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0693・町中の見学




 Side:ミク



 「さっきのが何処の誰だか知らないけど、本当に面倒な事にならなくて良かったよ。仕方がないとはいえ、これ見よがしに道の真ん中で立ち往生してたからねえ。もっと端っこで気付かない感じで困っててほしいもんだよ」


 「流石に道の端で困ってるのは無いと思うけど、いちいちこっちに何かを言って来られても困るしね。本当にさっきのは助かったわよ。「平民の助力は要らぬ」なんて言うヤツが居るとは、ありがたくて笑っちゃうわ」


 「他のは知らないけど、少なくともあのケンタウロスがそう言った以上、私達が何かをしてやる義理は無いしね。本当に上手くいって良かったけど、次も上手くいくとは思わない方が良いかな」


 「私もそう思う。たまたまマヌケが上手く反応してくれたけど、「ならばやってみせろ」とか言ってくるヤツも居るだろうし、面倒に巻き込まれる可能性も十分にある。それに何より、貴族そのものが面倒臭いから近寄りたくない」


 「平民は誰だってそうでしょ。最下級の男爵なんて大した金も持ってないし、貧乏に喘いでる癖に偉そうだしさ。何で豪商より貧しい癖に偉そうなのか、全く意味が分からないよ。そのうえ貧しいのはバレてるのに」


 「貴族だからじゃない? 一応王様がその立場を認めてるからなんでしょうけど、確かに男爵って地位も一番下だし、平民の豊かな者より貧しいのよね。見栄の為に沢山使わなきゃいけないから。そのうえ最下級だからバカにされるし」


 「極々稀に豊かな男爵とか居るらしいけど、滅多に居ないみたいだしねえ。上手くいったとしても寄親の貴族に奪われたりして、結局自分には何も残らないらしいしさ。男爵って憐れだと思うけど、それで威張られてもねえ」


 「上位貴族を生かす為に、下位貴族を作り出しているみたいなものね。よほど王や皇帝に気に入られて貴族になったもの以外は、実入りが増えたり得があったりする訳じゃないわよ。そもそも守ってもらえないし」


 「そうなると法衣貴族の方がまだマシなのかな? 領地を持ってなければ、その分だけ使うお金も少ないらしいしさ。法衣貴族なんて言ってるけど、実質的には世襲文官みたいなものだからねえ」


 「それでも普通の文官を関わらせる訳にはいかない部分は、法衣貴族を使ってやるしかないもの。国にとっては絶対にバレちゃいけない部分とか、他の国に奪われちゃいけない情報を扱う部署とかさ」


 「そういうのは何処の国にもあるんだろうけどね。……っと、3つ目の町が見えてきたね。あそこでもう1度、魔境の話を聞いて確認しておかないと。それとスラムなどの掃除もしなきゃいけないし」


 「ミクもファーダも出るから早く掃除も終わるって言ってたけど、そんなに掃除って大変なの? それとも1日で終わらせるから2人で一気にやってる?」


 「どちらかと言えば1日で終わらせる為だね。じゃないと次の日に出発できないでしょ? 2日で終わらせても良いんだけど、裏の界隈さえ潰せば大体において綺麗になるから、無理に町全てを綺麗にする必要は無いんだよね」


 「そうなんだ……。ああ、裏の奴等が居なければ、表の連中も依頼したり出来ないもんね。でも、それで善くなるとは思えないけど?」


 「そういうのは結局、何処かで潰されるもんだよ。今までは裏の怖い奴等が居たけど、これからは居ない。となれば立ち上がる奴等も居る訳でね」


 「成る程ね。怖い力で脅してたけど、これから先はそれが使えないって訳か。それは何処かで潰されるわねえ。仮に潰されなくても、これからは弱体化するでしょうよ」



 町の門が近付いてきたので会話を止め、門番に登録証を見せて町に入る。適当に大銅貨を配りつつ情報収集し、一番安全そうな宿に泊まる事にした。そこに泊まっていればスラムを壊滅させたとしても怪しまれないしね。


