0705・テルケー領へ
Side:ミク
ファーダの働きで薬の大元がテルケー領だという事が分かったので、私達は今日からテルケー領の魔境へと出発する。ある意味で次の魔境に出発するだけなので、変な邪推などはされないだろう。この町も随分と綺麗になったので尚の事ないと思う。
朝の食堂で小銅貨20枚を支払い朝食をとったら、町を出て西へと戻っていく。伯爵家は新しい者を雇い入れたりしながら何とか頑張っているようだ。【瘴気の苗床】にした伯爵夫妻は地下に移されたらしく、そこに瘴気が流入している。
まあ、五月蝿く喚くオブジェなど邪魔でしかないだろう。そのうえ殺そうとしても再生して殺せないんだし、そうなったら閉じ込めておくしかない。瘴気が無くなるその日まで頑張ってくれるでしょ。そんな日が来るかは知らないけど。
私達は西に向かって【身体強化】を使い走って行く。移動に時間を使ってもしょうがないからなんだけど、【転移】は使いたくても使えない。流石に日中に使って飛ぶとバレてしまうし、夜に野宿をするのも変だ。
【身体強化】が使えるのも目立つようだけど、これで目立ったところで大した問題にはならない。私達が強いと思われるくらいなので、面倒除けには都合が良いくらいだ。本当に面倒が避けられれば尚いいんだけど。
「あんたら強そうじゃねえか。俺達の仲間になれよ! 良いだろ?」
「強そうじゃなくて、強いのよ。その私達があんた達みたいな弱いのと何で組まなきゃいけないのよ。考えたら分かるでしょうが」
「そもそも昼食の邪魔をするとか、話にならないんだけど? あんまり鬱陶しい事を続けるなら潰すよ?」
村の食堂で昼食を食べていた私達に話し掛けてきた奴等。どうも大きめの狩人のチームらしいんだけど、そいつらがチームの名前を使って私達を勧誘してきた。そもそも私達はその名前の狩人チームを知らないし、こっちを扱き使おうという浅ましさが滲み出ている連中についていく訳がない。
何と言うか、色んな意味で頭が悪い奴等だし、そんな頭の悪さで勧誘できる訳が無いのに何を言ってるのかっていう感じ。冗談でも何でもなく頭が悪いんだなーとは思うけどね。
「い、いや、オレ達は別に……」
「そ、そうだぜ。怒らずにオレ達の話「失せろ」をだな……」
「さっき言わなかったか? 昼食の邪魔をするような奴等は話にならないと、そう私は言った筈だぞ」
「「「「「………」」」」」
【身体強化】を使った威圧を言葉に乗せれば、あっと言う間に黙って去って行った。そもそも自分達よりも遥かに弱い奴等と組むなんてあり得ないし、私達以上の強者なんてそもそも居ない。つまり誰とも組む必要が無いんだよ。
しかも下心丸出しのバカどもなんて、もっとあり得ないだろうに。だったら自分達はそんな浅ましいのと組むのか? って話だよ。
「本当にそうよね。何で私達がわざわざザコのお守なんかしなきゃならないのよ。自分達だってそんな事、頼まれたってしない癖にね。そんな事を他人にやらせようなんて醜いのよ」
「それ以前に他人の食事の邪魔をするなって話でしょ。自分達だって食事の邪魔をされたらイラつくだろうに、自分達より強い奴を怒らせて何がしたいのやら。その時点で話にならないって分かるじゃない」
「本当よねえ。しかも<剛剣団>とかいうダッサい名前のチームなんて聞いた事ないわ。私達が聞いた事あるのって<氷結の躯>と<爆走団>くらい? どっちも関わる気は無いけど」
「そうだね。前にセヌリテスの町で会ったヤツが、そんな名前のチームとか言ってた。まあ聞いただけであって、どうでもいいからスルーしたけどね」
「まあ、私達が何処かのチームに入る必要もないしねえ。十分に儲かってる以上は、わざわざザコを連れて歩くなんて面倒な事はしないわよ。普通は」
