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0003・真昼の決闘?




 この星の通貨単位はゼムといい、これはミクが与えられた知識の中にあった。ちなみに単位と通貨の関係は以下の通りだ。



 ▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 小銅貨=1ゼム

 中銅貨=5ゼム

 大銅貨=10ゼム


 小銀貨=100ゼム

 中銀貨=500ゼム

 大銀貨=1000ゼム


 小金貨=10000ゼム

 大金貨=50000ゼム


 緑銅貨=100000ゼム

 紅鉄貨=200000ゼム

 黒銀貨=500000ゼム

 光金貨=1000000ゼム



 ▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽



 少なくとも50ゼムと5000ゼムに相当する貨幣が無いので、大銅貨と大銀貨がネックになるものの、一般人は大銀貨までで金貨を持つ事は無い。なので、この世で一番出回っているのは大銅貨となる。


 宿が一泊30ゼムだが、これは平均からしても安い方なので、宿の平均的な値段とはいえない。代わりに男性の極めて多い宿なのだ。


 こういう部分でも女性は損していると言えなくもないが、ミクにとっては危険な所の方が都合が良い。なので、この宿は安いと聞いたから泊まっているだけである。今はお金が心許ないからだ。


 そんなミクは現在、探索者ギルドの前に居る。大きな扉なのは大柄な種族も入れるように考えてのものだろう。とりあえずミクは開けて中に入る。


 ここでも「カラン、カラン」と鳴っているが、音は共通なのだろうか? そんな益体も無い事を考えていたが、意識を切り替えて受付へと歩いて行く。


 受付嬢の前まで行ったミクは話しかけようとしたが、何故か受付嬢がジッと見てくるので、気になって聞いてみた。



 「こっちをジッと見てるけど、私の顔に何か付いてる?」


 「へっ? ……い、いえ! 何にも付いてません!! ようこそ探索者ギルドへ! いったい何の御用でしょうか!?」



 顔を赤くしつつ早口で捲くし立ててくる受付嬢に、内心首を傾げながらもミクは用件を伝える。



 「今日は探索者として登録に来た。どうすればいい?」


 「へ? え、えーっと……御依頼ではなく、登録……ですか?」


 「そう、登録。もしかして出来ない?」


 「い、いえ! そんな事はありません。少々お待ち下さい!!」



 受付嬢は単にミクに見惚れていただけなのだが、ミクはその辺りの機微が分からないので不思議に思っているだけである。受付嬢は奥へと行き、登録用紙のような物を持って戻ってきた。



 「この登録用紙に記入をお願いします。この鉛筆を使って書いてください。嘘を書くと後で不利になる事もあるので、嘘は書かないようにお願いします」



 殆ど嘘しか書けないミクに対してコレである。それでも気にせずにミクは嘘を書いていき、受付嬢に登録用紙を返す。受付嬢は登録用紙を見ながら確認していく。



 「お名前はミクさんで、年齢は18。スキルは無しで、魔法は【生活魔法】のみ。これで間違いありませんね?」


 「間違い無い」


 「分かりました。ギルドタグを発行するには小銀貨2枚頂きます。……小銀貨2枚、受け取りました。これから発行しますので、適当な席に座ってお待ち下さい」



 ミクがギルド内を見回すと、ニヤニヤとミクを見ている者達が居た。それは男性だけではなく女性もだ。ミクはその悪意の篭もった視線を楽しく受け止めつつ、表情には出さずに壁の張り紙を見に行く。


 ダンジョンの中で採れる素材や、魔物の素材などの値段と部位が書かれている。ミクは一度読めば覚えられる為、手当たり次第に情報収集していく。


 ダンジョンの構造に関する情報もあったので、これも収集していると、受付嬢から呼ばれたので受付へと行く。すると鉄で出来たチェーンに長方形の薄い鉄のカードが付いている物を渡される。



