0700・伯爵家の根
Side:ロフェル
私達は死んだ連中を放っておき、更にウロウロと探し回る。ある程度の兎だったり蛇だったり鼠を倒していると、遂に本命のバカどもがやって来た。モンスターよりもこいつらを待っていたのよ。本当、仲間が死んでいるのに悠長な奴等ねえ。
「てめぇら! よくもオレ達の仲間を殺ってくれたな! 覚悟しやがれっ!!」
「何言ってるのあいつ? あんた達の仲間は私達を襲ってきたけどスカされて、ダットーに突撃してボコボコにされてたわよ。私達を襲ってきたんだから、普通に犯罪者じゃないの。バカバカしい」
「犯罪者はてめぇらだろうが! オレ達<爆走団>に立てついたヤツは、全員犯罪者になるんだよ!」
「そうだ! てめぇらはもう終わりなんだよ! さっさと薬打って潰してやるぜえ!!」
「語るに落ちるというか、自分達からバラすとはマヌケだな。まあいい。ロフェル、こいつらは殺すな。全員に呪いを刻む。これからは善人として生きてもらおうか」
「そうね、それが一番良いわ。強制的に善人として無理矢理に生かしてあげる。お前達が壊してきた女性達の痛みを思い知れ!!」
「ハハハハハ、バカが! てめぇらも潰れんだよ!!」
そう言って襲ってくるものの、呆れるほど遅いし弱い。私とミクは【身体強化】を行い。こいつらの足を重点的に叩いていく。もちろん足の骨を折ったりはしない。大事なのは、こいつらが生きて町に戻る事。
何故なら善人になる以上、裏に居る貴族の言う事は聞けなくなる。仮に行おうとしても激痛を受けるし、考えただけでもアウトだ。こいつらにはこれから先、善人として生きるしか出来ない人生を呉れてやる。
それこそが壊されていった女性達を慰める唯一の方法。だからこそ一切容赦しないし、セリオもレティーも逃がさないように立ち回っている。ミクは転倒したヤツの頭を即座に掴み、それっぽい呪文を唱えて呪いを発動させていく。
呪いの神の権能である以上、唯の生き物に解除する事は出来ない。ミクいわく、神の権能は神力を使わないと解除できないそうだし、呪いに多少なりとも関わりのある神でないと無理だと言っていた。
当然ながら神様がいちいち一生物の呪いを解いたりはしないだろう。ならばこれ以降、一生呪いを背負って生きていく事になる。このクズどもには相応しい罰だと思うわ。
……結局30人ほど居た<珍走団>のクズども、その全員に黒い紋様が浮き出ており、私達の目の前で呪いから受ける激痛にのた打ち回っている。
「お前達に刻んだ呪いは【善なる呪い】。これからは悪行を為そうとしたり、悪い事を考えるだけで激痛にのた打ち回る事になる。良かったな、貴族が命令してきても拒否できるぞ。痛みで動けませんってな」
「なっ!? く、くそ!! この呪いとやらを外しやがれ!!」
「断る。貴様らのようなクズには相応しい罰だろう? お前達が死ぬまで、その呪いは解ける事が無い。どうしても呪いから逃れたいなら死ね。ただし呪いで自殺する事は出来ないんだけどね」
「てめ、ウギャァァァァァァァァ!!!!!」
「「「「「「ギャァァァァァァァl!!!」」」」」」
バカねえ、こいつら。呪いを刻んだってミクは言ったでしょうに。どうして話を聞いていないのかしら? やっぱりバカは他の者の話を聞かないって事実なのね。昔から言われるけど、本当に聞かないヤツが居ると納得しかないわ。
「お、オレ達は無理矢理に参加させられてただけなんだ! 別にやりたくてやってた訳じゃなくて、チームリーダーが伯爵家の三男だから逆らえなかっただけなんだよ!! だから助けてくれ!!」
「断る。たとえそうであろうと、お前達がクズどもと一緒に犯罪を犯していた事実は何も変わらない。つまり、お前達もクズだという事だ。そんなクズに呪いを刻んで何が悪い。最初から犯罪などしなければ良かっただけだろう」