これだけ言ってやれば、いちいち下らない事は言ってこないでしょ。これで気に入らないって喧嘩を売ってくるなら、丁寧に叩きのめしてから進めばいい。別に急いでる訳じゃないしね。
それより昼食も食べ終わったから、そろそろ進もうか。
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Side:ロフェル
途中の村で<剛剣団>とかいう連中をボッコボコにしてから6日、やっとテルケー領の領都テフィの町に着いたわ。あの田舎者集団である<剛剣団>。数だけは多い有象無象の集団だったのよ。その所為で3回も襲撃されたわ。
結局襲ってきた奴等は全員叩き潰してやったけどね。ミクは悪人じゃないからって言って【善なる呪い】を掛けなかったけど、私は掛けても良かったと思う。悪い事はしてないとはいえ、私達は襲撃というか喧嘩を売られ続けたのにさ。
まあ、最初の時に相手を貶してるから、こっちも悪いと言えばそうなんだけどさ。それでも3回も襲撃してくるっておかしいわよ。しかも同じ町で2回も襲撃してくるし。結局、最後は向こうのチームマスターの公開土下座で終わったけど。
そこまで追い詰められるって、よほどの馬鹿だと思うんだけど気のせいかしら。舐められたら負けだからこそ何処かで手打ちにして普通は引くものなのに、最後まで引かなかった所為で解散する羽目になったのよねえ。あいつら。
流石に公開土下座までしたチームは瓦解するしかない。狩人ギルドのギルドマスターに文句を言われたけど、私達の所為じゃないっての。そもそも最初は<剛剣団>の連中がこっちをバカにした勧誘なんかをしてくるのが悪いのよ。
っと、そんな事を思い出している場合じゃない。テルケー領に来たんだから、そろそろ気合入れておかないと。ここが売人の巣窟なんだしね。そして魔境はどうも森っぽいのよ。元々アルラウネの国だったからかな?。
「かもしれないね。そもそもガイアの伝説じゃアルラウネって植物で女性の姿じゃなかったっけ? この星じゃ男性のアルラウネも居るみたいだけど、それってマンドレイクの事だろうと思うんだけど……。女性の方が優位な種族なのかな?」
「女性のみって事はないでしょうし、でも植物ならあり得るのかしら? いやいや幾らなんでもそんな事は無いでしょう。どう考えても男が居ないと種として成立しないような気がするんだけど……」
「そうなのかな? どうかは分からないけど、伝説の中には女性だと母の種族、男性だと父の種族になるなんていうのもあった筈。だから女性しかいない種族が成立するみたい。何故とか言われても困るよ? そういう話だってだけだし」
「まあ、この星では男性のアルラウネも居るんじゃない? もしかしたら違う種族名なのかもしれないけど、流石に男性が居ないのはおかしいから」
「だよねえ。精霊じゃなくて生き物として存在するなら、雄が居ないとおかしいし。それに神話でだって何かの神と子を為している筈なんだから、そういう生き物と言えなくもないよねえ?」
そろそろこんなバカ話も止めなきゃいけないわね。何処で誰が聞いているか分からないし、アルラウネが怒るポイントが分かってないのよ。場合によっては激怒される恐れもあるし、迂闊な事は言わない方がいいわ。
それにしても、町に入ったらハッキリと分かるわね。人間っぽい見た目ではあるけど、肌が緑色だし頭の上に花が咲いてるんだけど? あれが香りを出す物なのかしら?。
「何かどっちかっていうと、アルラウネじゃなくてドリュアスって感じ。もしくはドライアド? ドリアード? 結構人間っぽい方向に寄ってるから、アルラウネってほど植物な感じじゃないし……どうなってるの?」
どうなってるってどういう事だろう。もしかして、あれがアルラウネじゃない?。




