0721・2人の新たな能力
Side:本体
変わった2人は鏡の前で色々と見ていたが、最後にはコレが今の自分だと納得したようだ。どのみち納得してもらわなければどうしようも無いのだが、マハルは死ぬ筈だった命が助かって、ロフェルは胸が大きくなっている事で受け入れたようだ。私には意味が分からないが、納得したならそれで良い。
その後は確認の為に鑑定の石板を渡して使わせたのだが、早速おかしな事になっていた。
―――――――――――――――
<ロフェル>
種族:鬼神族
年齢:0
性別:女
スキル:鬼の武威・鬼神覚・剛体
特殊:覇の咆哮
―――――――――――――――
「ドラゴン系じゃなくなったからか、【竜鱗】スキルが消えてるわね。それはともかく、種族名に神って文字が入ってるんだけど? 私は体に何を入れられたのよ」
「鬼の牙。正しくは現象としての鬼だから、鬼神となるな。どちらかと言えば神霊、いわゆる現象に宿る神というべきか。実体があったり無かったりする神となる。それの牙を持って来て使えと言ったのは、おそらく元ゴブリン族だからだろうな。ゴブリン族は小鬼族に近いとも言えるのだ」
「だから、ドラゴンより鬼の方が相性が良かったって事? 成る程、そういう事ね」
「そもそも私は鬼の素材なんぞ持っていないからな。言われても困るというところだが、わざわざ神が持って来たのだし、「使え」と言われた以上はどうにもならん。私からは諦めてくれとしか言えんな」
「まあ、神様の命ならどうにもならないわよ。諦めるしかないわね」
そんな話をしながらマハルの鑑定結果を見る。やはり予想した通り、おかしな事になっていた。その結果を見て頭を抱えそうになるが、そうしていても始まらないので考えよう。
―――――――――――――――
<マハル>
種族:天樹族
年齢:0
性別:男
スキル:理の知・深感応・念話
特殊:魂の声
―――――――――――――――
「<理の樹>を使ったからか、知識や知恵に関するスキルになっているのかもしれんな。それと【感応】よりも先にあるスキルが【深感応】だろう。おまけに【念話】も覚えるとは都合が良い。後で私も使えるようになっておくか」
「それはともかく特殊欄にある【魂の声】って何かしら? 私の【覇の咆哮】は何となく分かるけど、マハルのはサッパリね?」
「多分ですけど、他人の本音が何となく分かる能力だと思います。先ほどからもそんな感じがしていますから。ただ、考えている事が分かるとかそんなのではないです。その人の本音かどうかが分かるという程度ですね」
「それって誰かが嘘を吐いているとか分かるんじゃないの? 凄く便利な気はするけど、逆を言えば周りに不信感を持ちそうね。とはいえ傷つけない為の嘘っていうのもあるけどさ」
「この能力は意識して使わないと使えないみたいなので、普段から使う気はありません。ロフェルさんの言われる通り、周りに不信感しか持てないでしょうし」
「それはそうだと思うわ。本音が分かっていい事なんて何も無いわよ。危険から遠ざかるっていう使い方で良いんじゃないかしら? それ以外に使っても、ねえ……」
「碌な事にならないのはボクでも分かります。絶対に普段は使いません。それに分かるのは本音で話しているかどうかだけですしね」
「まあね。そろそろ私達も宿に戻してくれない? お腹減ってきたし、もう朝でしょ?」
「既にいつもよりも遅い時間だ。今日は朝食を食べた後、一気にテフィの町まで戻るという予定でいる。マハルの肉体も魔力も相当に強化されているから、【身体強化】で走り続けても問題ないだろうしな」
「了解。それじゃ戻ってさっさと準備をしましょうか」
「マハル。お前はもう元には戻れん。私が再誕させたからには、お前の寿命は無くなった。つまりは私やロフェルと同じく寿命で死ぬ事が無い。なので旅路についてくるといい。もはや寿命のある者達とは一緒に生きられん」
「………寿命で死ぬ事が無いという事は、おそらく老化もしないという事ですね?」
「そうだ。そしてそんな者など奇異な目でしか見られんのだ。最悪、その秘密を探る為に解剖などされるかもな。結局、寿命のある者とは相容れんのだよ。どうする事も出来ん。なのでこのアイテムバッグを渡しておくから、これに私物を纏めておけ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「それと、コレがお前達の新しい下着と服だ。着たら本体空間から出す」
「やっと新しい服が来た。いつ渡してくれるのかと思ってたのよ。まあ、ここは暑くも寒くも無いから快適なんだけどさ」
そう言いながら下着を着けて服を着ていくロフェル。それに対して全く反応しないマハル。男として大丈夫なのか、本当にナルキッソスではないのかと疑問に思うが、口に出すと泥沼になりそうなので止めた方がいいな。
2人が服を着終わり、新しいブーツも履いたら向こうへと送る。肉で覆って向こうへと転送し、ようやく一息吐いたな。あとは今まで使っていた要らない物を処分するだけか。暇な間に作った武器は後で渡せばいい。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Side:ミク
宿の部屋に戻ってきた2人に声を掛け、準備をするとさっさと宿を出る。食堂に行き小銅貨25枚を支払って食事にし、終えるとウェンの町を出て行く。もはやこの町に居る意味も無い。
【身体強化】をしながら走り、途中の村で昼食をとったら再び走って行く。マハルが走り続けられるのでそのまま走らせ、見事にテフィの町まで走りきった。十分に合格と言えるのだが、本人は納得がいかないようだ。
再誕した肉体だからこそ出来たというのが分かる以上は、前の自分ならまた駄目だったのは分かるのだろう。とはいえ消費する栄養も疲労も違うのだから仕方ないとも言えるんだけどね。
私達はテフィの町に入り、前まで泊まっていた宿に戻る。一応の確認だったのだが、やはり宿の部屋は泊まれるままになっていた。部屋が問題ない事は分かったので、私達は真っ直ぐ酒場へ行って食事にする。
大銅貨7枚を支払って3人で酒を飲む。理由は私の血肉を使っている以上、アルコールの悪い影響は一切受けないからだ。つまりマハルが飲んでも何の問題も無く、そもそも15歳だったのだから年齢も問題ない。だれもゼロ歳とは思わないだろう。
「ようやくテフィの町に戻ってきたし、あの危険な薬の事も解決したけど……これからどうするの?」
「一応この国の王都には行ってみようかなと思ってる。王都も魔境の近くの町と同じく悪人が多いだろうしね。とりあえず悪徳な連中を減らすのが私の仕事だ。完璧に全て食い荒らせとは言われてないし、そこは気にしなくていい」
「そうなんですね。ボクは全て抹殺しなくちゃいけないと思ってました。………お酒って美味しくないですね」
「ま、合わないなら無理に飲まなくてもいいよ。水か何かを注文すればいい」
「いえ、勿体ないのでこれは飲んでおきます。まあ、無理に飲みたい物ではないのは分かりました」
「とはいえ大半の奴等は美味しいから飲んでるんじゃないわよ? 酔いたいから飲んでるの。酔っ払ってる間は良い気分だからね」
「そういうものなんですね」
「そういうものなのよ」
酔いたいから飲むっていうのは分からなくもないけど、それで体を壊したり悪くするのもどうなんだろうね? 私には分からないけど、そういうのも居るんだろう。だから酒場が儲かる訳だし。