「本当にね。今まで散々好き勝手しておいて、呪われたから何とか助かろうなんて浅ましいのよ。クズどもに相応しい末路なんだから、もっと痛みを受けて苦しみなさい。お前達の何倍も苦しかった女性達の為にもね!!」
今さら絶望したような顔をしても遅いのよ、ゴミどもめ! ミクがこういう奴等をゴミ呼ばわりするのが、本当に心の底から分かる。地獄の苦しみを延々と与えてやるべきであり、一切の情け容赦をしちゃいけない!。
それからミクが小突き回しつつ話を聞き、構成員の残りと貴族との関わりの大半を把握した。チームリーダーは伯爵家の三男だけど、狩人ギルドのサブマスターは次女みたい。
ギルドにまで手を伸ばして家族経営みたいにし、狩人も含めて雁字搦めにしていたとは……。本当に伯爵家って腐ってるわね、これは止めを刺した方が良いと思うわ。最悪の状態じゃない。
私達は歩いて戻りつつ色々と相談したけれど、やはり今日の夜に纏めて抹殺する事に決めた。
「夜に宿を強襲してくる恐れがあるのよ。そうなるとロフェルが危険に晒される。なので今回だけはアリバイを無視して本体空間に皆を移すから、そのつもりで。その間にファーダはスラムの残り、私は伯爵家の掃除を行う」
「<珍走団>と狩人ギルドと伯爵家の親子ね。伯爵の長女だけは既に嫁いでいて居ないから抜きにして、伯爵夫妻は【瘴気の苗床】、長男夫妻は善人への強制書き換え、次男と三男と次女は【善なる呪い】。これで決まり」
「それだけの事を夜の内にしなきゃならないから、宿の守りに構っていられないのよ。<珍走団>の残りは20人ぐらいらしいから、確かに人数としては多く居る。とはいえ残りを考えたら少ないし、そこまで時間は掛からないけどね」
「問題は次女の居場所と伯爵家の内部よね。悪人は全て喰らうとして、残るのがどれだけ居るかってところでしょ。場合によっては、伯爵家から殆ど居なくなるかも……」
「それならそれで仕方ない。そんな悪人ばっかりなのが悪いんだし、自業自得ってもんだよ。そもそも悪行を為してなければ、こんな目には遭わなかったんだしさ」
「それでも平民には何の関わりも無い……訳じゃないか。もちろん貴族に反抗するなんて大変だけど、それでも見て見ぬフリをしてきた責任は無い訳じゃない」
「まあね。貴族だからと言って何をやっても許される訳じゃない。それは本来なら平民が力で立ち上がって見せ付ける必要があった。でも、なあなあにして逃げた以上は罪がある。私は関わらないけど、全く罪が無い訳じゃない」
「前に言ってたものね。民衆が立ち上がらないから、貴族はつけ上がるってさ。貴族の横暴に立ち上がらなかった以上、それは貴族の横暴を許した事になる。だって立ち上がった者達が居るんだもの」
「そう。だからこそ、立ち上がらなかった者達を同じには出来ない。犠牲を覚悟してでも立ち上がった者達が歴史上には居るからね」
ワルドー伯爵領も結局はそうだったんでしょうね。平民が立ち上がらないから貴族は平民を舐める。貴族に舐められないように立ち回らなきゃいけなかったのよ。でも、やり過ぎれば弾圧してくるでしょうし……なかなか難しいところね。
おっと、考えてるうちに街が見えてきたわ。狩人ギルドに行って売るんだけど、何か圧力を掛けてきそうな予感がする。もし買い叩いてきたり拒否されたら、売るのは止めてさっさと宿に戻ろうかしら。
もし宿にも泊まれなかったら、その時は……。
「1日だけ野宿をすれば済むよ。むしろ宿に泊まるより楽だね。で、伯爵家とその家族がメチャクチャになった次の日に戻ってくればいい。そうすれば私達にはアリバイがある」
……確かに。




