0698・スラムの掃除と危険な薬物
Side:ファーダ
宿に帰って来てから出たが、酒場の帰り辺りから外に出てても良かったな。それなりに暗かったから、スラムまで移動して潜伏していれば早く始められたかもしれん。とはいえ、そこまで勤勉に掃除をしなくてもいいだろう。ここでは余裕がある。
交通の要衝であったセヌリテスならともかく、ここセプテスでは時間を掛けても問題ない。まずは路上の連中から始末していくか。相変わらず悪人しか居ないので、全力で喰っていけば良いだけなのは助かる。
実際に目の前で一瞬にして消えるっていうのは、どういう気分なんだろうな? 俺からすれば一瞬ではないんだが、ここのスラムの連中からすれば一瞬で消えたように見える筈だ。人間の目と大した性能の違いは無い筈なので、オークでも一瞬にしか見えない。
そんなものを見た気分はどうなんだろうと思うも、そもそも喰う奴にしか見せていないし、認識した瞬間そいつも喰ってるので聞く事は出来ない。いや、本体空間で聞けば済むんだが、そこまでして聞きたい事でも無いな。
どんどんと路上生活者の連中を食い荒らし、それが終わったら建物内の連中を始めるんだが……。何故か建物内の奴等が動いてる? それも一部だけが動いてるが、何かあるのか? ……そいつらを先に調べてみるか。
ここの建物内だな。えらく慌ただしく動いてるが、いったい何をしてるんだ? とりあえず侵入して情報収集をするか。
「おい! 本当だろうな? スラムの連中がどんどん消えてるなんて事が本当に起きてやがるのか!?」
「事実に決まってんだろうが! オレの【気配察知】を疑うっていうなら、お前らはそのまま居ろ。気配が消えてるって事は死んだって事だぞ。相当ヤベェ何かがスラムに居やがる。そんな奴に襲われて堪るか!」
「あ、おい! ………あいつ逃げちまったが、どうする? 本当なら相当ヤバいんだと思うが、それが本当かどうかオレ達には分かんねえしなぁ」
「ほっとけ! どうせ後になったらスゴスゴ戻ってくるに決まってらぁ。そもそも奴はオレ達のトコ以外に行くところがねえんだからよ」
いや、それはないぞ。【気配察知】持ちならお前達の視界から居なくなった瞬間、俺が喰ったからな。だからこの世にはもう居ないんだが……こいつら固まっていて面倒だな。麻痺毒を散布して喰うか。その方が手っ取り早いし楽だ。
麻痺させて食い荒らすのは楽なんだが、どうしても麻痺毒の味が回るんだよなー。それが欠点といえば欠点だ。別にアクセントとしては悪くないんだが、いつも同じスパイスだと飽きる。これも最強の怪物たる俺達の敵だな。
暇もそうだけど、俺達でさえどうにもならない敵は存在する。そう考えると、最強であっても無敵じゃないんだよなー。それはそれで良い事だから問題ないし、そもそも最強といえど<根源の神>には絶対に勝てないんだがね。
スラムの他の連中は騒いでないみたいだから、【気配察知】を持つ連中は多くないんだろう。ついでに範囲もそこまで広くないと思われる。でないと気配が減っているのを今までも怪しまれてないといけない。
とはいえそんな様子も無かった以上、範囲が狭いか【気配察知】持ちが寝ていたかだ。どれだけ優秀なスキルを持っていても、寝てたら発動しないからな。だからこそ夜中に食い荒らしている訳なんだが。
それはともかく、もう1つくらいなら組織を食い荒らせそうなので、それが終わったらさっさと戻ろう。
次はこの建物に入って適当に食い荒らしていこう。それなりに大きな組織みたいだが、俺にとっては多少多いぐらいだ。然したる時間も掛からずに処理し終わるし、そのついでに金銭を………なんでこんな物が出てくる?。
えーっと、なになに…………成る程な。スラムに危険な薬をバラ撒いて、その売り上げの5割を伯爵家に上納ねえ。それで危険な薬物を見逃してもらってたと。この組織が三女の作ったものだから出来る芸当だな。
それにしても、伯爵家は表も裏も牛耳っていたみたいだ。他にもあるかもしれないが、明日だ明日。
こうなれば徹底的に潰してやるから覚悟しておけよ。最後には伯爵にも呪いを刻むか、行方不明になってもらおう。もしくは書き換えるかだ。
あまり元の人格を失わせるのは良くないんだが、そうも言っていられなさそうだ。危険な薬を貴族公認で入れて、金を吸い上げてるんだからな。流石にこれは許されないし、完全な悪だ。見逃すなんて事はあり得ない。
それはそうと、そろそろ朝なんで本体空間に戻ろう。
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Side:レティー
昨夜ファーダが食べて送った者の脳を食べていたのですが、薬で狂った者の記憶というのは酷く辿りにくく、壊れているような感じになってしまっているのです。なので断片的にしか情報は分かりません。
それでも主が<珍走団>と呼んでいる連中が、狙った女性に対して強姦などを行い、その後に薬で破壊してスラムに捨てている事は判明しています。もちろん主を経由してミクとファーダにも伝わっているのですが、かなりの怒りを持ったようですね。
もちろん可哀想という理由ではなく、より大きな悪人だったからです。主もそうですが、基本的には人間種などに慈悲を持つ事は殆どありません。だからこそ主がロフェルに慈悲を持った事に神様が驚いたのでしょう。
主はあまりよく分かっていなかったようですが、食い物として見ていた者達に対する感情ではないのですよね。ま、私もよく分からないので伝えたりはしないのですが、間違いなく慈悲の感情は食べ物に向けるものではありません。
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Side:ロフェル
朝起きたら何やらミクが不機嫌だった。珍しい事もあるものだと思って聞いてみたら、朝から最悪な気分にさせてくれる情報を教えられる。しかも2つもあるだなんて、ここの伯爵は碌なヤツじゃないわね。
1つ目はスラムの組織の中に、危険な薬を売り捌く組織があった事。こいつらの持つ薬は全てファーダが本体空間に送ったみたい。場合によっては、伯爵家の連中にプレゼントしてやるらしいわ。適当に捨てるのも問題があるらしいから。
2つ目はミクが<珍走団>とか言ってる連中よ。まさか女性を強姦した挙句、危険な薬を打って壊して捨てるような連中だったなんて! 絶対に許せない!! もし魔境に居たら【瘴気の苗床】で決まりよ。埋めて永遠の苦しみを味合わせないと!!。
「うん、それは私もその通りだから一旦落ち着こうか?」
「………ふぅ。それにしても、ここまで最低な貴族が居るとはね。昨日、酒場のマスターが黙っていたのも目を付けられたくないからだと考えれば分かるわ。完全に恐怖政治ってヤツじゃないの。ミクの持つ漫画にあったけど」
「ああ、うん、そうだね。それはともかくとして、夜中にファーダが動くから邪魔はしないようにお願い。日中におかしな動きをされると、夜に困る事になるからさ」
「そうね。ファーダが動き難くなるような事をしちゃ駄目よ。それは味方の足を引っ張る事でしかないわ。それでも腹立たしくて仕方ないけど!」
本当にクズどもは碌な事をしないわね。ミクに任せるしかないけど、出来るなら私の手で地獄に落としたいわ。せめて魔境で出てきてくれないかしら? だったら正当防衛で叩き潰せるんだけど……。
少し派手に動いて目立った方が良いかしら?。




