0728・帝都到着
Side:ミク
あれから4つの村と3つの町を越えて帝都へと到着した。今は長い列の後ろで待たされている。平民用の列ではなく貴族用の列なのに随分と待たされているのは何故だろう? 普通は皇族なんだからすぐに通すと思うんだけどね。
何故か後ろで待たされており、遅々として進まない。何故だろうと思って馬車の窓へ声を掛けると、皇女が親切にも答えてくれた。
「門番は騎士団に所属しているの。こちらは普通の軍であって近衛ではないわ。そして近衛と軍は仲が悪いの。つまり皇太子殿下の派閥と第2皇子殿下の派閥は仲が悪いのよ」
「つまり第2皇子が嫌がらせをしているって事ね。それも軍派閥だと簡単に通して、それ以外の派閥には嫌がらせという訳か。こんな下らない事が皇族の殺し合いの度に起こるのかー。……この国って大丈夫なの? 都の門番って都の顔でしょうに。国というものの顔に泥を塗ってるよね?」
「それが分かればこんな事はしていないわよ。分からないからこんな事をするの。軍は恥ずかしくないのかしらね、まったく……」
割と大きな声で普通に話しているけど、周りは何も言ってこない。理由は同じ事を思っているからであり、それを下らない事と思っているからである。嫌がらせのように遅らせたとしても、命じた第2皇子ではなく門番である自分達に怨みが向くだけだ。
何故それが理解出来ないのか分からない。そんな事を大きな声で言うと、途端にスムーズに流れ始めた。門番如きが貴族から憎しみを向けられて逃げ切れる筈が無い。後で必ず捨て駒として生贄にされる。そんな事は分かりきった事でしかない。
「……貴女も容赦無いわねえ。それが事実だし、あの第2皇子殿下が下っ端の事なんて考える筈が無いのだけれど」
「下っ端はそういう事を知らないからね、上の者の威を借りて調子に乗るんだよ。もしかしたら自分が皇帝になった後すぐに処刑して、自分の派閥の者さえ切る皇帝としてアピールする為の生贄だったのかも。だから捨て置いた、とか?」
私がそうやって更に大きな声で言うと、貴族達も納得したのか「そうかもしれぬな」とか言い出した。それを聞いて更に焦る門番。まさか自分達が唯の生贄にされるとは思わなかったのだろう。所詮は何も知らない下っ端だ。
そういう風になら使い道など沢山ある。その言葉を聞いたケンタウロスの騎士も青褪めていた。何故ならこいつらも第2皇子一派、つまり軍の関係者だからだ。どうやら近衛は出してもらえなかったみたい。
「近衛は皇太子殿下をお守りしているから、私のような一番下の皇女には出せないの。だから帝城まで来て貰うわよ。私が安全になるまで契約は切れない、そう書いてあったでしょ」
「別に安全を確保するだけなら難しくないからねえ。それと何処かで殺されたら終わりだし、「私達は城には行けません」で終わらせようとしたんだけど」
「悪いけど付き合ってもらうわ。私だって命が懸かっている以上は、形振り構っていられないのよ。分かるでしょ?」
「まあねえ。命が懸かっている以上は、命を左右しかねない者は手放せないでしょ。まあ、乗りかかった船として諦めるか……」
私達はそのまま帝城まで進み、貴族街や城への門番は第3皇女がゴリ押しして通した。その押しの強さには若干ロフェルとマハルが引いていたが、命の懸かっている者はあんなものだとしか思わない。ここで手を抜けば死の可能性が非常に高くなる。
馬車を停める場所で降りた皇女とメイドは私達について来るように言い、私達は後ろを半円状に囲むように歩いていく。これも第3皇女を守る為の配置だ。当然だけど真後ろは私。右にロフェルで左がマハル。
私達はそのまま第3皇女にくっつく形で城の中を歩いて行き、豪華な扉の前で待たされた。どうやらこの先が皇帝の執務室らしい。私達はどうでもいいので立って待ち、中から第3皇女が出てくるまで待つ。
それなりに時間が掛かったものの、第3皇女は出てきた。ただし随分と機嫌が悪い。そのまま歩いていく第3皇女を守りつつ、私達は第3皇女の離宮まで歩いていく。どうやら男女で離宮が違うらしいのと、皇太子には専用の離宮が与えられているそうだ。
