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0065・王都フィラー到着




 食事が終わり、騎士達も満足した後、ミクは馬車の外で寝る事をヴェスに伝える。ミクの場合は何処ででも寝られる……というか、そもそも眠りもしない。怪物は常に起き続けている。


 そんな事は説明出来ないので、ミクは狭い場所で寝るのは嫌だという主張を行った。世の中にはそういう者も居るし、騎士達と一緒に寝るなら問題ないだろうと思っての事だ。


 未だに疑われているだろうし、そんな悪意を向けられるのも面倒なのでヴェスから離れるのだ。具体的な部分までは分からなかったようだが、大筋で何となく理解したヴェスは了承、そのまま馬車の中へと入っていく。


 ミクは適当に少し離れた所にアイテムバッグとレティーを置くと、鎧などを全て脱いでアイテムバッグに仕舞う。そして服の上からローブを着て、地面に寝転がる。


 レティーも頭の近くに来たので関わりを最低限まで落とし、ミクは本体空間で暇潰しを行うのだった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 あれから2週間。ダラダラと移動し続け、ようやくフィグレイオ獣王国の王都へとやって来た。あれからも盗賊団を幾つか潰したが、何処かの没落した家というのは無く、唯の盗賊ばかりだった。


 ここまでの旅でミクへの疑いも完全に無くなっており、代わりに異常なほど強い探索者と思われている。それもどうなのか? とミクは思っているが、口に出した事は無い。ここから先、関わる事も無いと思っているからだ。


 ミクは表向きダンジョンの攻略を、そして裏では喰っていいヤツを喰う仕事を請けている。ここに来るまでにも何人かの代官や貴族を喰ってきた。もちろんヴェスが許可を出した者だけだ。


 それなりには食べられている為、ミクもレティーも満足している。実際、町のスラムにいるゴロツキの多くも喰らってきており、それなりに治安も良くなっているだろう。


 ヴェスが通ると代官や貴族が行方不明となるので怪しまれているだろうが、証拠が無い以上はどうにもならない。ましてや将軍を疑惑だけで更迭するのは難しい事である。


 王でさえも、1度任命したものを引っ繰り返すというのは難しく、ましてやヴェスは愛国派の筆頭とも言える人物だ。幾ら王が暗愚でも、自分を害しない者まで敵に回したりはしない筈である。


 ミクはそう予想しているが、それはあくまでも騎士達から聞いた情報での予想だ。騎士達はヴェスの子飼いなので、ヴェスの事を悪くは言わない。なので予想の精度としては低いものであろう。


 ミク自身は政治に興味などなく、この王都でも喰っていいヤツを喰い、ダンジョンを攻略するだけである。



 「この王都が一番腐った連中が多いからねえ。まあ、当たり前なんだけどさ。それはともかくとして、ミクには私の屋敷に来てもらうけど良いかい?」


 「それは構わないけど、別に宿でいいよ? そもそも私は何処でも気にしないし」


 「それはそうだろうけど、面倒な輩が関わってくる可能性があるからね。そういう奴等を極力排除したいのさ。面倒な奴等の所為で時間が無駄に取られるってのも業腹だろう?」


 「もしかしてだけど、いちいち面倒を掛けてきそうなのが居るの? じゃないと警戒しないでしょ」


 「そりゃね。ここは王都だから色々な思惑を持ってる者が沢山居る。中には私を引き摺り下ろそうとする連中もね。そしてそういう連中は、私が仕事を依頼したミクにまで接触するよ。奴等は暇人だから」


 「暇人ねえ……まあ、そういう奴等を引きつける為に宿に泊まっても良いんだけど、面倒臭いというのもあるし……ヴェスの家に厄介になろうかな」


 「それがいいさ。ミクが言いたい事も分かるけど、ミクに関わった次の日に行方不明っていうんじゃ、絶対に面倒な言い掛かりをつけてくるだろう事は簡単に分かる。だからこそ宿暮らしじゃ余計な事になりかねない」