 「これが探索者証です。失くさないように肌身離さず身につけておいて下さいね。失くすと再発行は出来ませんので、新規に登録し直す事になり、一から再スタートとなります」


 「分かった。首から下げておく」



 その為のチェーンなのだろうというのは簡単に分かる。ミクは首から探索者証を下げると、ギルドから出ようとして前を塞がれた。



 「おいおいおいおい、新人よぉ。先輩に対する挨拶がねえっていうのは、どういう了見だ? 払うもん払うか、てめぇのカラダで済ませてやるから、どっちが良いか選びな」


 「??? ああ、成る程。これが世に聞くゴロツキ。何故ギルドに居るのかは知らないけど、出て行った方がいい。他の人の迷惑になる」


 「「「「「ブフーッ!!」」」」」



 ゴロツキという言葉を聞き、周りの探索者は一斉に吹き出した。何が面白かったのかは知らないが、どうも彼らにとっては笑う元だったらしい。



 「ギャハハハハハ!! オドーの奴、ゴロツキだってよ! ブフッ! どう見てもオドーはゴロツキの顔だもんなー。アハハハハ!!!」


 「「「「「「「「「「ワハハハハハハハハ!!!!」」」」」」」」」」


 「………このクソアマ!! 表に出ろ! 叩き潰してやる!!」


 「別にいいけど、勝ったら私はお前の身包みを剥ぐ。それでもやる?」


 「当たり前だ! オレが勝ったらスラムの連中と共に一晩中だ! 覚悟しておけ!!!」



 真っ赤になって怒り狂っているオドーという人物。顔は完全にチンピラなのだが、それは彼のコンプレックスなのだろうか? だったらチンピラのような行動や言動をしなければいい。


 そう思いながらもミクは大人しく外へと出る。探索者ギルドの前で5メートルほど離れて距離をとる2人。そして周囲に集まるギルド内に居た探索者。彼等が何をしているかと言うと……。



 「オレはオドーに100」 「オレも」「ワシもだ」「アタシも」


 「甘いな。オレはオドーに200だ」


 「お前らなあ、コレじゃあ賭けにもならねえじゃねえか。いい加減にしろよ」



 そんな声が聞こえてきたので、ミクは呆れながら見ていた。自分の戦闘で賭け事をするのは構わないが、どいつもこいつも見る目が無さ過ぎる。オドーという奴は、ある程度の立派な筋肉を持っている。


 しかし、それだけでしかない。歩き方は素人で、重心もブレブレ、更には体重移動など理解もしていなさそうである。そういう意味でも、ミクにとってオドーはゴロツキなのだ。


 ミクは<根源の神>の使いっ走りのようなものである。そして、その使いをする為の技術や知識は網羅するように詰め込まれている。魔法は過剰になり過ぎる為、【生活魔法】しか教わっていないが。


 しかし美女の肉体、つまり分体の動かし方の為、徹底的に【戦闘術】や【暗殺術】などを叩き込まれている。もちろん【歩法】や【泳法】に【隠れ身】など、潜入する為の技術も含めて多くの技術を体得済みだ。


 そして人外のパワーと無限のスタミナを持つミクからすれば、目の前のオドーは相手にもならないザコでしかない。そんな奴でも名が売れていれば強いと思われるのだろう。不思議なものである。


 賭けが成立しない為に流れ、落胆した連中は地面に座って観客となった。口々にミクの事を汚く罵っているが、ミクはどこ吹く風と相手にもしていない。そんな姿が気に入らないのか、余計に罵倒してくる始末だ。


 ダンジョンにも行かず、昼からギルドに屯している連中なだけあって、きっと底辺なのだろう。ミクはそう勝手に決め、目の前のオドーを見る。


 未だに怒り狂った目でミクを見ているが、何処か冷静な部分が見え隠れしている気がする。ミクは見ていてそんな事を思った。



 「よーし、それじゃあ始めるぞ。簡単に沈むんじゃねえぞ、新人! それじゃあ、つまらねえからな。…………始め!!」



 ミクとオドーの試合は始まったが、この場の全員が茶番だと思っている。ただしミクとそれ以外では、頭の中で思い描く勝者が全くの別ではあるのだが。


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