 薦められた宿に行き、1泊小銀貨1枚を支払い部屋を確保。それが終わったら適当に町中を見て回る事に。それにしても町中に普通にオークが居る事に慣れない。こいつら普通に魔物の筈なんだけどね。ゴブリンやコボルトもそうだけど不思議な光景だよ


 そんな光景の中を歩きつつ見て回っていると、とある店の前で揉めている奴等が居た。



 「だーかーらー! これじゃ足りねえっつってんだろうが! お前が買おうとしたロングソードは大銀貨3枚だっての!!」


 「分かってる! だがオレは絶対にビッグになるんだ! だからオレに売ってくれ!!」


 「意味が分かんねえんだよ! 誰が大銀貨3枚の物を小銀貨2枚で売るってんだ! 一昨日出直せ、このクソガキ!!」



 そう言って店主は店に引っ込んだ。それにしても大銀貨3枚の物を小銀貨2枚で買おうとするとは……。そのうえ多分こいつ大した実力が無い。つまりロングソード自体をおそらくちゃんと振れないだろう。


 それも加味すれば、どう考えても売る必要の無い相手だ。ショートソードでさえまともに扱えるか謎なのに、ロングソードをしかも格安で譲れとか驚くしかない。頭が悪いのか、それとも勢いで押し切る詐欺師か。


 門前払いされた男は再び店の中に入って行ったので、これで詐欺師の線は殆ど消えた。流石に詐欺師ならここまで粘ったりはしない。さっさと移動して別の店で同じ事をするだろう。となるとアレは天然だ。



 「信じられないわねえ。大銀貨3枚の物を小銀貨2枚で買おうとするなんて。挙句、大した腕も無さそうだったし、尚の事あんなのに絡まれた店が可哀想よ。意味が分からなさ過ぎるわ」


 「あれは何処かの貴族のボンボンだから、気にしない方がいいよ」



 そう言って私達の会話に入ってきた者が居た。とはいえ悪意などは一切無いので、親切で教えてくれてるのだろう。ゴブリンもそうだけど、オークも顔が同じのばっかで分かり辛い。どれを見てもオークにしか見えないから、個別に見分けるのが本当に難しい。



 「何処かの貴族?」


 「ああ。割と丁寧な言葉使いだったから、多分だけど男爵家だろう。上位貴族の子供なら、もっと尊大そんだいに喋るからね。それに、ああいうのは多いんだよ。自分は実力があって将来贔屓にしてやるから、良い武器を寄越せっていうの。割とよく見る光景だし、上手くいく事はないさ」


 「何で? 貴族の家の者なんでしょ?」


 「貴族の家の者が武器を買おうとしているのが答えだよ。つまり家を出されたって事さ。だから生きていかなきゃいけないんだけど、大抵の場合は狩人になるんだ。何故なら狩人くらいしか出来る仕事がないのと、一攫千金を狙えるから」


 「成る程。再び自分も贅沢できるかもって思って、狩人に群がる訳だ。でも、そんなのが生き残れるの?」


 「君達もそうだけど、それで生き残れるなら狩人は誰も苦労しないよ。それでもオーレクトでは貴族の跡取りと予備以外は全員外に出される。それを知らない君達は何処から来たんだい?」


 「私達はゴブルン王国から来たけど、それがどうかした?」


 「ああ、いや。オーレクトでは誰もが知ってる常識みたいなものだからね。それを知らないっていうのは怪しまれても文句は言えないのさ。とはいえゴブルン王国から来たのなら知らないだろうね。君達の種族は見た事が無いけど」


 「私は人間だね」


 「私は竜霊族よ」


 「ふーん、旅でもしてるのかい?」


 「ええ。それで貴方は?」


 「私は<氷結の躯>という狩人チームを率いているドミトス。それなりに有名だから、何処かで聞くかもね。それじゃ」



 男は自己紹介をして去って行ったが、私はこちらを値踏みしつつ同時に警戒していたのを理解している。飄々とした雰囲気は見せ掛けでしかなかったからね。


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