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0711・スラムの掃除開始




 Side:ロフェル



 夕方になるまで練習し、それが終わったら町の中へと戻る。マハルも多少は動けるようになったみたいだけど、今はまだそれだけ。とはいえ1日目だし、流石にそんなに早く強くなったりはしない。それでも何も知らなかった頃よりは随分とマシね。


 今は顔も活き活きしてるし、希望があると頑張れるんでしょう。ミクから聞いた武術を考えると、先は猛烈に長いんだけどさ。でもそれを考えるとガックリ来るから、私は見ないフリをしながら頑張ろうっと。


 酒場に着いたらカウンター席に行き、注文した後でミクが大銅貨6枚を支払う。私達は運ばれてきたお酒を飲み始めるけど、マハルには水を飲ませる。流石に20歳まではお酒を飲まない方が良いらしいから。



 「お酒の成分、つまり酒精でありアルコールは体の成長にとって良くないのよ。20歳ぐらいまでは体って成長するから、それまでにお酒を飲んでると体の成長を阻害してしまうわけ。結果、身長が低くなったり体の節々が弱くなったりする。強くなりたいなら、お酒は20歳になってからの方が良い」


 「酒場にとっては困るでしょうけど、狩人にとっては大事な事よね。私は気にしないけど。もう今さらだし」


 「まあ、そうだね。それにアルコールが得意じゃないのも居るし、そういうヤツは無理して飲む必要ないよ。そもそも無理して飲んだって美味しくないんだしさ」


 「そうなんですね。ボクはそもそも飲みたいとも思いませんし、酔っ払いを見てると危ないなーって思います。あれは襲われても文句は言えないと思うので、ボクとしては飲む気にはなれません」


 「まあ、言いたい事はよく分かるし、飲まない方が良いわよ。私なんて酔ったらミクに何とかしてもらってるしね」


 「………」


 「まあ、特に気にしてないから別に良いんだけどね。それはともかく料理も来たし食べようか」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ミク



 マハルは久しぶりのちゃんとした食事だからか、喜んで食べてるね。特に成長する年齢だし、これからの事を考えると沢山食べても構わない。どうせ運動して消費するんだから、大量に食べても太らないだろう。


 セリオとレティーもゆっくり食事をしつつ、私達も料理を楽しんでいると、酒場に黒い紋様をつけた奴等が入ってきた。どうやらマハルをボコってた奴等が来たらしい。こっちはカウンター席で背を向けているからか、どうやら理解していないようだ。


 店員に気を使いながら話しているところを見るに、【善なる呪い】の痛みが身にみたみたいだね。悪意や悪行だと激痛にのた打ち回る事になるが、何が悪行と見做みなされるか分からないんだろう。


 だから他人に気を使っているんだろうけど、そこまで怯えるって事は、それだけ連中の普段の生活は悪意や悪行だらけだったという事だ。だから痛みに怯える羽目になる。自分達の普段の行いの所為なので、完全な自業自得でしかない。


 それにしても、悪行に塗れていた奴等が卑屈になるほど他人に気を使うって滑稽だねえ。元々の所業の所為だと思えば更に滑稽に見えてくるから楽しいよ。酒のさかなにはちょうどいいね。


 ……食事も終わったのでロフェルに肩を貸しつつ外へと出たら、宿までゆっくりと歩いていく。後ろを確認しているものの、特につけてくる奴等は居ないようだ。


 私は途中でファーダを出すと、そのままスラムへと行かせる。別に急いではいないが、ここへ来た理由は危険な薬物を売り捌いている連中の殲滅だ。なのでスラムは最有力候補なんだけど……そんな簡単に済むかな?。


 もしスラムに売人の組織があるなら、とっくに侯爵家が勘付いてないとおかしい。もちろんセプテンガル伯爵家のような事もあるので、テルケー侯爵家も中は怪しい可能性がある。仮に調べるにしても、そっちは後でだけど。


