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0713・訓練の続きと1日を終えて




 Side:ミク



 昼食を挟んで午後。戦闘訓練を行っているけど、未だに素振りを含めた体の動かし方だ。なんといっても、マハルには圧倒的に基礎が足りない。こういうものは、ひたすら反復練習を行って覚え込ませるしかない。


 私ならばともかく、人間種では反射で行えるようにまでなる必要がある。咄嗟の時に使えない技術など意味が無く、それで死亡する恐れもある以上そこまでしなければいけない。重要な事だ。



 「そこ、体の傾きが違う。重心はそれより少し前。その僅かな違いが威力や動きに直結する。最も速く動ける形で移動し、最も力が篭められる態勢を維持しておく。避けるにしても、ただ避けてはいけない。常に反撃が出来るように避けろ」


 「はい!」



 全身を動かす事において、重心を何処に持って来て、体の傾きをどうするかは重要になってくる。それで次の一歩が決まるといっても過言じゃない。後はその繰り返しとなる。大事な一歩を繰り返すという事は、それは最善な動きを繰り返すという事。


 高が一歩、されど一歩。ここに拘れないヤツは上にはあがれない。とても大事な事だが、誰しもが軽視しがちな事だ。次の為の一歩は、その次の為の一歩でもある。



 「もう一度やり直しだ、途中でズレている。一歩前へと踏み出すだけでもコレだけ大変なのだ、如何に適当に戦っていたかが分かるだろう? だがそれはマハルだけではない。大半の者がそうなのだ」


 「ミクほど極まった技術を持つ者なんて他に居ないから安心しなさい。そこまでの技術は一生を掛けても普通は極められないものよ。それを教えてもらってると思えば、その難しさが分かるでしょう?」


 「そ、そんなに……?」


 「そんなにだ。だが、私はこれ以上の技術を知らない。言い換えれば他者が全く理解できない程の技術、これ以上をいったい誰が教えてくれる? という事だ。分かったらもう一度最初から。重心と体重移動に注意しろ」



 再び武器を持って踏み出していくも、やはりぎこちなく微妙にズレている。やる気はあるので問題ないが、これは相当に大変だ。それでもマシなのだから、何とか教え込むしかないな。マハルを味方にしておいて損は無いんだし。


 何よりマハルもロフェルと同じくかなりの善に寄った人物だ。侯爵家の中がどうかは分からないが、確認はする気なので最悪は善人に書き換えるつもりではある。マハルのような者がいる以上は、そこまでする必要は無いと思うんだけど。果たしてどうなるのやら。


 ………夕方になったので町へと戻り、私達は酒場へと移動して中に入る。注文をして大銅貨6枚を支払い、お酒を飲みつつ料理が来るのを待つ。私とロフェル以外は水を飲みつつゆっくりしてる。



 「今日一日、戦闘訓練をしてどうだった? 思った事を話していいよ」


 「………正直に言うと、同じ事ばかりで大変でした。何と言っても歩きだしばかりで、それが終わったら今度は二歩目です。そしてそれが終わると連続三歩、でもなかなか上手くはいきません。本当に役に立つんでしょうか?」


 「そう思うのも分かるわ。ミクも言っていたけど、そこで拘るかどうかが明暗の分かれるところなのよ。最高の技術を身につけるって事は、他の者では届かない高みに手を伸ばすという事。後はそれに納得するかどうかね」


 「そこまで必要無いと思えば、その程度で終わってしまう。高みに手を伸ばせたのに、自分はその程度で諦めてしまった。そういう後悔が無いなら良いんだけどね。結局は自分がどうなりたいかだよ」


 「自分がどうなりたいか……」


 「もっと簡単に言うと、あの5人組にボコられて悔しくないのかってところかしら。強さを持っていれば勝てたのに、厳しいからって訓練を諦めるのか? と考えれば分かりやすいわね。あんなチンピラ程度に勝てなかったじゃない?」


 「それは……」


 「私が今日教えたのは踏み出しと歩き方くらい。あれを続ければ歩くという事になる。逆を言えば、歩く事1つとってもあそこまで拘る必要があるって事。でないと戦闘には勝てない。多対一が基本である以上は敵は複数居て当然であり、その時点で不利なんだよ」


 「それを覆すにはそれだけの技術を身につける必要があるの。あのチンピラ連中だってマハルよりは身につけてきている。だから手も足も出ずにボコられたんでしょう? そういう事よ」


 「分かりました。ボクは何もかもが足りてないって事ですね?」


 「本を読んでたから知識はあるんだろうけど、逆にいえば体は鍛えられてないし技も無い。それでは人数の多い相手に負けるのは当たり前。戦い方も知らないうえに、体も弱い。それでどうやって勝つ?」


 「相手と自分は同じじゃないわ。マハルは本を読んで知識を身につけてきたんでしょうけど、それが役に立つ事は少ないの。実際の戦闘はそんなに甘いものじゃない。だからこそミクは実際の戦闘に必要な事を教えてるわけ」


 「実際の戦闘?」


 「マハルも頭の中で思い描いていた戦闘というものがあるだろうけど、残念ながら戦いというものはそんな甘っちょろいものじゃない。何故そう言えるかと言えば、マハルが本当の戦いを知らないからだよ。知らないものは想像出来ない。これは誰しもが同じ事」



 料理が来たので手をつけて行くが、朝と昼が大麦の粥なので美味しそうに食べている。1日に2度は大麦の粥で、出来得る限りの雑多な栄養はとっておきたい。どのみち夕方に沢山食べても、運動で消費しているのだから太る事は無いんだし。


 それにちょっとくらい太った方が筋肉に変えられるので都合が良いとも言える。まだまだ成長する年齢なんだから、ロフェルと同じ身長では終わらない筈。マンドレイクも背の高い者は多いので、もっと伸びていくだろう。



 「という事は、ボクは実戦をもっと経験した方が良いという事ですか? でも、基礎が無いんですよね?」


 「そう。戦うにしても基礎が出来ていない以上は、そっちが先となる。そもそも何も訓練していない者がいきなりモンスターと戦う、それこそが間違いなんだよ。仕方ないとはいえ、多少は教えてやる方が良いと思うけどね」


 「その余裕が狩人ギルドには無いんでしょうね。ランク1の新人が一番死亡率が高いんだけど、それは放置してるのが現状よ。正直に言って助けられないし、どうにもならないってところかしら」


 「何故でしょうか?」


 「大半の者は、お金が無いから狩人になるのよ。そんなお金を持ってない者が戦闘訓練とかを受けられる訳がないでしょう? 更には訓練を受けている間の住む所や食事をどうするのってなったら、無理だという事がよく分かるわ」


 「だから先輩に教えられたりするんだろうけど、その先輩っていうのがことごとく大した事が無いヤツばかり。まあ、そもそもギルド内にたむろしてる連中じゃその程度なのは仕方ないんだけどさ」


 「一応は大人数のチームメンバーだったりするのよ? ギルド内で情報を得る担当であり、他のチームとも意見交換をする立場ね。あれらは情報の大切さを知っているメンバーが選ばれるから、それなりには優秀なのよ」


 「へー、そうなんですね」


 「情報の扱いが優秀なのであって、戦闘で優秀な訳じゃないけどね。足運びを見ただけで大した事がないのがハッキリ分かるし」


 「ミクに比べれば世の中の全てが大した事が無いわよ。それぐらい実力に隔絶した差があるでしょうに」



 マハルがえらく驚いているけど、この星の者どものようにポンコツじゃないよ私は。最強の怪物は分体を使っていても最強だからね。もちろん神どもは除くんだけどさ。


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