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0729・これからについて




 Side:マハル



 皇女殿下が2人も居る所に何故かボクも居る。若干、不思議な気がしないでもないけど、今は依頼での仕事中だから仕方ないのかな? 第2皇女殿下とそのメイドが何故かチラチラとボクの方を見てくるけど、これはアレだね、ボクの顔に見惚みとれてるんだろう。


 ミクさんやロフェルさんいわく、ボクの顔は非常に女性に好まれるものらしい。ナルキッソスという人物の話をミクさんから聞いて納得したけど、その神話の人物は心底笑えない人物だった。


 他人に対して情が無く、その美しさで他人を虜にしながらも冷酷な態度と言動しかとらない。そして最後には神様から自分しか愛せないようにされ、水面に映った自分を見て離れられなくなり餓死してしまう。もしくは溺れ死ぬそうだ。


 ボクが持っていた建国王と同じ香り。あれの香りが水仙という花の香りそっくりで、ナルキッソスという人物が死んだ後には水仙という花が咲いていたらしい。そういう意味でも共通点が幾つかあったそうだ。


 ボクは他人に情が無い訳でもないので一緒にされても困るが、<理の樹>という物を使われた結果、非常に美しくなってしまったみたい。ボク自身は男なのでイマイチよく分からないが、非常に女性受けするのは間違い無いと言われた。


 個人の好みというものがあるので万人が評価する訳じゃないみたいだけど、多くの女性に好まれると聞いた時には、「勘弁してよ」としか思えなかったけどね。それでも神様の指定だから仕方ないんだろうと思う。


 それにこういう女性の態度は、生まれ変わってから結構見る態度なんだ。ある意味で見慣れたものであり、ナルキッソスという人物が冷淡だったのも、こういう態度ばっかりで飽きていたからじゃないかな?。


 それでもアプロディーテーという女神様の贈り物を侮辱するのは、流石にあり得ないとは思うけどね。神様から贈り物を貰って侮辱するとか……。そんな事をするから悲しい最後を遂げるんだよ。



 「セルウェーヌ、その……そちらの方はいった何方どなたかしら? 私は見た事が無いのだけれど」


 「こちらの3人は私が警護にと雇いました狩人です。騎士達が信用できない為、自分で雇わないと本当の意味で命は守れないと思いまして……」


 「そうですか。確かに騎士達は皇太子殿下とカンガスの後ろ盾になってしまっています。私達をいつでも殺せる状況ですし、私達はエイシャーダ姉上のように母の実家が助けてはくれませんからね」


 「ええ。既に継承権の放棄と皇族籍からの離脱を明言しています。それになにより、母の実家は戦う気がありません。子爵家では戦えないと言えばそれまでですが」


 「私の方も同じよ。伯爵家ではあるけど、他の貴族を纏めて戦えるような力なんて無い。あるのはエイシャーダ姉上の実家である公爵家だけよ。だからこそ陛下は私達が離脱する事は分かっていらっしゃる筈。なのに……」


 「どうしても私達を殺したくて仕方ないのでしょうね。言葉は悪いですが、国民の娯楽ですもの。ある程度死なないと国民も喜ばない。そう思っていらっしゃるのでは?」


 「そんな……」



 何だか気分の悪くなる話ですね。誰かが死ななければ終わらないなんていう事も、国民が娯楽扱いで見ているという事も。どちらもがこの地獄を生み出しているとしか思えない。自分の祖国がこんなにいびつだなんて知らなかった。


 第2皇女殿下は更に顔色を悪くして帰っていかれた。何とも言えない感情が湧いてくるが、ボクにはどうする事も出来ない。



 「今の状況だとカンガス兄上が死んでくれると一番良いとは思うんだけど、そうするとシェルマ兄上も動きそうだし、エイシャーダ姉上も動き出すでしょう。それに軍がかなりの防御を敷いているからどうにもならないでしょうし……。長期戦になりそうね」


