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0735・これまでの事 その4




 Side:ミク



 「という事で、長い間ダラダラと喋ったけど、この2人をアルダギオン伯爵家で雇えない? 2人は仕事を探してるし、メイドを養ってもいかなきゃいけない。それに皇女としてかなりの教育を受けている。普通の文官より遥かに優秀だと思うよ?」


 「ああ、成る程。それで我が家に戻ってこられた訳ですか。オーレクト帝国の皇女なんですよね……もちろん御二方が工作活動をやった訳ではないし、命じた訳ではないのですけど」


 「私は別に良いと思うけど? そもそも私だってワルドー伯爵家の者だった訳だしさ、それにアルダギオン伯爵も領地が増えて苦労してるじゃない。私だって日々文官仕事に追われてるくらいだし」


 「そういえば、アルダギオン伯爵家の領地ってどんな感じで増えたの? 周囲の貴族全員敵になったうえ、公爵家まで敵だったじゃん。王だって領地を増やすって言っても、非常に増やし難いと思うけど」


 「増えた領地の大部分は、元ワルドー伯爵家の領地です。ただし治安は王軍が引き続き守ってくれていますので、民の暴動は起きていません。それと我が家の領地と同じ税率にしたからか、目立っての文句などもありませんね」


 「それは良かった。一応私の故郷でもあるし、暴動とか一揆なんて無いに限るわ。という事は、ようやくあそこも救われるって事ね。何というか感慨深い気もする。長い間に色々と苦しんだからさ」


 「実は元ワルドー伯爵家の領地だけでなく、それぞれの領地からも少しずつ貰っているので、結果として驚くほど領地が増えたんですよ。領地だけで言うと伯爵家の中でも最大です。ですので文官含めて全く足りていません」


 「オーレクト帝国の皇女であろうが関係なく欲しいくらいには文官が不足してるのよ。それに国軍も長く駐屯してくれる訳じゃないから、早めに治安業務を引き継いで騎士団を作らなきゃいけないし、やる事が大量過ぎて兄まで文官仕事をやらされてるわね」


 「という事で、おそらくお父様も許可を出されると思います。御二人とも帝国とは関係無いんですよね? 継承権を放棄して皇族籍からも離脱されているんですし」


 「ええ。……これよ、これが皇族籍からの離脱証明書。毒杯を飲んででも、私と姉上がもぎ取って来た物よ」


 「………はい、間違い無いようです。それでは父上の下に後で参りましょう。それにしてもオーレクト帝国の皇女が我が家で働くとは……なにやら不思議な感じがしますね」


 「そういう巡り会わせというか、ミクに関わるとそうなるって感じ? 私達にはどうにもならないっていうか、考えても無駄なんじゃない? なるようになるさってトコ」


 「まあ、そうなんですけど……。あ、せっかくですから皆さんの鑑定を見たいです。なのでミクさんの持つ<鑑定の石板>を貸していただけませんか?」



 ストレーナがそう言うのでアイテムバッグから<鑑定の石板>を取り出すと、早速使い始めた。……ストレーナが。



 「むう……やっぱり変わりませんね」


 「そうそう変わる訳ないでしょうが。それよりオーレクト組が驚いた顔で見てるけど、やっぱり<鑑定の石板>って珍しいのねえ」


 「こんなの見た事が無いわ。名前や種族だけでなく、どんなスキルを持っているかまで分かるなんて……」



 そう言いつつストレーナとエリザヴェートは前と違いが無い事が分かったので、次にオーレクト組が使う事になった。そこまで期待していなかったが、やはり大したスキルなどは持っていないようだ。



 ―――――――――――――――


 <ヘリエル>


 種族:アルラウネ族

 年齢:16

 性別:女

 スキル:音感

 特殊:麻痺の香り


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 ―――――――――――――――


 <サリエル>


 種族:アルラウネ族

 年齢:17

 性別:女

 スキル:歌唱

 特殊:眠りの香り


 ―――――――――――――――


 ―――――――――――――――


 <ベス>


 種族:オーク族

 年齢:18

 性別:女

 スキル:絵画


 ―――――――――――――――



 「ヘリエルとサリエルは似たようなスキルだったのね。【音感】と【歌唱】。どちらも音楽系のスキルかぁ……何かやってみたらどうかしら?」


 「そう、申されましても……。音楽に関わった事も無ければ、楽器を手に取った事もございませんので、どうしてよいやら」


 「私の方は歌う事でしょうから、まだ何とかなりそうですが、【音感】というのは何に役立つのでしょう?」


 「ベスは【絵画】なのよねえ……。おそらく絵を描く事だと思うんだけど、趣味にするには高級なのが問題かしら? 絵画関係の物は高いから今すぐ用意するのは難しいわ。ごめんね」


 「何をおっしゃいますか。私は絵を描いた事など一度もありませんし、これからも描く気などありません」


 「それは勿体ないわ。何か簡単な物でも絵を描いてみなさい。せっかくスキルがあるんだし、やらないのは損でしかないわ」


 「それは後で話し合ってもらうとして、本命の2人の鑑定を始めましょうか?」



 エリザヴェートの一声により、2人の皇女が鑑定の石板に手を置いていく。その結果も特に珍しいという事も無く終了した。



 ―――――――――――――――


 <オルトリー>


 種族:オーク族

 年齢:17

 性別:女

 スキル:儀礼


 ―――――――――――――――


 ―――――――――――――――


 <セルウェーヌ>


 種族:オーク族

 年齢:16

 性別:女

 スキル:記憶


 ―――――――――――――――



 「オルトリー姉上のスキルは想像通りですね。エイシャーダ姉上よりも優雅で、礼儀や所作については完璧とまで言われていましたし。この鑑定結果を見ると、ある意味で当然とも言えます。もちろん努力してらっしゃったのは知っていますが」


 「セルウェーヌも想像通りよ。皇族でなければと言われていた程、優秀な勉学の成績だったもの。中央の文官の道があれば国の役に立っていた筈だけれど、平民になるか皇帝になるか死ぬしかないのが皇族だし」


 「エイシャーダ姉上は大丈夫でしょうか? プライドが高いだけで悪い方ではないですから、出来れば継承権の放棄と皇族籍からの離脱をしてほしいのですが……」


 「エイシャーダ姉上の実家は公爵家だから、余程の事が無い限りは母方の実家である公爵家に戻されるだけで済むでしょうけどね。私のように伯爵家だったり、セルウェーヌのように子爵家だと殺されるでしょうけど」


 「そういう意味では母の実家の爵位で決まっているという事でしょうか?」


 「生き残って皇帝にならない限りは決まってしまうのでしょうね?」


 「だったら全員始末してこようか? そしたらオーレクト帝国は大混乱すると思うけどね。皇帝の血を持ってるのは2人だけになるし」


 「流石にそれは止めて下さい。カンガスを殺すならまだしも、他の兄上方や姉上方はそこまでではありません。特に皇太子殿下はお優しい方なのです。皇妃殿下はアレですが……」


 「もしかして皇妃が後ろ盾になって、院政を敷く気かな? それが一番次の帝位が安定する?」


 「その可能性は無い訳ではないと思います。お優しい方では厳しい決定は難しいですし、そもそもそれが原因で皇太子にする事に異論が出たのですから」



 成る程。皇太子選出で揉めたとか聞いたけど、冷酷さが無いのが理由だったのか。とはいえ上に立つ者には必ず冷酷さというものが必要だけどね。帝王学で何を学んだのやら。


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