 私はそのまま宿の3人部屋へと連れて帰り、ロフェルをベッドに寝かせる。マハルが何だか微妙な顔で見ているけど気にしないように言い、狐の毛皮をベッドに敷くとセリオとレティーを寝かせた。


 マハルも既にベッドに寝転んでいるので、私も寝転んで目を瞑る。流石にマハルが居る以上、私がムカデに変わって出て行く訳にはいかない。朝までゆっくり漫画でも読んでいよう。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ファーダ



 テルケー侯爵領の領都テフィ。今日からはここの掃除を始めるんだが、薬の供給元の割には厳しそうな感じがする。セプテンガル伯爵領であそこまで蔓延したのは、もしかしてセプテンガル伯爵が知らなかったからか?。


 元はケンタウロスの国だったんだし、危険な薬物がどれほど危険だったか自覚してなかった可能性は……無いな。マハルはオーレクト帝国で禁止されていると言っていた。という事は通達くらいは為されているだろう。


 その状態で知らなかったは流石に通らない。となるとセプテンガル伯爵家も被害者だった可能性があるな。ま、仮にそうであっても、その後はバラ撒いているんだから十分に加害者だけどな。あくまで最初が被害者な可能性があるだけで。


 よし、スラムに着いたから早速掃除の開始だ。……と、いきたいところだが、何だかモンスターの反応を感じるぞ? マハルもテイマーだったが、もしかしてアルラウネってテイマーが多いのか?。


 今のところ気付かれたのは鳥のモンスター1羽だけだが、他にも俺に気付くモンスターが居ないとは限らん。気をつけて喰っていこう。


 ……意外と言ったらなんだが、薬に汚染されている奴は居ないな。妙な味なのはマンドレイクだからだろう。肌が緑で髪は濃い緑、そして頭の上に花が咲いてる。そんな不思議な生物だが、ちゃんと人間と似た器官が存在しているようだ。


 不思議な生態というか生命体だが、どうやら頭の花は香りを撒く器官らしい。何の為にそれが付いているのかは知らないが、特殊な能力としてだろうか? そもそも喰ったから本体を通して俺も使えるが、なかなか面白い能力だと思う。


 そしてこの匂い、なんと同族にも効くみたいだ。だから優劣のようなものがあるらしく、マンドレイクでも強力な効果を持つ者は貴族の配偶者になれるらしい。なのでスラムには香りの弱いヤツしか居ない事になる。いわゆる弱者だ。


 アルラウネの国では当然ながら女性体であるアルラウネの方が上となる。その割にはマハルは庶子と言っていたので不思議だったのだが、アルラウネの国では当主と妹の子に継承権が与えられるようなのだ。


 つまりマハルは当主ではなく妹の子となるらしい。ちなみにマンドレイクは同じらしいので、当主の子とマハルは父親が同じとなる。なんだかややこしい感じはするが、女性優位の社会とはこういうもののようだ。


 それはアルラウネの社会だからどうでもいいのだが、どうやら頭の上の花。その香りの強さは魔力に直結している事が分かった。つまり大量の魔力を流せる者は効果が強力になり、魔力を流せる量が少ないと効果が弱い。


 そして流せる魔力量は決まっていない。つまり何が言いたいかというと、効果の差はあっても香りの強さに優劣は無いという事になる。鍛えていないから香りが弱いうえに効果が低いのであって、生まれながらに決まっている訳じゃない。


 そういった事を恐らく知らないんじゃないだろうかと思われる。もちろん鍛えても限度はあるだろうが、それでもスラムから這い上がれる可能性はあるのに……。そう思わずには居られないな。


 まあ、そんな事を考えながらも喰っているので、俺としては鍛えないのが悪いとしか言えないがね。そもそも悪人なんだから喰わないという選択肢は無い。ただ、スラムに落ちたのが鍛えていない自分の所為だという可能性が高まっただけだ。


 俺には関わりの無い事でしかないが。


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