 「それは仕方ないんじゃない? さっきの感じだと第2皇女が一番先に亡くなりそうね。何と言うか、生きる力が弱いわ。意思もそうだけど、泥水をすすってでも生きてやるという必死さが無いのよ」


 「ああ……。オルトリー姉上は正にそんな感じの方よ。皇族としては優雅な方なんだけど、その反面戦いには非常に不向きなの。生きるという事も戦いなんだけど、それを理解していない感じね」


 「自分の命の危険を感じて妹の所に来た筈なのに、本題を忘れてマハルの顔に見惚みとれてたぐらいだしねえ。明らかに今やる事じゃないと思ったけど、本当に自分の命が危険に晒されている自覚があるのか聞いてみたいよ」


 「アレは自覚があるとか無いとかじゃないでしょ。何というか本能を感じたわよ。死に掛けていても顔の良いのが居たらそっち向くんじゃない? それはそれで褒めるべきだとは思うけどね」


 「ある意味で根性がわってるって? 言いたい事は分からなくもないけど、そこに命を懸けられるのは凄いとしか言い様が無いね。私には意味が分からないし」


 「ミクは分からないでしょうし、分かる必要も無いと思うわよ。あんなのも居るんだってぐらいで良いんじゃない?」


 「まあ、姉上の事はともかくとして、貴女達との契約も簡単には終わりそうもないわね」


 「簡単に終わらせる方法はあるけど? 皇太子と第2皇女と貴女以外の皇族をブチ殺せば終わるでしょ?」


 「「「………」」」


 「確かにそうね。皇太子が継げば良いんだし、それ以外の争いを行う連中を皆殺しにすれば終わるわ。その後は皇族籍から抜けて終了、そして私達の仕事も終了。大手を振って帝都から出て行ける」


 「一気に殺ってしまうんですか? 流石に……いや、そっちの方がバレないのかも」


 「皇族が一夜で3人死ぬんだもの、前代未聞の出来事として記録に残ったりして」


 「残ろうが残るまいが、私達にとってはどうでもいいけどね。さっさと仕事を終わらせて、次は北方の国に行くつもりだし」


 「貴女達の口ぶりだと、本当に出来そうなのが何とも言えないわ」


 「本当に出来そうじゃなくて、本当にできるんだよ。ファーダに任せておけば終わる」


 「………」 「「ファーダ?」」


 「あれ? もしかして第3皇女殿下はご存知なんですか、ファーダさんのこと」


 「夜に起きた時にちょっと。たまたま騎士が暗殺に来た時に起きてしまったの、その時に騎士達を叩き潰してくれてたわ。そこで少し話しただけよ」


 「そんな事があったのですか、申し訳ありません」


 「申し訳ございません」


 「いいわよ。あの時は疲れてたし、結果としては私達に何も無かったのだしね。あの騎士達に呪いが刻まれたくらいの事よ」


 「それよりさ、どうするの? 本当に殺る?」


 「………最悪は頼りにさせてもらうわ。ただ、今は駄目ね。タイミングが悪い。私が帰って来てすぐに暗殺されれば、私に疑いの目が一気に来るわ。それではオルトリー姉上以外の全員を敵に回してしまう」


 「数で来られると面倒なのと、向こうは権力的に動けないようにして殺害してくるかもね。皇太子の権力を使われると厳しそうだし」


 「それはね。だからこそ私が目立つ訳にはいかないのよ。目立っても碌な事が無いもの。そもそも帝位に興味が無いんだから勘弁してほしいわ。争いに関わるだけで迷惑なのよ」


 「その関係でいえば、今日第2皇女が殺されたらマズくない? 完全に貴女の所為にされるよね?」


 「「「………」」」


 「私達がこっちを守るんだし、数日は向こうをファーダに任せたら? 流石に不利になって面倒事に巻き込まれるのはゴメンよ」



 ボクもそれが良いと思う。ファーダさんなら絶対に守れるし、第2皇女殿下が死ぬと色々とマズい気がする。


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