0684・狩人の契約と砦攻め
Side:ミク
3人と一緒に「あーでもない、こーでもない」と戦争の事を語っていると、前の方から騎士どもがやってきた。おそらく不死玉を出せと言いに来たんだろう。いきなり近付いて発砲するのかな? 飛距離も分かっていないのに?。
いや、辺境伯は飛距離ぐらい分かっているのか。少なくとも酒場のマスターが見た事ある以上、試射は何度かしている筈。となるとある程度の飛距離は分かってないとおかしい。ただ、篭もってる連中を撃って上手くいくのかねえ。
「辺境伯様がお呼びなので、テントまで来ていただきたい」
「断る。私達はこの輜重を運べと依頼されただけであり、戦争の助言をしろという依頼は請けていない。それは契約外であり行う事は無理だ。そう辺境伯に伝えろ。そもそも狩人との契約はそういうものだ」
「「「「………」」」」
騎士どもが睨んできたが下らないね。さっさと戻れと思ったタイミングで、連中は踵を返して戻って行った。いったい何を考えているのか知らないが、私達は運搬の仕事を請けただけで戦争に参加する仕事を請けてなどいない。いったい何を勘違いしているのやら。
これで文句でも言ってきたら、輜重の馬車を放っておいてさっさと帰るか。未だ金も貰ってないんだから、契約破棄をするのは容易い。ついでにゴブルン王国もこれで終わりだ。次は別の国に行こうと思ってたしね。だから丁度いい。
そもそも善人のロフェルでさえ、私の言っている事に異議を唱えない。つまりこれは狩人として当然の事なんだよ。前にもアルダギオン軍であったが、狩人は契約外の事はしない。というより、契約外の事をさせるなら追加で金を払えという感じだ。
タダ働きはしないと言えば分かりやすいか。誰かがそれで済ませれば、他のヤツもタダ働きをさせられる。だから狩人はタダ働きをしない。これは他の狩人の為でもあるから、曲げる事は絶対に出来ないんだよ。自分の事ならまだしも、契約である以上はねえ。
おっと、今度は前から騎士と横流し野郎がやってきたね。いったい何の用なんだか。
「申し訳ありません。依頼を変更したいのですが宜しいですか?」
「それ以前に辺境伯軍でどうにかすればいいんじゃないの? 何故私達をいちいち動かそうとする? 後の事を考えても辺境伯軍のみで勝った方が良い。余計な雑音を聞かない為にもね」
「貴様! 先ほどから「お止めなさい」何だ!」
「辺境伯様も普段の争いならそう思われたでしょう。ですが、今回は初めての事が多い。足を掬われれば、そちらの方が大きな問題になってしまうのです。そうなるくらいなら、素直に頼った方が良いという訳ですね」
「成る程。ならば構わないが、契約書類は? 悪いが後でというのは無しだぞ。貴族は何とでも言うからな。書面が無い限り、こちらは信用せん。無いなら辺境伯に言って用意してもらえ」
「……貴っ様ーーっ!! もう許さんぞ! ここで死ね!!!」
騎士の1人が激昂して襲い掛かってきたけど、遅いねえ。あまりに遅すぎてどうにでも出来てしまう。さて、こいつはどうしたものかな? まあ、あまり大きな怪我はさせない方がいいね。
そう思考しつつ袈裟切りをかわすと、私は騎士の両耳を引き千切った。正しくは細い触手で少し切り込みを入れて、その後に引き千切っている。なので力任せに全て引き千切った訳ではない。
漫画やアニメに出てくるエルフのような耳を持ってるのがゴブリンだけど、大きいから引き千切りやすいね。ちなみに第1の星のエルフは横に長い耳なんて持っていない。持っているのはこの星のゴブリンだ。
ゴブリンにヤられる薄い本が日本にあったが、何故かそのエルフって横長の耳をしてたんだよね。エルフの顔でゴブリンの耳が付いてるっていうのも、よく考えれば不思議なものだと思う。
「ギャァァァァァァァァッ!!!!」
「剣を持って襲い掛かってきた時点で敵だというのは理解できなかったようだね。目の前の敵とではなく、私と殺し合いをしたいのならば最初からそう言え。今すぐ皆殺しにしてやる」
