0695・3つ目の町にて
Side:ミク
酒場に移動して大銅貨5枚を支払い、ゆっくりと酒を飲みつつ食事をする。この辺りもゴブルン王国と大した違いは無いようで、似たような料理と食事があった。ただ大雑把と言うか適当というか、同じ値段でも量が多い。
幾らでも食べられるけど、別に大量に喰う必要も無いんだよね。だから残る分は大抵セリオかレティーが全部食べて終わりとなる。相変わらずだけど、ここでも酒場のマスターや食堂の店員などにゴチャゴチャ言われる事は無い。
モンスターテイマーという職業は幅広く知られているらしい。だからこそ文句などは言われないのだが、ときおり羨ましそうに見るのは止めてほしいね。おそらく皿なんかを綺麗にしているからだろうけどさ。レティーは渡さないよ。
「どうしたの? 妙な雰囲気になってるけど」
「たまに居るじゃない? レティーを羨ましそうに見るヤツって。たぶん綺麗にしてくれるからだろうけど、その下心は丸見えだっていうのにさー」
「ああ、居る居る。そもそも普通のモンスターテイマーだとしても渡す訳が無いのに、いったい何を考えているのかしらねえ。自分の仲間を売り渡すようなのが居る訳ないでしょうに」
「ここのマスターもさっき似たような目で見てたからねえ。客商売だっていうのに、客の前で欲に塗れた顔をしてるっていう自覚も無いとは……」
「今日1回だけだし、飲んで食べてさっさと戻りましょうか。それが一番良いわよ」
「そうだね」
その言葉の通り、私達はさっさと飲んで食べて酒場を出た。最後までレティーが欲しそうな顔をしていたので、いい加減にしろと思って少し睨んでやったら、流石にバツが悪そうな顔をしてたけど。
そもそも睨まれる前に気づけって話でしょうが、頭の悪いヤツめ。
少々の腹立たしさを抱えたまま宿の部屋に戻り、ロフェルにお酒と竜の干し肉を渡す。だいたいコレを渡しておけば、機嫌良く酒を飲んで寝てくれるから助かるよ。
狐の毛皮を敷いてセリオとレティーが寝転がり、私はロフェルの話し相手になった後で寝かせる。それが終わったらファーダを出して、一緒に窓からスラムへと出る。今日中にさっさと終わらせよう。
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Side:ファーダ
今日もスラムの掃除だが、この町は特にしっかりと綺麗にしておかなきゃいけない。何といってもオーレクト帝国の交通の要衝の1つだからな、この町は。
それもあって、前2つの町よりもスラムが大きく数が多い。それだけ集まる者が多いのだから仕方ないが、1日で掃除をしなきゃならん俺達にとっちゃ大変だ。とりあえず愚痴ってないで、さっさと始めよう。
まずは外に居る奴等をどんどんと始末していく。何たって悪人ばっかなのは分かりきった事だからな。もちろん1人1人調べてから喰ってるんだが、スラムでは悪行を為さないと生きていけない。
それを可哀想と思うのは大間違いだ。子供の頃からスラムで生きている者はそれが当たり前になる。つまり犯罪は悪い事だと思わなくなるし、それは大人になっても変わらないんだ。残念ながら。
だからこそ子供でも容赦なく喰うんだ、俺達は。生かしておいても新たな犯罪に手を染めるだけだし、そいつらへの救いは痛みも無く殺してやる事だ。悪行が当たり前の子供など流石に生かしてはやれん
そういう意味ではスラムに落とされたか、スラムで生まれた不幸を呪うしかない。しかし、その親もまたスラム生まれの可能性が高い。結局は1回スラムを無理矢理にリセットしないと綺麗にはならないんだよ。
割れ窓理論と同じで、スラムが出来たからそういう連中が集まるのだと認識するべきだ。言い換えればスラムがスラムで無くなれば、そういう連中を追い出す事は出来る。後は定着しないようにすればいい。
もちろん簡単な事じゃないんだが、スラムを作られ勢力を築かれてからでは遅いんだ。その時点で手遅れとも言える。だからこそ俺達のようなのがリセットしている訳なんだけどな。
そろそろ路上も終わりだし、次は建物の中の連中だ。むしろこちらの方が楽かもしれない。何といっても、路上の奴等より警戒心が緩いからな。建物という物理的な壁があるからか、どうしても警戒心は下がるんだろう。
