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0690・戦闘の終わり




 Side:ロフェル



 銃の音が五月蝿いからか、それとも得体の知れない武器だからか。コボルト軍は私達に近付いて来ようとしない。ミクがマカナとか呼んでた剣は背負ってるみたいだけど、それを使って切り込んでこないから何とか戦えてる。


 相手の数の方が多いし、向こうは弓に拘ってるみたい。その御蔭で付かず離れず、私達の周囲を走り回って射かけてくる。とはいえ私達にはあたっていないし、その理由は私が魔法を使っているからだ。



 「風の精霊よ、我が前に強き風を」



 魔力を多めに篭めて魔法を使っているからか、強烈な風が吹いて矢の勢いを落とす。その御蔭で仮にあたったとしても大した傷にはならない。上から落ちてくるから強力な矢なのであって、途中で失速した矢は跳ね返るだけ。


 生身の部分にあたっても貫通とか突き刺さるって事も無い。それどころか強烈な風で回転しながら落ちてくる物も多く見える。あれなら大した傷にはならないだろう。だからでしょうけど、さっきからやたらに私を狙ってくるのよね。魔力切れを狙ってるのかしら?。


 この肉体になってから魔力切れなんて起こした事が無いんだけど、このままだと初めての魔力切れを起こすかも。でも、それはそれで大事な事なのよね。自分が何処まで出来るか分からないって不安だし。


 それに最悪の時にはミクが助けてくれるでしょ。なら限界を把握するのは間違って無いわ。まあ、そうなる前に終わるかもしれないけど。


 バンバンズドンバンバンズドォンバンバン! 相変わらずミクの放った矢は頭のおかしい威力をしているわね。さっきの敵なんて、首にあたった所為で首が千切れたじゃない。


 威力があまりにもあり過ぎるのよ。私が【身体強化】をしても、ああはならないっていうのに……。流石は最強の怪物。



 「クソッ! こうなれば弓捨て! 抜剣!! 敵に切り込めーーーーっ!!!」


 「「「「「「「「「「ウォォォォォォォォ!!!」」」」」」」」」」


 「マズい。銃隊下がれ!! 早く下がれ! 切り込んでくるぞ!!!」



 慌てたように銃隊が下がるけど、中には銃を捨てて逃げるヤツまで居るじゃない。それが敵に取れられたらどうすんのよ! もう、こういう事もあるから練習しなきゃいけないのに、辺境伯は何も分かってない!!。


 ミクも弓を仕舞って武器を取り出したわ。私も弓を仕舞って矛を取り出す。その間にミクは前に出て盾で防ぎつつ、ウォーハンマーの一撃で敵を殺した。頭を叩き潰されたコボルトは肉片や脳髄とかが飛び散って死ぬ。


 それを見た一部の兵士が吐いたみたいだけど、そんな弱さじゃ戦場で死ぬわよ。


 私はすぐにミクの横に出て矛を叩きつける。それだけで頭をカチ割られたコボルトは死んだ。<槍や矛は必ずしも刺すものじゃない>。ミクはそう言っていたけどまさにその通りね。


 戦場で矛を突き刺して抜けなかったら致命的な隙になる。そうなるぐらいなら叩きつけた方がいい。


 特に刺さった穂先は収縮する筋肉に絡め取られるらしいから、あまり突くのは良くない事だって言ってたしね。確かに叩きつけても問題ない矛なら、叩きつけても良いのよ。【身体強化】が使えるなら特に。


 私は潰したヤツへの攻撃の反動を利用して上にあげ、再び振り下ろして叩き潰す。近くに居たコボルトが怯えた顔をするけど知った事じゃない。戦場で怯えるなんて殺してくれと言っているようなものよ。流石に私も色々と理解してる。


 ワルドー伯爵の悪行だったり、その後の第3王子だったりでね。死ぬ事の恐怖と、死なない為にどうすればいいのかは学べている。だからこそ恐怖に負けずに戦うのよ!。



 「ハァァァァァァァ!!!」



 【身体強化】を続けながら矛を振り下ろして叩きつける。それを繰り返していたんだけど、ふと気付くと敵が途切れた。周りを見ると私には近付かず、他の兵士を襲っている。私はそこへと素早く走り脇腹を突き刺した。