【陽炎の身体強化】をしてやったが、その途端にコレだ。簡単に小便を漏らすなら、最初から突っ掛かってくるな。ゴミが。
「とっとと失せろ、ゴミども。貴様らと話す事など、もう何も無い」
「「「「………」」」」
「聞こえなかったか、さっさと失せろ!!!」
私がそう言うと尻尾を巻いて逃走する犬の如く逃げて行った。いや、それは犬に失礼か。情けなく小便漏らして逃走するなど、犬でも恥で屈辱だろう。奴等のようなゴミと一緒にしてはいけないね。
「まあ、そうなんだけどさ。どうしてこう、バカは理解しないのかしらね。何でもそうだけど、大きな声を出して恫喝すれば叶う訳じゃないのよ。やってる事が盗賊と変わらないって理解してないのかしら?」
『理解できていたら、あんな事しないと思うけど? だってアレじゃ交渉にもなってないし、騎士がやる事じゃ……いや、騎士がやる事なのかな?』
「それは多くの騎士が否定すると思いますよ。あんなのと一緒にするなと」
3人ともが呆れてるけど、そもそもその程度の奴を遣いにするなと言いたいね。交渉相手に切りかかるとか、騎士じゃなくて唯の盗賊か蛮族でしかない。言い換えれば、辺境伯の家臣はこんな程度って事になるんだけどね?。
「すまぬ。まさか私も家臣がそんな事をするとは思わなんだ。幾らなんでも、前に敵軍が居る中において自軍の内部で争いを引き起こそうなど、敵の間者と思われても仕方がない行為だ」
そう言われた耳を引き千切ってやった騎士は顔が青褪めている。辺境伯という主君に言われなきゃ気付かないとか、騎士どころじゃなく唯の無能だな。それはともかく、辺境伯が目の前で書類を書いているという事は余程に困ってるらしいね。
そこまで困る事があったかな?。
「それは会議を行っているテントに来てから話し合いたい。………これでいいだろうか?」
………ふむ。不備は無いと思われる。ロフェルにも見せたけど、読んだ後に頷きを返してきた。という事は狩人との契約書において問題は無いらしい。それをアイテムポーチに入れて、私達は前方に歩いていく。
辺境伯が使っている大型のテントに入ると、どうも側近と思わしき連中が待っていた。あからさまにこちらに敵意を向けてくるので脅してやろうか思ったが、辺境伯が手を上げる事で治まった。その程度で止めるなら最初からするな、バカバカしい。
「さて、これから作戦会議を始める。まずは砦だが、あれは簡易的な物であり、食料もそこまで多くある訳ではない。あそこは10人体制で監視をする場所であり、残っている者は1人も居らぬ」
「敵が攻めてきたら一斉に逃げて伝えるという形になっていますからな。人質が居ないので、その分だけ戦いやすくもあります。しかし砦に篭もられているとなると……」
「うむ。簡易的とはいえ砦は砦だ。それなりに防御力があり攻め辛い。おまけに向こうの方が人数が多く、こちらは500しか居らぬ。そのうち鳴り筒を使わせるのは200で大盾隊が100だ」
「残りの200で砦を攻略致すのは大変ですぞ。木の柵とはいえ簡単ではありませぬし、その先には木塀がありまする。向こうは一斉に弓矢を放って参りますでしょうし、早々簡単には陥とせませぬ」
「確かに。砦攻めに知識があるなら聞かせてもらいたいものだ」
また鬱陶しい奴等だな。いちいちマウントをとらなきゃ気がすまないのか、この矮小な生物どもは。
「幾つかあるけど、時間を掛けて良いならば奴等の矢を消費させて無くせばいい。連中も矢が無限にある訳じゃないんだ。矢が無くなれば砦から出て来ざるを得ないんだから、そこを鳴り筒で叩けばいい。出来れば3列で間断無く撃つのが良いんだけど……」
「3列?」
「そう。1番前が撃ったら後ろへ下がり、次の者が前に出て撃つ。終わったら後ろへ下がり、後ろの者が前に出て撃つ。そうする事で敵に接近を許さずに撃つ事が出来る。まあ、それ以上に攻められればどうにもならないけどね。それと、この戦法は練習していないと上手くはいかない」
「やはり練習が出来なければ厳しいか……」
当たり前の事だと前に言った筈なんだけどね。どうにも秘匿したいらしいから、仕方ないんだろうけどさ。