喰らっては移動、喰らっては移動を繰り返し、俺達は朝までにスラムの全てを喰らった。残念ながら、この町のスラムには善人が1人も居なかったな。それはそれで仕方のない事だが、スラムに期待するだけ無駄か。
後はミクに任せて、俺は本体空間へ戻るかね。
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Side:ロフェル
朝起きたら、ミクからスラムの掃除は完了したと聞いた。またもや大量の金銭を得てきたらしい。もはや使い切れないくらいに貯まってそうだけど、いったいどうする気かしら。それだけの金銭を持っていても困るわよね?。
「今のところはアイテムバッグに入るから、保留するしかないかな? 最悪はストレーナとエリザヴェートに放り投げるくらいで、他に使い道なんて無いんだよねえ。ま、【転移】でいつでも戻れるから考えなくてもいいよ」
『そうだね。アルダギオン子爵か辺境伯に放り投げればいいと思うよ』
「いえ、辺境伯の所には行かない方がいいと思います。主と言いますか、ファーダは全てを奪ってきていますので、場合によっては攻められているでしょう。飢えて後が無い草原コボルトに」
「ああ。食料も何もかもを奪い、逃げ帰れないようにしたものね。700の内、戦場で死んだのは300ほど。その300の大半は私達が前に立って殺したけど、残りは逃げて行ってしまったわ。ただし砦には碌な食料も無いし、輜重は馬車ごと無くなってる」
「その状態なら破れかぶれで領都ウェルスを狙う可能性が高いと思います。逃げ帰ったとて名誉は無く、馬鹿にされて詰られるだけでしょう。そうなるぐらいならば……」
「一致団結して攻める可能性が高そうだね。とはいえ、門を閉じて壁の上から銃を撃ってれば勝てる程度だけど」
「となると、その戦いの方が銃は活躍しそうね」
「そうなるかも。それより朝食を食べてさっさと東の魔境へ行こう。ダラダラ話をしてても仕方ないし」
宿を出た私達は食堂に行き、小銅貨20枚をミクが支払って大麦粥を食べる。食べ終わったら出発し、門を通り抜けたら一路東へ。次の魔境はどんな場所かしら?。
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Side:ドミトス
今日は何処を回ろうか。そんな事を考えていると、普段は厳しく睨んでくるサブマスターが大慌てでやってきた。彼女にしては珍しいけど、いつもの仮面が剥がれてるみたいだ。
「チームマスター、大変です! 昨夜を「落ち着きたまえ」境にして……」
「いつもの仮面が剥がれているよ。そんな事じゃ、ヴフェッ!?」
いったー。まさかビンタをされるとは思わなかったよ。今まで事務的な事を任せてきたからって、暴力に訴えなくてもいいと思うんだけどな。
「あまり下らない事を言っていると、その下に付いてるモノを潰して再起不能にしますよ」
「あ、はい。すみません。………ところで、いったいどうしたの?」
「はぁ………。スラムの者が消え失せています。それも全員が」
「は?」
「今日、情報屋との話し合いの予定だったのです。にも関わらず、スラムには全く誰の気配もしないどころか、情報屋すら居なくなっていました。片っ端から調べましたが、スラムの住民全員が行方不明です」
「………いったい何があったと思う?」
「分かりません。手がかりも無く不明です。スラムにあった3つの組織も壊滅と言いますか、誰も居なかったそうで……」
どういう事だ? この町は交通の要衝だ。だからこそ多くの者が集まるし、それ故に我が公爵家は三男の私を派遣した。ここの情報を得るのと、邪魔な者をここで始末する為に。
表向き私達は狩人のチームだが、裏では公爵家や帝国にとって邪魔な者を始末する。そういう仕事だ。これは私達に明確に喧嘩を売っているんだが、何処の誰だ?。
……駄目だ。想像は出来るけど、こんな大それた事を出来る組織に心当たりが無い。これは父上に知らせた方が良いな。
ドリュアスからアルラウネに変更しました