 そんな会話をしていた馬車が止まり、馬車の扉が開くと外から声が掛けられた。



 「お帰りなさいませ、御当主様。湯浴みをはじめ、全ての用意は整ってございます」


 「そうかい。なら、まずは旅の汚れを落とすかね。ここに居るミクは私が依頼した探索者であり、私の客だ。丁重に扱うように」


 「「「「「畏まりました」」」」」



 執事長やメイドなどが並んでいるが、ミクは「特に世話なんて要らないんだけどなー」と思っている。自由行動の方が気楽だからなのだが、ここまで来た以上は仕方ないと諦めるのだった。


 屋敷の中に入ってから湯浴み場へと案内されたので、仕方なく服や下着などを脱いで入る。分体が汚れるなどという事はあり得ないし、むしろお湯に入ると汚れてしまう。


 そもそも分体は体に付いた汚れを溶かしており、常に清潔であり綺麗なのだ。人間種と違い新陳代謝も無く、外から汚れが付着しない限りは綺麗なままなのである。


 石鹸はあるらしく体を洗い、流した後でゆっくり浸かる。このお湯でさえ、ミクの体に比べたら汚いのだから笑うしかない。そんな思いを持ちつつ、ミクはのんびりするのだった。



 「あたしは王城にお伺いを立てて、それから登城となる。ミクは明日からダンジョン攻略を始めてくれればいいよ。我が国の王都近くのダンジョンは、52階まで攻略されてる」


 「52階……何だか微妙な数字だけど、何か理由があるの? 少し行ってすぐ帰ったって感じなのかな?」


 「そうじゃないよ。我が国のショートカット魔法陣は3つなんだ。20階ごとに1つあり、52階でギブアップしたという事さ。つまり40階から52階まで進んだって事だね」


 「成る程。60階に到達する事は出来なかったと。まあ、仕方がない感じなのかな? どこまでの広さで、どこまで大変なのかは分からないけど、今日か明日ギルドに行ってみて確認しておくか」


 「今日は無理だろう、そろそろ夕方だしね。食事後は部屋に案内させるから、そこで待っていてほしい。あたしも情報を纏めたらミクの部屋に行くから」


 「了解。情報を貰わないと、誰の所に行けばいいか分からないからねえ」



 風呂から上がり、下着を履いて服を着た後で食堂に行く。食事とワインなんかを出されたけど、肉塊にはアルコールが効かない事が判明した。まあ、毒物などは一切通用しないのだから、アルコールも効かなくて当たり前ではある。


 食事は豪勢な物なのだろうが、特にどうとも言えないミク。適当に「美味しかった」と言っておいたが、ヴェスは理解しているのか苦笑いをしていた。


 肉塊が喜ぶのは人間種の肉を喰らう事なのだが、流石にそんな物は出せない。なので適当な社交辞令になるのは仕方なく、誰が悪い訳でもないのだ。それを思うと苦笑いが出てしまったのだろう。


 宛がわれた部屋に案内され、ミクは直ぐに服を脱いでベッドに横になる。そのまま待っていると、1時間ほどしてからヴェスがやってきた。



 「すまない、少し時間が掛かってしまってね」


 「問題ない。喰いに行かないなら、暇潰しをしているだけだから」


 「ああ、ミクは眠らないからね。夜中はずっと暇潰しをしているだけか。そう考えると逆に大変だねえ……っと、とりあえず最初のターゲットを話すよ」



 ヴェスが最初に依頼してきたのは、ターモノア伯爵。領地があるにも関わらず王都の屋敷にずっといる貴族で、典型的な裏で悪どい事をしている貴族ならしい。


 こいつの長男は領地経営をしっかりしているから放っておいていいらしいが、次男や三男と共に、王都の中に様々な物を入れているらしいのだ。貴族の特権を使って。



 「貴族特権を使われると追うのが難しくなる。その所為で尻尾を掴めてないっていうか、証拠の確保が出来てないんだ。とはいえ証言は複数あるし、被害者も救助してる。でも、明確にこいつが関わっているという証拠が無い」



 成る程、どうやら限りなく黒に近い相手のようだ。


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