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0720・変わった2人




 Side:ミク



 昨夜、本体空間にてマハルを再誕させ、ロフェルの肉体を改造した。正しくは更なる変化を促したとなるんだけど、神どもの持って来た物の結果となる。一応おかしな事にはなっていないものの、どんな変化があったかは私にも分からない。


 <理の樹>を本当に使ったのかは明言されなかったが、かといって光る葉の付いている枝など<理の樹>以外にあるのか疑問だ。本体も知識でしか知らないが、<理の樹>とは知の記憶と言われる存在の筈。


 それが何を意味しているのかは不明だが、きっと碌な事じゃない。あの神どもがやる事だ、必ず大袈裟で面倒な事になるに決まっている。そうでなければ、そもそもアレらは動かない。


 本体空間では未だにロフェルとマハルが眠っているけど、流石にそろそろ起きてほしいところだ。最悪は起こさなければいけないかも。朝早くに起こしても眠たいだろうけど、こればっかりは我慢してもらうしかないね。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:本体



 流石にこれ以上は待てないので強制的に2人を起こす事にした。触手を使ってベシベシ叩くと、流石に不快だったのか2人の目が開く。ロフェルは少しして本体空間であると気づいたが、マハルは全く理解していないな。



 「何で私が本体空間に居るの? 昨日は確か宿の部屋に戻ってきて寝た筈よ」


 「文句なら、私ではなく神の1柱に言え。ロフェルを連れて来て新たな素材をブチ込めと命じたのは私ではない」


 「は? 新たな素材……?」



 そんな話をしていると、どうやらマハルが完全に覚醒したようだ。私を見上げながら口を開けて呆けているな。仕方がないにしても、そのアホ面は止めた方がいいと思うぞ?。



 「マハルよ、これが私だ。ミクという存在は私の分体の1つでしかない、こういう風なものだと考えれば分かりやすかろう」


 「!!!」



 触手の先をミクの姿にすると、マハルは声が出ない程の驚きを示す。当たり前だが信じられないという顔をしているので、軽く私の事を話してやった。横に居るロフェルも肯定しているので真実だと分かったのだろう。ガックリとしている。


 特に惑星のゴミどもに愛想を尽かしたという言葉はマハルにとって重く、結構なダメージを受けているらしい。神に見捨てられたというのは、それぐらい重いようだ。


 ただしゴミどもだけだというのが、辛うじて安堵できる部分だったのだろう。あからさまに「助かった」という顔をしている。それすら温情でしかないのだが、その辺りを言う必要はあるまい。



 「神の1柱である、人間の足に無数の鼻が付いている姿の神が来てな、マハルの再誕に<理の樹>の葉の付いた枝を持って来たのだ。おそらく<理の樹>だと思うのだが、神は明言しなかった。あくまでも私がそう思っただけだが、光る葉の付いた枝など<理の樹>しか知らんのでな」


 「<理の樹>という物が何かは分かりませんが、ボクはあのよく分からないアルラウネに頭の花を引き抜かれてしまい、後は死ぬしか無かった筈です。もし助かったのなら、それだけでありがたい事ですよ」


 「頭の上の花ってどういう事? あれって引き抜かれると生きていけないんじゃなかったかしら。前にマハルをボコった5人組、その中のマンドレイク2人の花をむしろうとしたら生きていけないって言ってたけど。死ぬの?」


 「あの花は引き抜かれたら、やがて衰弱していって枯れて死ぬんだってさ。何だか植物みたいだけど、それぐらいアルラウネやマンドレイクにとっては大事みたいだよ。<秘密の花園>の首魁は元テルケー侯爵家の者の子孫で、マハルの花を引っこ抜いた後にその蜜を飲んでた。それはファーダが見てたよ」



 私が触手の先をミクにして会話しているからだろう、マハルが微妙に納得できない顔をしている。ついでにもう1つの触手の先をファーダにすると、今度は困惑した。



 「この触手の先である男の姿がファーダだ。私は分体を2つ表に出す事を神どもから認められていてな。その1つがミクであり、もう1つがファーダとなる。ファーダの方は大抵スラムに行って食い荒らしているな」


 「食い荒らす?」


 「ミクっていうか本体は、神様からゴミを食い荒らしてこいって命じられているの。だから私達が住む星の中の悪人を食い荒らしているわけ。スラムなんて特に悪人の溜まり場だし、ミクは悪い神様も喰っていいって言われてるのよ」


 「悪い神様……ですか」


 「そうだ。神には位階というものがあり、惑星の神、銀河の神、宇宙の神、そして根源の神とある。私を創り食い荒らせと命じたのは、頂点たる根源の神だ。そしてそれより下の位階の神、その中で悪徳な神は喰らっていいと言われている」


 「そしてミクは神様を食べると、その神様の持っていた権能の一部を使えるんだって。既に善の神と悪の神と呪いの神を食べたらしいわ。だから、その権能の御蔭で善人や悪人が分かるの」


 「という事は、スラムの者だから食べているという訳でもないんですね」


 「元々から魂を感知する事は可能なのでな、最初から悪人かどうかは分かるのだよ。今は神の権能があるので完璧に分かるようになったというくらいだな。元々精度としては十分だったから、悪徳な者を判別するのは問題ない」


 「成る程。それは凄いと思いますけど、そんなに悪徳な者って多いのですか?」


 「マハル……あんた5人組にボコられたでしょうが。あんなのが当たり前に居るわよ? 例えば<剛剣組>の奴等とかね。末端が私達をバカにしたような勧誘をしてきたから追い返したら、その事を根に持って襲ってきたわ。それも3回も」


 「3回!?」


 「全部叩き潰して、最後はチームマスターの公開土下座で終了。そしてそれが元で<剛剣組>は解散となったわ。そもそも私達を襲わなければ、あんな事にはなってないっていうのにね。つまり、そういうバカも居るって事よ」


 「………普通は大人数のチームを相手にして、2人では勝てないから襲っていたって事ですか? それは幾らなんでも……」


 「言いたい事は分かるけど、そういう事をする奴はかなりの割合で居るのよ。自分が弱くても組織が大きいから調子に乗る。典型的なバカだけどさ」


 「それよりも、そろそろお互いの姿を確認しろ。私のアイテムバッグに鏡が入っているからな。コレを使えば自分の顔が分かる。お前達に合わせた下着や服も作っておいたから着ろ」


 「鏡? って事は、もしかして顔が変わってる?」


 「それどころか、背も高くなってると思いますよ?」



 私がアイテムバッグから出した大きな鏡をまじまじと見たロフェルは、大声を上げて驚く。



 「な、何じゃこりゃあ!? コレが私の新しい姿と顔!? ちょっと待って、びっくりするほど美形に変わってない? 前の顔は私の面影があったのに、この顔じゃ全く面影が無いんだけど!?」


 「いや、目元とか鼻筋とか、微妙にロフェルの面影は残っているぞ? 今回は人に近くなったのと、額の左右に2本の角が生えたのと、背が180をギリギリ超えたのと、胸が大きくなったぐらいだな」


 「ふぉーーーーっ!! 本当だ、大きくなってるーーーっ!!!」


 「そこまで喜ぶ事か?」


 「さあ? ボクは男なので分かりません。それよりボクも何だか顔が変わったような気がするんですが……というか面影が無い?」


 「だいぶ無いな。代わりといったら何だが背が170を超えたのと、頭の花は完全になくなっていて、肌の色が人間と変わらなくなったな。つまりは殆ど別人に見える変わり方をしている」


 「あ……確かに」



 少し凹んでいるようだが、放っておけば解決するだろう。


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