0717・夜の戦闘
Side:ロフェル
宿に戻っていく道を警戒しながら歩く私達。いつ襲われるか分からない為、気を張っておく必要がある。【気配察知】や【魔力感知】でも探る事は出来るけど、誰が敵で誰が敵でないのかは分からない、ミクなら悪意も分かるそうなんだけど、私には無理だ。
周りの気配や魔力を警戒していると、宿までそのまま戻ってくる事が出来た。そのままとっている部屋まで戻るけど、いったいどういう事かしら?。
「私達が泊まっている宿と部屋の把握、そしていつ襲うかは向こうの自由。明らかにこっちが不利なんだよ。おそらく襲撃は夜中、町が寝静まった後なんだろうね。眠たいまま戦うのは難しいし、向こうはそれに合わせた連中が襲撃してくるでしょ」
「厄介ねえ。しっかりと襲撃計画を練っている時点で、ちゃんとした連中じゃない。唯のチンピラでは絶対に無いし、宿を襲撃する事を考えてるって相当の組織でしょ。もしくは宿とグルか」
「宿とグル……もしかして鍵を中から開けられるのでは?」
「そう。その可能性が一番高い。宿側とグルか、もしくは宿の従業員にお金を渡して懐柔しておけば入れる。そこまでしている可能性は十分あるし、こちらは起きて気を張ってなきゃいけない。……普通は」
「まあ、普通はってなるのは当たり前よねえ。そもそも私達が普通の訳はないんだしさ。それで、どうするの?」
「簡単。敵が来たら起こすから、それまで寝てていいよ。こっちがわざわざ敵に合わせてやる必要なんて無いしね。それと、おそらく敵は一斉に攻めて来るだろうから脱出の必要があると思う。ま、それもこれも襲ってきてからだね」
そう言ってミクは狐の毛皮をベッドに敷き、セリオとレティーを寝かせると自身も寝転がった。まあ、寝てて良いならゆっくり寝かせてもらおうかしら。そう思い私もベッドに寝転がる。
マハルが驚いているけど、気を張ってても疲れるだけだからね。眠れる時に眠って回復しておかないと、いざ戦いってなったら疲れ果ててるわよ。そう言うと、マハルは大人しくベッドで寝始めた。
私もさっさと寝て体力を回復しておかなくちゃね。
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Side:ミク
宿の周りに悪意が増えた為、2人を起こして準備をさせる。明らかにこちらを狙う為の布陣になっているので、襲撃は確実だろう。マハルは眠たそうにしているが、そんな状態を待ってくれる敵じゃない。
「マハル、頭を起こして。襲撃してくる相手はそれを待ってくれはしない。自分の命を最後まで守れるのは自分だけ。さっさと頭を覚醒させなさい」
「そうよ。起きてなきゃ動けないし、動けなければ死ぬ。もう少しでここも戦場になる可能性が高い。ミク、こちらから打って出た方が良くないかしら? このままだと狭い部屋に閉じ込められるわ」
「分かってる。今から外に出るんだけど、マハルは私の後ろで殿はロフェル。私が正面を蹴散らしながら進む。いいね?」
「了解」 「はい」
宿の部屋を出て私が先頭で進んで行く。まだ外の連中は中に入ってきてはいないので、今ならこちらからの奇襲が成功する可能性が高い。そう思い下りていくのだが、先に宿の従業員が入り口のドアを開けてしまった。
タイミングが悪いが、これは仕方ない。明らかな襲撃者が宿に入ってきたので、私はククリナイフと大型ナイフを左右の手に持ち一気に攻める。宿の従業員ごと入ってきた連中を殺害していくと、連中は慌てて戦闘準備を始めた。
どうやら入ってくる事だけを考えていたらしく、まだ戦闘準備すら出来ていなかったらしい。マヌケな奴等だが、それでも今までのチンピラ連中よりは上か。立て直しも速いし、外の連中は一気に準備を終えてこちらを襲ってきた。
「……!」
