬼神だね。元々は森林の神霊だったと思うけど、あんまり私も詳しい事は知らない」


 「ふーん。毘沙門ってアレでしょ、船に乗ってる人」


 「確かに七福神の一柱だけど、私より適当にしか覚えてないね?」


 「私達にはよく分かりませんが、ロフェルとマハルがとんでもない種族である事は分かりました。そのうえ神様が関わって新しい種族になったとは……。本当に大丈夫ですか? あんな事があったから心配です」


 「あんな事?」


 「マハル。ストレーナはロフェルが殺されるのを目の前で見たんだよ。そして実際に一度死んでる。だからロフェルに対しては少々気持ちが入るみたいなんだ」


 「ああ。そんな事があったのであれば、そうなるのは当然でしょうね。目の前で死んだ方が復活ですし、あり得ない事が起こったという事でしたら、過保護になるのも仕方ないと思います」


 「私としては、そこまで気にされなくてもいいんだけどね。今は生きてるし、死んでた間の事をそもそも知らないしさ。何だか私の知らないところで色々動いてたんだなーってくらい」


 「死んで、復活した……?」


 「どういう事なのかしら?」


 「まあ、そういう理不尽な事が出来る方が、ミク殿の知り合いにはいらっしゃるという事です。ミク殿でさえ出来ないそうですが、その方々には可能なんだそうですよ。もちろん頼んだところで一蹴されるでしょうけど」


 「そりゃね。そもそもこっちから頼む事すら出来るかどうか分からないし、ロフェルの時は向こうから復活させてやると言ってきたんだよ。こっちから何かしてくれと言った訳じゃないから、こちらから頼むのは私でも無理」



 それを聞いても何やらよく分かっていないオーレクト組をスルーし、最後にお金を出していく。孤児院に寄付してきたとはいえ、それでも多く残って余っているから、ストレーナに押し付けないといけない。



 「またですか……」


 「仕方ないとしか言えないわ。孤児院に寄付してたりするんだけど、それでも貯まっていく一方らしいの。このままだと増えていく以上、どこかで減らす必要があるんだと思うわ。それに前回渡したお金だってすぐに無くなったでしょう?」


 「まあ、領地経営のお金と考えたら、そんなに多い訳じゃありませんからね。それでも結構な収入ではありましたけど、降って湧いたようなお金で何かをするというのは、あまり健全な経営とは言えませんので……」


 「今回も銅貨関係は出さないから、他の貨幣を区切りが良いところまで出していくよ」



 私は3種の銅貨以外がちょうど500枚になるまで貨幣を出していく。小金貨と大金貨は50枚だ。それ以上はあっても邪魔なだけであり、そもそも500枚でも多く正直にいって邪魔な量だと言える。


 しかし大量に渡すとまた五月蝿いだろうし、この程度は持ち歩いても悪くはない。また大量に集まったら、ここへ持って来て渡せば済む。領地を軌道に乗せる為には結構なお金が掛かる。唯でさえ元ワルドー伯爵領を得たんだしね。



 「まあ、そうなんですけど……相変わらず大量の貨幣ですね。オーレクト帝国のお金も入ってるんでしょうし、いいのでしょうか?」


 「大丈夫、大丈夫。元皇女2人を雇うんだから、これぐらい貰ったって罰は当たらないよ。嫁入りよりは少ないんだから、文句を言われる筋合いも無いでしょ」


 「そもそも皇女が嫁入りする際に、どれだけのお金を下賜されるかなんて知りませんよ。ここは王国であって帝国じゃありませんし。王国の場合は貰う側が出しますので」


 「えっ!? そうなの?」


 「そうですよ。他の貴族は別ですけど、王族が来られる場合は別なんです。王家の血が入るのですから、それは王家と縁戚になるという事。その謝礼は王家に支払われるんですよ。結びつきも含めてですね」


 「それに王家と縁戚だというだけで払った以上に儲かるんだから、そこまで痛手でも何でも無いのよね。王族の方に取り入ろうと続々と贈り物をする奴等が出てくるし」


 「それなら確かに儲かるだろうね。それに王族が使ってるとか愛用してるって評判だけで、貴族としては1つくらい買っておかなきゃいけないってなるでしょうし」


 「そういった関係上、王族の方が入られる場合には王家に謝礼を支払う決まりとなっているんですよ。実際、王家の看板を利用して嫁いだ先の領地を豊かにした方もいらっしゃいましたしね」


 「最低限は儲かるんだから、渡しても問題ないって訳ね。まあ、暗黙の了解って感じなんでしょうけど、王家の縁戚と考えたら確かに悪くないのかしら? でもストレーナって狙われてない?」


 「………」


 「それねー、結構それとなくあるみたいよ。新しく伯爵家になったから、ストレーナはそれどころじゃないっていうのにねえ」


 「どういう事?」


 「残念ながら、かつての子爵家は下級貴族なんです。しかし伯爵家というのは上級貴族であり、知っておかなければいけない事とか色々あるのです。つまり、新たに伯爵家の者として知っておかなければいけない事を学習中でして……」


 「私が教えてるから問題ないんだけど、一応派遣されてきた文官が教えてもくれてるわね。次期当主が必死に書き写して本にしてくれてるから、次の次の代からは子供の頃から学べるわよ」


 「もしかして、腐ってもワルドー家は伯爵家だったって事よね? エリザヴェートが伯爵家の学ぶべき事を知ってるって事はさ」


 「最低のクズだったけど、あの男は学ばせるべき事は学ばせてたわね。もちろん伯爵家の者として恥を掻かない為でしょうけど」


 「でも、よく考えたら凄いですよね。子爵家から伯爵家になった家に、元伯爵家や元皇族の方が雇われるって。主人より雇ってる相手の方が格上ばかりですよ」


 「………」



 どうやら現実を改めて突きつけられたストレーナが思考停止に陥ったみたい。何気にマハルは容赦ないね。もちろん本人は思った事を口に出しただけなんだけど、そもそもマハル自体が庶子とはいえ侯爵家の者だからかな?。



 「そういえば、侯爵家……」


 「元皇族が居るんだから、今さら侯爵家って言っても意味無いと思うわよ? それよりオーレクト帝国が文句を言ってくる可能性って無いの?」


 「継承権も無ければ、皇族ですら無い。そんな者が何処に行って仕事をしようと自由でしょ。皇族でないという事は、私達は平民でしかないという事。そしてコレはそれを証明する物よ? 何か文句を言ってきても「平民です」と言えば終わる話でしかないわ」


 「しかもここはゴブルン王国の北の方だからね。王国の南西に帝国がある以上は、ここまでわざわざ調べに来ないでしょう。仮に来たとしても、平民が何処で働こうが帝国が文句を言う権利は無いのよ」


 「しかも皇帝陛下が正式に平民になったと証明してくれてるものねえ。それにここはゴブルン王国。オーレクト帝国の法は通用しないわ」


 「後は暗殺に警戒するくらいだけど、他国で暗殺なんてすれば関係が一気に悪化するわね。それならそれで、実戦で銃を試すチャンスかしら?」


 「「「「「「「「じゅう?」」」」」」」」


 「ゴブルン王国の新武器みたいなものよ。さて、そろそろ私達は行きましょうか? ミクもお金を置き終わってるし。次は北の国よね?」


 「北という事はマリウェン王国ですか。北の海という所は寒いそうですから気をつけてください」


 「了解。それじゃ行こうか」


 「それでは、失礼します」


 「じゃ、行ってくるわ」



 そう言って私達はアルダギオン伯爵邸を出て行く。それにしても説明と皇女2人を渡すのに時間が掛かったね。仕方ないとはいえさ。


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