 「グブェ!!」



 突き刺して引き抜くと、すぐに次へと向かう。まだまだ戦場には敵が多く、既に入り乱れているのでコボルトを見つけ次第に叩くか刺すという事を繰り返す。これで特徴が無かったら、敵味方の区別が付かないところだった。


 ガイアという星では人間という種族のみで戦争をしていたらしいけど、よく敵味方の区別がついたと思うわ。ここまでの状況だと特徴が無かったら絶対に間違って味方を攻撃してる。それが断言できてしまうほど。


 スドォン! ズドォン!! ……ミクが暴れてるのは分かるんだけど、ウォーハンマーでも凄い音よねえ。音を聞くと安心するというのも変だけど、あの音が聞こえている限りは私も死んでないって思える。


 まだまだ体力はあるけど、集中力が切れそうなのよ。今までは集中できていたんだけど、そろそろ限界が近いわ。何というか、言葉は悪いけれど飽きてきた。同じ事をひたすら繰り返しているだけだし、敵が私から距離を置くのよね。


 いや、味方の辺境伯軍の兵士も距離をとるんだけど、それは暴れてるから仕方ない。普段ならそんな事は無いんでしょうけど、ね!!。



 「グギャァ!!!」



 背中から刺してやったら抜けなくなった!? 仕方ない思いっきり!!。


 私は矛を縦に構えると、思いっきり振り下ろす。すると穂先は外れ、敵軍のコボルトに刺したヤツが飛んでいく。激突した2体は地面に倒れ伏したが、それを見た敵が逃げ始めた。



 「あんなのと戦ってられるか! 戦士長も亡くなってるし、これ以上は無理だ!!」


 「逃げろ、逃げろー!! 戦士長は死んでる! 早く逃げろーーーー!!!」



 数人がそんな事を言い出すと、もはや誰も止める事など出来なかった。何故なら戦闘をしている敵の数は既に少なく、更には偉そうなヤツは最初にビックリした時に下敷きになって死んでるからだ。


 まだ戦っていた敵軍の兵は、おそらくその事を知らない奴等ばかりなんだろう。私達は見てたから知っているのよね。


 一旦逃げ出した敵を追いかけるなんて事をする必要は無いし、ましてや向こうの方が足が速い。


 もちろんミクや私よりは遅いけど、わざわざ追いかけてまで殺す理由が無いのよね。あくまで戦争だから戦ってただけでさ。


 それより結構な数の死体があるから移動にもちょっと苦労するけど、さっさと戻りましょう。疲れたわ。



 「それなりの時間は戦ってたんだし仕方ないんじゃない? 集中できなくなっても戦闘が終わる訳でも無いし、安全圏にすぐ脱出できる訳でもない。生き残る事を優先して戦い続けるしかないからねえ。それが戦場だし」


 「まあね。今回の事で本当に良く分かったわ。一旦戦場に出て戦い始めると、止まる事が出来ないんだって。止まったら死ぬんだから、止まるなんて最初から無理。押し倒された連中も見たしさ」


 「アレは酷かったね。各戦士長が先頭で走ってたけど、まさか銃の音でビックリして立ち止まるなんてさ。こっちの方が驚いたよ。しかも指揮官が真っ先に死ぬとかいう、呆れしか起きない結果だしね」


 「本当に驚くわよ。最高指揮官が居ないまま戦闘が続くし、その割には指示を出しているのが居るしさ。やっぱり一番上が死んだだけじゃ戦闘が終わったりはしないんだと、改めて分かったわ」


 「そもそも一番上は一番上なだけで、現場で統括する指揮官も下に居る訳だし、そりゃ終わらないよ」


 「うん、それは分かるんだけど、ちゃんと体制がしっかりあるとは思わなかったのよ。だって部族の集まりなんだし、そこまできっちりと決まってるとは思わないじゃない?」


 「まあ、言いたい事はわかるけどね。遊牧してるだけで国家を運営していない。その割には戦う事はしっかり出来ているし、軍事面もあまり変わらない。何だかいびつだよね」



 そうそう。コルクサって何かいびつなのよ。


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