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0687・揉め事と騒音




 Side:ロフェル



 今日はどうやらコレで終わりらしい。夜中にミクが矢を回収に行くらしいから。それは放っておいて良いとして、さっさと夕食にしましょうか。私達は自前で用意してるから、好き勝手に食べてもいいしね。


 そもそも騎士や兵士だって自分で食料を持ち込んでる者も居る。これは何処の軍でも変わらない事で、貴族は軍に関わる者の最低限の食料を保証しなくちゃならない。でもそれは最低限であって、後は個々人の自由となっている。


 その決まりもあって、私達が豪勢な食事をしていても文句は言われないし、文句をつける事も出来ない。仮に寄越せと言われても渡さないけどね。何故なら1人に渡せば全員に渡す羽目になるから。


 だからこういう場所では誰にも渡さないのが正しい。それはともかくとして、今日は肉野菜炒めと野菜のスープね。お肉は前に買ってた物で、スープの方にドラゴンの干し肉が入ってるわ。後はパンで終わり。


 それでも戦場で食べられる食事としては十分。そもそも新鮮な野菜が入ってる時点で十分過ぎるのよね、乾燥野菜とかが一般的だし。それもスープに入ってる程度だもの。まあ、乾燥野菜をそのまま齧る奴も居ないけどさ。


 食事が終わった後は昨日と同じく寝床に毛皮を敷くんだけど、この狐の毛皮、寝転ぶとすぐに寝てしまうのよ。起きていたい間は寝転ぶのを止めておこう、まだ食べてすぐだし寝るには早い。


 その後はミク達と色々と話しつつ、多少の時間が経ったので眠る。何かあったら起こしてもらえるから大丈夫でしょ。それじゃ、おやすみ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ファーダ



 今夜も内情を一応探るんだが、あれから3日経っても正面からの戦闘には至っていない。ゴブルン側が大盾隊で近付こうとし、コルクサ側が矢を射かける。ずっと同じパターンを繰り返しているが、そろそろ限界かねえ?。


 おっと、またもや怒鳴り合いをしているのか。相変わらず暇な奴等だな。何か建設的な議論が行われるならまだしも、ひたすら喚くだけ。イライラする気持ちは分かるが、完全に相手の術中に嵌まってるぞ。


 提案したのはミクだが、受け入れたのは辺境伯。向こうは上手くいっているらしい。それに比べてこっちは数の多さがあるからか、戦争後を狙っての駆け引きまで始まってる始末だ。寄せ集めの弱点が露呈しているな。



 「連中は盾を持って来て必死に近付こうとしているに過ぎない。良きところでこちらから打って出ればいいだけで、焦る必要など無いだろう」


 「そうやって安穏としていられる状況ではないわ! 日々食料は減っているのだぞ! いつまで続くか分かったものではないうえ、補給も出来んのだ。このままでは我等は何の成果も無く戻る事になるのだぞ!!」


 「そうだ! ある程度の成果が既にあるのならば構わぬ! しかし今は何の成果も無いのだぞ。これでは部族長の所に戻った時に恥晒しと言われるわ!!」


 「最初はそなたが言うからと思ったが、そもそもこの砦に篭もった事が間違いではないのか!? 我等の足を活かす事も出来ず、唯々無駄に矢を射かけるだけ! これでは打って出た際の矢すら尽きかねんぞ!!」


 「そんな事はあるまい。ちゃんと残りを数えながら使っておるのだ。今回は700もの人数だからこそ、十分な数の矢と食料を持ってきたではないか。焦らずに落ち着け。こちらを焦らせるのが奴等の手口よ」


 「焦ってなどおらぬわ! 功が無いと言うておるのだ!! ここにおる戦士長は皆それぞれの部族から手柄をとってこいと言われておる。その手柄が無かったら戦士長を下ろされるかもしれんのだぞ!!」


