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0715・シュエルト潰し




 Side:ミク



 スラムの娼館で手に入れた書類を色々と調べていたら、<秘密の花園>という組織からの依頼でオークを魅了したとあった。正しくは横流ししているそいつを始末しろという依頼だったのだが、マハルに聞いてみたところ「知らない」との事。


 どうやらアンダーグラウンドな組織みたいだが、危険な薬物を採取させている時点で組織だったものである事は分かっている。今のところ手がかりはコレしかないので、これを頼りに調べるしかない。



 「ボクもお手伝いします!」


 「いや、それには及ばない。っていうか活躍できる場所が無い。何故なら気配や魔力は消せないでしょ? 見つかるような事をされても困るのよ。どちらかというと、表で何も無いのを装ってほしい感じかな」


 「装う?」


 「マハルを連れてると、言葉は悪いけど警戒心は減るのよ。だって大した事が無さそうに見えるから。もちろんそれを利用したいわけ。本当に実力があるかどうかは別にして、警戒をされない雰囲気を利用したいって事」


 「警戒されないのは狩人として問題ですが、何かを調べるには都合が良いって事ですね。ちょっと複雑ではありますけど、お役に立てるなら頑張ります!」



 うん。その気合いが邪魔なんだけど、マハルはそういうのとして扱った方が良いね。こっちの邪魔さえしなければいいし、こいつの中身が善なのは分かってる。だからこそ、おかしな動きをしそうではあるんだけど、それは実際にしてから考えるかな。


 とりあえず今やる事は無いから、戦闘訓練を今日もするよ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ファーダ



 日中に随分と扱かれたようで、マハルは宿に戻ってきてベッドに潜るとすぐに寝たらしい。俺はこれから侯爵家の内部調査だ。悪人を喰うというよりは、書類や書物などを調べる事になるだろう。


 <秘密の花園>に繋がる情報があれば良いんだが、なかなか難しいだろうなぁ。何よりよく分からん闇側の組織と侯爵家に関わりがあるかどうかが分からない。それでも侯爵家が現状、どの程度を理解しているか。そこを探る必要はある。


 俺は宿を出ると鳥になって飛び、侯爵家の屋敷の屋根に下りるとムカデになって窓から侵入する。中に入るとメイド部屋だったが、特に悪人は居ないのでスルー。扉の下の隙間から外へと出た。


 他の部屋も調べ、中に居た悪人を喰らう。侯爵家はきちんとしているのか、悪人の数が非常に少ない。そんな中、執事の中の年寄りを喰うと非常に有益な情報が得られた。


 レティーが報告してくれたのだが、この老執事は<秘密の花園>の構成員らしく、更には<秘密の花園>の創始者がテルケー侯爵家の者だという事も分かった。どうやら古くから危険薬物は出回っていたらしい。


 しかし売り先のほぼ全てが他国である為、今まではオーレクト帝国内で問題になっていなかったんだ。にも関わらずセプテンガル伯爵領では蔓延していた。となると何かがあったんだろうし、でなければ国内に売るという危険は冒さない筈だ。


 それともう1つ。実はマハルの花の香りは<魅了の香り>らしい。しかし非常に特殊な香りで、それは自分に魅了される香りというものだそうだ。


 ナルキッソスと言えば分かりやすいかもしれないが、正しくはナルキッソスを自分しか愛せないようにしたネメシスのようなものだろう。香り持ちに魅了されるのではなく、香りを嗅いだ自分に魅了されるという極めて珍しい<魅了の香り>なのだそうだ。


 そして<秘密の花園>はマハルを手に入れる為に色々と動いている事も分かった。ミクが居る以上はマハルを手に入れる事は不可能だが、それを知らない以上は排除すればいいとでも思っていそうだな。


 そっちはミクがどうにでもするだろうから放っておいて良いとして、他にも悪人が居ると助かるんだが……。様々に探した結果、<秘密の花園>の構成員は老執事以外には見つからなかった。ついでの侯爵家の当主と妹は、普通だったので何もしていない。


 アルラウネの一族では、優秀な当主と次に優秀な妹以外は外に出される。おそらく<秘密の花園>を作ったのも外に出されたテルケー侯爵家の者なのだろう。そもそもテルケー侯爵家は元アルラウネの国の公爵家だったらしいのだ。


 つまり王位継承権を持つ可能性があり、それに付随する恨みと憎しみは根深いだろうと思われる。とはいえ俺には興味の無い事であり、<秘密の花園>とやらを潰せればそれでいい。他はどうでもいい些事さじだしな。


 まだまだ時間はあるので侯爵家の蔵書を読ませておらおう。俺が本気で読書をすればあっと言う間に読めるので、とりあえず気になる物から読もうと思うのだが………表紙や背表紙にタイトルくらい書いておけよ。


 おかげで何の本か分からないから手当たり次第に読むしかない。まあ、そこまで時間も掛からずに終わるし、本は空中でページめくっているので、そこまで大きな音はしていないだろう。触手で持ってるし。


 一度に3冊を同時に読み、音を限界までさせずにページめくる。終わったら音も無く本棚に仕舞い、次の本を出して読む。ひたすら繰り返した結果、ある程度の事は分かった。


 領地経営そのものはしっかり出来ているが、治安維持がちょっと緩い。ただし意図的に緩めている感じだ。緩めてそこに集めて、そしてそこから出ないようにする。上手くコントロール出来れば良いんだが、スラムをコントロール出来ていなかったしな。そういう意味でも緩い。


 もっとしっかりしなきゃいけないが、あの老執事のように<秘密の花園>の奴等がちょこちょこ邪魔をしてるんだろうな。その結果、向こうにとって都合の良い状態になっちまってる。それはテルケー侯爵家の問題だから、俺は介入なんてしないがね。


 情報も知る事が出来たし、そろそろ本体空間に戻るか。<秘密の花園>の本部はテルケー侯爵領から北に2つ目の町、ウェッソン子爵家の領都ウェンの町にある。これからは見張りと群生地の全滅が必要だな。


 疎らに残っているのは仕方ないにしても、群生している場所は全て潰しておかないといけない。でないと<秘密の花園>を潰しても他の奴等が同じ事をするだけだ。それじゃ意味が無い。


 とりあえずは本体空間に戻り、俺は明日から夜中に動くか。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ミク



 ファーダが侯爵家に侵入してから10日が経った。あれからファーダは夜に魔境に入り、<シュエルト>だけ根こそぎ掘り返して引っこ抜いている。テフィでも話題になったが、ファーダが抜いているとは知られていない。


 もちろんムカデの姿で抜いているというのもあるのだが、夜中に抜いているので絶対に見つからない。他の狩人にとっては手を出さないものなので、実質的には<秘密の花園>に喧嘩を売っているようなものだ。


 採取人が誰なのかは分かっていない。おそらくだが採取する連中は昼間に徒党を組んでやっているのだと思う。やり方はアイテムバッグに詰めるのと、周りに監視を置いての採取だと思われる。


 そうすれば採取している事を隠せるからだ。それに採取する連中は何処に群生地があるのかを知っているだろう。ファーダは自力で探さなければいけないが、そこまで難しいものでもない。


 最初から群生地を潰すと決めているので、少ないのや小さい物を無視しているからだ。沢山ある物を見つけるのはそこまで難しくもなく、更には侯爵家の蔵書の中に絵は書かれていなかったが、特徴が描かれていた本はあった。


 隠されるようにして置いてあったので、おそらくマハルは読んだ事が無いのだろう。この辺りはマハルに聞かなくてもいい部分なので都合が良い。知らないという事で助かる事も多いし。


 余計な事は知らせる必要が無いしね。


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