私達は皇女専用の離宮に行き、そこの第3皇女専用のエリアの応接室のような所でようやく落ち着く。城の中だからか面倒な事が多いね。
「貴女達の部屋は、この部屋の隣ね。そこが護衛の寝泊りする部屋だから。軍が第2皇子の後ろ盾になってから、危険な騎士が来る可能性が上がったからね。今は拒否してるの。あの騎士達の事を考えると間違ってなかったわ」
「本当です。あそこまでの事を平然とやってくるとは思いませんでした。セルウェーヌ様も第2皇女殿下も、継承権の放棄と皇族籍からの離脱を明言しておられますのに!」
「もしかして、その2つをするとこの血みどろの争いから抜けられる?」
「そう。完全に皇族ではなくなり、そこから抹消されるから争いからは抜けられるの。当然、皇族ではなくなるけれど、それでも血みどろの争いをするよりはマシ。そう思って申請してるのに、陛下は皇族籍の離脱はまだ認めないって。いい加減にしてほしいわ!」
「ああ、それで機嫌が悪かったのか。第2皇女はどうなの? もう通ったの?」
「分からないわ。聞いてないし、聞いたところで私の申請が早くなるかは不明だし。そもそも皇帝陛下がお認めになって下されば、私はさっさと出て行くっていうのに。よほど自分の子供に殺し合いをさせたいのかしらね?」
かなりの鬱憤が溜まってるんだろうけど、私達からしたらどうでもいいしね。さっさと終わってほしいだけだよ。それはそうと、食事などはどうしてるの? そっちも気を付けなきゃマズいんじゃない?。
「ここ皇女宮で作ってるし、女宮伯は中立だから問題無い筈だけど……。何処かの皇子が買収してたりしたら分からないわね。小さな簡易厨房みたいなものはあるけど……それを使って料理をしてくれる?」
「悪いけど、私は料理人みたいに作れる訳じゃ無いよ?」
「毒が入ってないだけで十分過ぎるわよ。後おかしな肉も持ってるし、それも含めて十分過ぎるわ。死ななきゃいいのよ、死ななければね」
「帝城という立派な場所で、やる事が生き抜く事とかどうなのかしら? 何だか悲しくなってくるけど、私達が死ぬ事は無いから心の余裕はあるわね」
「確かにそうですね。そもそも殺し合いの現場と言いますか、最前線なんですよ、ここ。……色々とこう、考えさせられるところがあります」
そんな話をしていると「コンコン」とノックの音がし、女性の声で「第2皇女殿下がお話をと申されています」と声があった。第3皇女は仕方なく「どうぞ」と言い、第2皇女を中に入れた。
私は入ってきた第2皇女とメイドをチラリと確認し、ロフェルとマハルの方を向いて首を左右に振る。理由は悪意を持っていないからだ。ロフェルとマハルも理解したのか緊張を解き、それを見ていた第3皇女も理解したようだ。
「お姉様、如何されましたか?」
「セルウェーヌ、単刀直入に聞きます。貴女の方は継承権放棄と皇族籍からの離脱。申請は通りましたか?」
「いえ、継承権の放棄は通りましたが、皇族籍からの離脱はまだ……」
「貴女もですか……。陛下はいったい何をお考えなのでしょう? 本来なら申請はすぐに通る筈。にも関わらず、私達の申請はまるで通る気配が無い。そもそも継承権の放棄をした時点で、争いに関わらないというのは明白だというのに……。このままでは第2皇子である、カンガスに殺されてしまいます」
「オルトリー姉上もそう思いますか? 私もそう思っています。間違いなく今一番動いているのはカンガス兄上です。皇太子殿下であるリューダ兄上も、第3皇子であるシェルマ兄上も動いていないというのに」
「エイシャーダ姉上が争いに参加しているから、私達の申請が通らないのかしら?」
「分かりません。少なくとも裁可できる権限は陛下しか持たれていませんので、私達は陛下がお許しになるまで生き残るしか道が……」
「「はぁ……」」
姉妹仲良く溜息を吐くか。それにしても申請を先延ばしにする理由って何だろうね?。