 「そうだ! 貴様のように贈り物を送って媚びる者とは違う! 我等は戦士ぞ!!」


 「何だと!? 媚びる者とはどういう事だ!!」


 「そのままの意味であろうが! 所詮は外様とざまの分際で何様のつもりだ! 貴様など部族長の贔屓ひいきが無ければ唯の根性無しでしかないわ!!」


 「何だと、貴様ぁ!!!」



 あーあー、遂に喧嘩が始まったぞ。極めてどうでもいいし、策士気取りの工作員がボコボコにされてるだけだがな。そもそも戦士長などと違って鍛えているようには見えん。幼少から鍛えてきた者とは違うのだから負けて当然だろう。



 「ふんっ! 所詮は体も鍛えておらぬ口だけの小物が! このような奴に任せておったのが間違いだ。明日は朝から攻めようぞ」


 「おおっ! 我等の力があればゴブリン如き一捻りよ! 明日の為にも英気を養わねばな!!」


 「では負け〝犬〟など放っておいて、さっさと戻るか。明日が楽しみよの。ハッハッハッハッ!!」


 「「ハッハッハッハッハッ!」」



 コボルト族にとって負け〝犬〟は最大級の侮辱だ。これはロフェルから聞いているので間違いないだろう、実際ボコボコにされた工作員もキレかけている。ま、適当に散発的に攻撃してるだけじゃなあ。


 そもそも兵などの不満を解消するのは将帥の役目だが、こいつが何かやっていたという事は全く無い。各部族の戦士長からすれば、何の結果も出ない事をいつまで続けねばならないのか? ってなるのは当たり前だ。


 彼らには帰った後の立場というものがある。それが崩れるかもしれないとなれば恐怖だろう。自分の立場が奪われるとなれば動こうとするのは当たり前だし、それは将帥の立場としては考えて当たり前の事。


 策士気取りなだけで、肝心の将帥がやるべき事を知らないからこうなる。ま、当たり前の結果だな。



 「クソ……あいつらめ! ただでは済まさんぞ。各部族長には贈り物をしておいて、あいつらが勝手な行動をして負けたという事にしてやる。この世を支配するのは頭の良さだ。あいつらのような暴力じゃない!」



 言いたい事は分からんでもないが、力の無い者には誰も従わんぞ。こいつは外様とざまと言われていたし、あくまで各部族長に気に入られているだけ。言うなれば借り物の力でしかない。そんなものを誇られてもな。


 おっと、テントを出て行ったな。自分のテントに戻るんだろうが、これは都合が良い。どうせ明日にはこいつらは攻めるんだ、夜の内に全て盗んで行くか。


 ついでに工作員を喰らい、そいつが盗んで逃げた風に見せておこう。



 …

 ……

 ………



 よし寝静まったな。もちろん起きている奴等は居るが、見張りは避けられるから放っておけばいい。それよりさっさと始末しに行こう。


 このテントで合ってるな。よし、それじゃあ………待てよ? 俺がここで麻痺毒を食らわせたら簡単に終わるが、それじゃあ何の意味も無いな。この戦争は辺境伯とコルクサの戦いだ。つまり俺がしゃしゃり出ても誰も得をしない。


 そう考えると、最善はこの男を麻痺させて喰うにしても今じゃない。最善のタイミングは………そう、明日の朝に各部族が出発した後だ。残ったなら工作員を喰い殺し、戦いに出たら輜重の中身だけ奪おう。


 そうすれば銃は一度は使えるだろうし、それで蹴散らせるから辺境伯の名も保たれる筈だ。うん、タイミングはバカどもが明日居なくなってからにしよう。そうすれば誰も損をしない。


 ミクが既に戦場から矢は回収しているし、今日はこのまま隠れたままで居るか。明日の戦いの為に早めに寝た奴が多いし、寝ていない奴等はケツの恋人連中だ。


 どうでもいいし興味も無い俺は、さっさと輜重の1つに乗り込み、そこでゆっくり朝まで待つのだった。


 ………「アオン、アオン」うるせーよ。静かにしろ。


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