「!?」
どちらも声を出さない戦いが続く。暗闇の中を戦う訳ではなく、今日は満月なのか結構な明るさの中で戦っている。もしかしたら、これが襲撃者が今日に決めた理由なのかもしれない。見えないよりは見えた方が良いに決まっているのだし。
敵をこちらから襲い倒していると焦ったのか、敵は妙な動きを見せてきた。今までは私達の命を奪うような形だったのにも関わらず、手を出しながら一定の距離を保つように動く。付かず離れずといった妙な戦闘に変わっている。
時間稼ぎにはおかしな動きだし……いったい何をしているんだろう? 私とその敵どもが睨み合っていると、後ろでマハルが捕まったのを感知した。慌てて振り向いたが、マハルは無理矢理に担がれて運ばれていく。
どうやらロフェルも敵に囲まれて手が出せない状態だったらしい。
敵が後ろから剣を突き出してきたが、私は最小限の動きでかわすと肘打ちを喰らわせる。そして振り向くと同時に、ククリナイフで敵の首を刎ねた。
右の足下近くから透明のファーダを出し、マハルについていくように指示。ギリギリまで手出しはさせないように言っておく。
(どうしてだ? さっさと助けた方が良くないか?)
(相手の本拠地が連れて行かれた先とは限っていない。もしかしたら本拠地とは違う可能性がある。それに、相手の首魁が居るとも限っていない。姿を現すのは良いけど、ギリギリまで正体は現すべきじゃない)
(了解だ。まあ、正体を出さずとも余裕でどうにでも出来るがね)
そんな話し合いを本体空間経由で行いつつ、私とロフェルは残った敵を掃討する。どうやらマハルの香りを悪用したいみたいけど、そこまでして拘る理由が何処にあるのかちょっと分からない。
自分に魅了されるというのは確かに強力だし解除し辛いものだ。誰かへの魅了ではなく自身に魅了されると、冷静にしたり客観的な視点を持ち辛い。自分というものから離すのは不可能に近いからだ。そして自ら暗示を掛けてしまう。
これが自分に魅了されるという事の厄介さなんだけど、それだけでマハルを狙う理由にはならないと思う。流石に些か理由としては弱い。となると何かしら私達には知らない理由がある筈。
そして侯爵家が使用を禁止させた以上、何かしらの理由がある筈。出来ればファーダにはその辺りを探ってもらいたい。
(成る程、それが理由であまり手を出さないように釘を刺した訳か。マハルが暴れているからか、意外に連れて行くのに時間が掛かってるな。マンドレイクも居るんだから<麻痺の香り>を使えばいいものを)
(香りって周りの全員に影響を与えるから、マハルだけじゃなく連れて行ってる奴等も影響を受けるでしょ。それじゃ自爆もいいところだよ)
(ああ、そういえばそうか。あんなもので影響なんぞ受けたりしないから、無差別に影響を与えるのを忘れてたな。しかし、そうなるとマハルは特大級の危険物だぞ。自分に魅了される香りだし)
(そうなんだよね。だからこそ使用を禁止されたし、自分で封印してるんだろうけどさ。でも、その自制がいつまで続くのやら。所詮は自分で使わないと決めただけだからねえ)
周りから必死になって攻めて来る連中をあしらいながら、反撃で仕留めていく。私が負ける事などあり得ず、どちらかというとロフェルの実戦訓練の為に手を抜いている。
どれだけ練習しても1度の実戦には敵わない。だからこそ、なるべく多くの経験をさせる為に私は力を抜いて対処している。攻めて来た奴は殺すものの、睨み合いがしたいならそれに付き合ってやっているぐらいだ。
しかしロフェルが暴れている為、敵の人数はどんどん減っている。果たしていつまで戦闘訓練が続けられるのやら。そう思えるほどにロフェルが暴れているからか、そろそろ10人を切りそうだ。
終わったら追いかけよう。




